こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』を読んだ

2005年04月28日 | 読書ノート
 『金儲けの精神をユダヤ思想に学ぶ』 を読んだ。タイトルからは利殖本を想起させるが,さにあらず。社会学の巨匠,マックス・ヴェーバーさんの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の主張は,ちゃうでという,まじめーな本なのである。導き本は羽入辰郎著『マックス・ヴェーバーの犯罪』であり,資本主義の精神はユダヤの思想にありと帰結する。その主張の源は,ヴェルナー・ゾンバルトの『ユダヤ人と経済生活』。ヴェーバーの同時代人であり,かつ,友人でもあるヴェルナー・ゾンバルトの,600頁にも渡る大著は,資本主義の精神はユダヤにありと説得力溢れる分析を披瀝する。

 通説を疑うことから真理の探究は始まる。この本の結論の真偽はさておき,もとより,判官びいき,かつ,あまのじゃくな性格であるためか,巨匠,マックス・ヴェーバーさん,ちゃいますで,という入りかた自体が新鮮で小気味いいのである。さらに,おもしろさを倍増してくれるのは,導きの羽入本,『マックス・ヴェーバーの犯罪』の「はじめに」である。同書Pより引用。

「「マックス・ヴェーバー,ここで嘘付いているわよ」
  女房はトイレに本を持ち込む癖がある。たまたまその本が,多分図書館から借りてきた「中島 らも」とか「池波正太郎」といった面白い本を読み尽くしてしまった頃合だったのだろう,ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の岩波文庫版を持ち込んでいたのだ。「嘘付いてなきゃ,こんなくだくだしく書く必要ないじゃない。やれメルクス顧問官に世話になったとか」 (中略) こういう人間は必ず何か出てくるわ。大体が詐欺師の顔してる。嘘付いているからビクビクしてるのよ。」
 
 すげ~! なんと大胆な! 羽入氏。奥様に背中を押され,社会学の大大家;マックス・ヴェーバーさんに挑んだのである。しかし,誤解なきように。ヴェーバーさんの学説が否定されたわけではなく,資料引用等論証部分の不手際が指摘・証明されたのである。だが,その結果として,資本主義つうのは,アメリカに渡ったプロテスタントではなく,古代ユダヤ人てことになると通説も変更を余儀なくされてしまう。いやいや,結構,大変な結論である。羽入本やゾンバルト本は結構厚いので,ぼちぼち読みます。

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