こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

『祖国とは国語』を読んでいる

2006年01月02日 | 読書ノート
祖国とは国語

新潮社

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 『世にも美しい数学入門』以来,すっかりファンになってしまった藤原正彦さん。 元旦のぱらぱら聖書探訪から一転,日本の魂:国語力強化論の本にシフトした。新田次郎と『流れる星は生きている』の藤原てい。ご両親が名うての文学者であるせいか本人の鍛錬の賜物か,数学者でありながら,藤原正彦さんの文章は読みやすくユーモラス,かつ,スパイシーである。『国家の品格』『天才の栄光と挫折』に続き本書に手を伸ばした所以である。

 このエッセイ集は,「国語教育絶対論」,「いじわるにも程がある」,「満州再訪記」の三部から成るが,現在,連れ合いが『流れる星は生きている』を読んでいるのと,年末に読んだ『阿片王』に刺激されて,「満州再訪記」から読み始めた。「満州再訪記」は,正彦氏の生誕の地にして,一家の辛苦を極める引き揚げのスタート地点でもある旧満州国の首都:新京(現在の長春)の再訪記である。
 ロシア・ソ連の南進防止,資源の確保及び余剰人員の受け入れ先などの役割を担った満州。良くも悪くも,理想に燃えた建国の理念は敗戦と共にもろくも崩れ去ったが,敗戦時の混乱で,開拓者,とりわけ民間人たちの開拓者の多くが犠牲なられた。

 民間人を守ることなくむしろ彼らを防波堤として,いち早く避難してしまう関東軍の幹部たちを藤原さんは強く非難されているが,私も同じ気持ちだ。実際,私の祖父母も軽微ではあるが苦しんだ層に属するから・・・。現代に生きる我々にとって当時を正しく理解することは必要不可欠だ。五味川純平『人間の条件』しかり。『流れる星は生きている』しかりである。そんなことを思いながら,エッセイにもでてくる溥儀のことを知りたくなった。ラストエンペラーが見たくなった。溥儀を陰謀に陥れたのは確か甘粕正彦だったは・・・。などと興味はつきない。

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