こんな本を読んでいる

日々出版される本の洪水。翻弄されながらも気ままに楽しむ。あんな本。こんな本。
新しい出会いをありがとう。

ラストエンペラー

2006年01月03日 | Weblog
ラストエンペラー

松竹

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 『ラストエンペラー』。見たい思いながらも何故だかきっかけが掴めなかった作品だったが,最近読んだ本に後押しされて,やっと視聴することができた。

 皇帝から庭師まで,戦中,戦後を歴史の生き証人のように駆け抜けた溥儀。観光客の足が途絶えた夕暮時。自ら博物館・紫禁城の切符を買って入城する溥儀。かつて皇帝として鎮座していた紫禁城の玉座に座る庭師の溥儀はどんな気持ちで座ったのだろうか。想像すると物悲しく痛ましい焦燥感に襲われる。

 坂本龍一演ずる甘粕正彦。大杉栄の扼殺後満州に渡り,満州映画社の社長におさまり,満州の裏社会をしきる影の実力者にのし上がる。溥儀を手引きし満州国の皇帝にし傀儡政権の実質上の切り盛りをしたのも甘粕だといわれている。(佐野眞一『阿片王』) 原彬久の『岸信介』でも甘粕は,次のように紹介されている。
「甘粕は,憲兵隊時代,すなわち大正12年9月に無政府主義者大杉栄らを扼殺したとして,懲役10年の刑に処せられ(同年12月),同15年出獄ののち,昭和4年に渡満する。満州では謀報謀略活動に身を投じ,満州事変,日中戦争をはじめとするあらゆる重大事件の謀略は甘粕を抜きにしては考えられなかった。「満州の陰の帝王」といわれたのもゆえなしとしない。
 岸が甘粕をのちに(昭和14年)国策会社満映(満州映画協会)の理事長にすえたことからもわかるように,岸と甘粕は終始一貫親密な関係にあったことは事実である。(同書P73から引用)」

 紫禁城内のテニスコートでテニスに興じる皇帝。オックスフォードへの留学に夢を馳せる若き皇帝と皇后。宮廷時代の彼らの生活が華麗であったが故に,阿片に毒され堕落する第1皇女・婉容(えんよう)や溥儀の獄中・没落生活は悲しく,その著しい落差にやるせない思いを抱いてしまう。それにしても,ジョン・ローンは名演だ。彼の演技には惚れ惚れさせられた。主演男優賞に値するものだと思った。 『紫禁城の黄昏』は途中で挫折した本だが,『ラストエンペラー』を見て,また,読みたい気持になってきた。 blog Ranking へ


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