創作 彩音(あやね)との別離 16)

2024年07月09日 02時11分18秒 | 創作欄

アンナは、鶴橋に実家があり、大阪生まれ、大阪育ちであった。

「アンナ、大阪嫌いなんだ。だから、東京へ来た」

昭は仕事で約1年、大阪に在住したことがあり、「とても、いい街だよ。大阪はね」と言う。

2人はベッドでしばらく休憩する。

酔いもさめてきた。

「大阪は在日の首都である」──。

そう表現したのは、かつて「戦後最大のフィクサー」と呼ばれた許永中だそうだ。

イトマン事件や石橋産業事件で逮捕された彼は、在日韓国人2世として大阪の中津に生まれ、この街をホームグラウンドにした。

 全国の在日韓国・朝鮮人50万人のうち、大阪府には最も多い10万5000人あまりが暮らす。

日本国籍を取得した在日も少なくないため、実際にははるかに多い数の人々が朝鮮半島にルーツを持つと見られる。

「アンナには大阪に彼いたけど、韓国へ行ったきり、戻ってこない。日本ではいいことなかっからね」アンナは涙を浮かべる。

そして、昭の胸に顔を埋める。

2人はホテルを出て駅へ向かう。

アンナは錦糸町の北エリアのアパートに住んでいた。

昭はアンナと駅で別れて中野の自宅に帰る。

そして、東京方面へ向かう総武線の電車内はがらがらであり、彩音から妊娠したことを告げられたことを重く受け止めていた。

 

 

 

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