青春アドベンチャー ラジオの前で
21日の放送の 続きです。
ラジオで 人生相談をしている女弁護士
くどうあかね。
44才、独身。
昨日 嫌なメールが 届いた。
気分が悪いので すぐ家に帰ろうと思い、
タクシーをひろった。
「どちらまで?」
「三軒茶屋。・・いえ 渋谷まで。」
自宅に戻ろうとしたが クライアントから謝礼をもらったのを
思い出して パーっと気分を晴らすことにした。
(ラジオ) 海で行方不明になった やまなかこうたろうさんは・・、
海。私の父も海で死んだと聞かされていた。
でもそれは 嘘だった。
はじめから 父親は いなかったのだ。
「ごめんなさい、ラジオ消して。」
「は・・い。エアコンは 寒くないですか?」
「いいわ。このままで。」
「台風が近づいているみたいですね。」
うるさい運転手 ネームプレートを見ると
さまじまけいご
となっていた。
自分が 本名ではないから ついネームプレートを見てしまう。
「ラジオの方ですよね、人生相談の。」
「少し黙ってもらっていいですか(怒)。」
「・・すみません、知り合いが あなたのファンなので。」
私は私のファンじゃない・・★
くどうあかねは くどうあかねが 好きじゃない★
~さめじまけいご(タクシー運転手)
普通なら 話し掛けたりしないのだが、
この人は 別だった。
れいこさんが ファン。
そして オレも この人の ある言葉が気になっていた。
「ごめんなさい、渋谷は やめて、三軒茶屋にして。」
「・・儲かるんでしょうね。そして あなたは人気ものだし。」
「いつか あなたが ある質問に答えて、肉親のことは すべて捨てなさい。
あなたは あなたの幸せを 追い求めなさい。・・と言われてましたよね。」
「ごめんなさい・・。疲れているの。何も答えたくないの。」
「すみません、あなたは・・、それでは 誰に相談するのですか?
誰を信じ、誰を頼っているのですか?」
「兄弟の為に 何かをするのは 滑稽ですか?」
「滑稽ね。それが どんな事でも。」
「そうですか。」
「全部 自分の為だと 割り切れるなら いいと思うけど。」
「自分の為・・。」
「やっぱり ラジオつけて。」
(ラジオ) 260万の銀行強盗のニュースが流れる。
国道246を走りながら れいこさんの事を考えていた。
「あそこ、あのマンション。」
「はい。・・お疲れさまでした。3560円です。」
一刻も早く 家に帰りたかった。
「1万円でいい?」
困った顔になって もたもたしている運転手の つり銭をもらうのに耐えられず
「おつりは いいから。」「でも・・。」「いいから。」
何かから 逃げるようにタクシーを降りた。
チン・・(エレベーターの開く音)
母は 結婚せずに私を生んだ。
母は いつも 奔放で自分勝手だった。
私は 幼い頃から 母に愛された記憶がない。
私が 18の夏 母は 若い男と暮らすようになった。
私は 家を出た。沖縄には もう2度と戻らないと誓って。
誰もいない 一人ぼっちの部屋に戻るのが嫌で
私は いつもラジオをつけっぱなしで 出かける。
~悲しげな曲(アルビノーニの アダージョト短調)が 聞こえている。
(こんな思いっきり悲しい テーマ音楽を使うなんて どれだけ 落ち込んでいるのでしょうか、くどうあかねさん。)←tomokeiの正直な感想★
私を いつも向かえてくれるのは ラジオからの音。
昨日の嫌なメールは こんなものだった。
「母親のことは 無視していい。母親が自分のエゴだけで生きている。・・そんな発言を聞いて 私は心から悲しくなりました。あなたは ひどい娘です。」
これは 母からのメールであるはずが無い。
ありえない。自分の娘が くどうあかねである事を知らないはずだから。
私は 本名を隠して生きてきた。
~ただいまの出演・・(ナレーションが入る。)
なんだか みんな何かで繋がっている お話なのでしょうか?
そんな感じですね。
明るい、楽しいばっかりの お話では無いけれど
寂しかったり それぞれ みんな悩みを抱えていたりも するんだけど
どこか ゆっくりしていて 穏やかな雰囲気です。