メザスヒカリノサキニアルモノ若しくは楽園

地球は丸かった 太陽が輝いていた
「ごらん、世界は美しい」

感動の映画と美しい風景と愛おしい音の虜

怪物はささやく

2017年06月09日 | 映画
怪物はささやく
を観ました。


13歳の少年コナーは、難しい病を抱えた母親と2人で裏窓から教会の墓地がみえる家に住み、毎夜悪夢にうなされていた。
ある夜、コナーのもとに怪物がやって来て告げる。「今から、私はお前に3つの【真実の物語】を話す。4つ目の物語は、お前が話せ。」しかも怪物は、コナーが隠している“真実”を語れと迫るのだ。
頑なに拒むコナー。しかしコナーの抵抗など意にも介さず、その日を境に夜ごと怪物は現れ物語の幕が上がる──。
幻想的なおとぎ話のように始まり、予想を打ち砕く危険な結末に向かう3つの物語は、コナーの内なる衝動を突き動かし、彼自身を追い詰めていき──。
ついにコナーが4つ目の物語を語る時が訪れる。果たして彼が口にした、まさかの“物語”とは──?
その先に待つ“真実”が、激しく切なく胸を揺さぶる、圧巻の感動作。


J.A.バヨナ監督作品です。
前作、猛烈に評価した満点映画インポッシブルの監督なのでかなり期待して観に行きました。

おとぎ話を柱に少年と怪物の交流。
なかなか独特な雰囲気の作品ですが、予告編の時点で自分の好みの感じはありました。

冒頭からなんか悪夢的な感じで少々怖いです。
そこから怪物が出てくるまでのテンポ感がいいです。
かなり唐突にそういう展開になるので作品に論理性が無いことがわかります。
理屈なしでそういうものだと観客に伝えてますね。
CGのクオリティも高く怪物の造形、描写は凄かったです。
劇場スクリーンで見るにふさわしい迫力でした。

おとぎ話になるとアニメに切り替わりなかなかいい世界観で見せてくれます。
そのアニメのタッチも非常にアーティスティックでハイセンスで好みのやつでした。
しかもアニメの内容がシンプルかつ悩ましい内容で。
勧善懲悪ではなく、解釈によって誰が善で誰が悪かわからなくなるような。
そもそも誰も悪では無いような。
悪い事したやつが成功して、しかも周囲の人はそれで幸せになってしまうような。
単純な物語なのに悩ましくて良かったです。
なんか単純な物語でも「う~む」と悩んでしばらくひっかかってしまいました。

怪物は「俺が3つの物語を話すから4つ目はお前が話せ」と言うので、
その4つ目の物語に向かっていく映画の全体像は非常に秀逸だと思いました。
どうなるのだろう?と食いついてしまいます。
そのクライマックスは自分的には予想外でしたが、自分が想像していた以上の深いものでした。
あー、そういう物語なのかー、と感心しました。

正直、説明や過程の描写が少ないですが、
その分、少年がうちに秘める感情の深みが伝わりました。

そもそも序盤に説明が無いので、前情報無しで見に行った自分には、
何故母親と少年が微妙な関係性で暮らしていて、
何故少年と祖母が衝突しているのかがわからなかったです。
でも映画の進行とともにいいタイミングで事情がわかるいい塩梅でした。

夢に入る描写は無く現実社会からシームレスに夢の世界に変わっていて、
起きると夢の終わり。
いわゆる引掛け的な夢オチに近いですが、そんなチープなものではなく、
安部公房作品のような混濁な感じが好みでした。

主役のルイス・マクドゥーガルはPANでも主演をしていた大物子役と言っていいですが、
まあ天才的な演技ですね。
かなり胸を打つ熱血演技していて、この子の演技でかなり泣けました。

自分の好きなフェリシティ・ジョーンズが病気の母親役で。
いつものような美女さや可愛さは出ていませんでしたが、病気の役作りはかなり素晴らしかったです。
序盤は全然心理描写がなく、なんか謎の女性って感じで。
一見、ダメ女の母親なのか?とすら思ってしまいました。
しかし実にハイセンスで名言的な言葉を言います。
それは非常に感動するものでした。

怪物の声優はリーアム・ニーソンでしたが、声が特徴的なのでリーアム・ニーソンに思えて良かったです。
そしてかなり謎めいて強引な展開を作りますが、少年がそれに順応するし、
なんかとても素晴らしい導きでした。
非常に素晴らしいセリフだらけで相当印象的でした。

シガニー・ウィーバーが祖母役で、シガニー・ウィーバーもおばあちゃん役をやるようになったかー、
と感慨深いものがありました。
でもとてもいい感じのおばあちゃん像で素晴らしいキャリアを過ごしていると思いました。

インポッシブルの時も思いましたが、この監督は本当に演出のレベルが非常に高いです。
感動的シーンの役者の振る舞いBGMのボリューム、選曲、画面の色合い。
絶妙だなぁと感心します。
その腕は正直、今No.1くらいかもと思うほどです。

物語の構成、役者たちの演技、演出の良さ、映像的インパクト、魅力。
印象深いセリフの連続、余韻たっぷりの素晴らしいラストカット。
かなり高品質で好みの映画でした。


そんなわけで9点。
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