巨匠 ~小杉匠の作家生活~

売れない小説家上がりの詩人気取り
さて、次は何を綴ろうか
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取捨選択

2016-11-26 19:01:35 | 
君が選んでくれたあのスニーカーを履いて
街へ繰り出すんだ、時計など持たずに
金曜日の君は普段より一段と綺麗で
僕の為かと誤解してたおめでたい男
そんな君も今じゃ二児の母親
風の噂で聞いた、恐らくは真実

禁じられた恋、僕はすれすれの道を歩んだ
約束の日が訪れるのをずっと待ち焦がれ
誰にも内緒で待ち合わせた場所に君の姿がない
今も僕の手帳に残っている丸文字
「待ってるね❤️」
初心だった僕はきっとワンオブゼム
君は一体何人の男を虜にしてきたの
修復不能な壊れた絆、もう会うこともない

人は誰も小さな裏切りを繰り返し
大切なものを選り分けて人生を築いていく
生きるということは取捨選択の連続
すべてを受け入れられる訳がない
仕分けられた僕の気持ちは何処へ向けようか
僕にとって君との思い出は大切なものだから
そう簡単には不要物と仕分けられやしない

何年が過ぎただろう、僕も家族を持った
澄み渡る青空に唆され、外をぶらりと散歩
桜の蕾が固く、決して開かぬと頑固な顔
そんな君も暖かくなれば一面の桜色に色づく
季節は移ろいやすく、人の心も変わりやすく
君にとって無価値な僕達の思い出は
深い海の底にでも沈めてしまおう

現実と空虚な妄想

2016-11-26 16:10:18 | 
君と僕をいっそのことブレンドしてみたい
お互いに惹かれ合っている存在なのに
僕達はいつもすれ違ってばかり
君と僕を足して割ってひとつ
そんな架空の世界を妄想してみる

もしも最愛の人が自分自身だったなら
人生ってどんな感じなんだろう
僕達は自己愛に溢れ、他者に無関心で
至福の境地に至るのだろうか
あり得ない空想が僕の関心を惹きつける

遠い、遠い未来に思いを馳せてみる
僕達がとうにいなくなった未来社会では
この世界の秩序も常識も、人間という存在すら
きっとどんな未来学者の想像も及ばないほど
すっかり変わっているのだろう

今を生きる人間という存在など取るに足らない
僕達はごく限られた時間と空間を生きている
誰にもこの世界が何たるかを語り尽くせない
それは人間の両眼に映る世界が狭すぎるから
僕の目に映る世界の断片、カケラ
僕はそれを君と共有しようと足掻く
しかしこの二つの世界が一致することはない
ならば君の目に映る世界の姿を知ろうともがく
所詮僕達は別個、無駄な行為だとは承知の上

惹かれ合う二人が同じ世界を共有できないのなら
そんな世界なんて巨大なスクラップ工場だ
いつまでも結ばれない君と僕との関係に
僕は苛立ち、すべてを破壊したいとさえ思う
街頭ではドスの利いた雄叫びが街宣車から響き渡る

コンナセカイニダレガシタ!

気付けば街宣車に意気揚々と乗り込み
メガホンを片手に聴衆ならぬ通行人に向けて
この世界の改革を一心不乱に叫ぶ僕がいる
僕が生きている間にこの世界は
そう大きくは変わらないだろう
しかし、いつか必ずこの世界の秩序や価値観が
振り子のように大きく揺らぐときが来るはずだ

僕が君でいられないように
君は僕でいられない
僕が君なしでいられないように
君は僕なしでいられない

たとえ世界がこのまま変わらずとも
二人が永遠に別々の存在であっても
心の時間と空間だけは繋がっていたい
それさえも許されぬというのなら
僕はこの世界から立ち去ろう
漫然と生きる人間に成り下がるくらいなら
この世界から潔く退場する権利を与えてくれ
たとえ君を失おうと、僕が僕であるために