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年の初めの神楽三昧「土蜘蛛(つちぐも)退治」

2022年01月11日 00時00分00秒 | 日本の伝統・芸能・技の美

さて、昨日のブログで、神楽では鬼が主役と書きましたが、鬼にもいろんな種類が存在しています。今回は大和国葛城山に住む土蜘蛛のお話、【土蜘蛛】【葛城山】という演目で上演されます。

2013年4月21日、私たちの神楽デビューとなった「広森神楽団(安芸髙田市)」演じる【土蜘蛛】。

流行り病に倒れた『源頼光』。次女の『胡蝶』に命じて「典薬頭(てんやくのかみ)」から薬をもらってくるように頼んだと語るところから物語は始まります。ほどなく大切そうに薬を抱えて花道より登場する侍女の胡蝶。

が・・・実はこの胡蝶、葛城山に棲む土蜘蛛が胡蝶を食い殺して化けたもので、頼光を毒殺しようと企んでいたのです。薬を飲み寝所に去った頼光・・しばし時を見計らい御簾の向こうに声をかける胡蝶・・「頼光殿、お心持はいかに?」・・返事はなく、再び胡蝶「頼光殿・・・・・お心持は・・」。やがて足元から怪しく湧き上がる霧。

ガラリと変わった声音で更に問う胡蝶「いかに頼光!!心持やいかに!!」返事の帰らぬことに狂喜し、振り向いた胡蝶は、耳まで咲けた口で高らかに笑う鬼の姿に。そのまま頼光に襲い掛かったのですが・・

しかし、毒薬に倒れたとはいえ大江山の鬼退治で名を馳せた頼光殿。必死の力で「名剣・膝切丸」を手にし、正体を現した鬼に一太刀。思いがけない頼光の反撃に傷を負わされた鬼は、蜘蛛の巣を吐き出し逃げ去りました。

実は鬼の正体は葛城の山深くに住む土蜘蛛と呼ばれる妖怪。奥の騒ぎを聞きつけて駆け参じたのは、四天王の一員で『坂田金時』『卜部季武』

頼光より「膝切丸」改め「蜘蛛切丸」と名付けられた名剣を託された二人は、土蜘蛛の血痕を追って葛城山にたどり着き、必死の探索の末、遂に土蜘蛛の巣を発見します。

一段と恐ろしい形相となった土蜘蛛を相手に、激しい戦いを挑む『坂田金時』と『卜部季武』。ここからが神楽の一番の見せ場、鬼と神人との闘いです。

臨場感優先の戦いの場面、翻る裾の鮮やかで美しい事。恐ろしい形相の鬼の流れる白髪のこれまた美しい事(^^;) 

ラストは二人に容赦なく切りつけられてめでたしめでたしなのですが、鬼の絶命の演技も迫力満点、これで虜にならない方が不思議というもの(笑)

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2013年7月6日に開催された「安芸高田神楽特別公演」、「塩瀬神楽団(安芸髙田市)」演じる【葛城山】。
美形担当の『坂田金時』『卜部季武』が去った後に、典薬頭から貰ったという薬湯を捧げ持って登場する侍女の胡蝶・・・を取り食らって化けた土蜘蛛。

頼光に毒薬を渡し、じっとその時を待つ胡蝶・・深まる闇の気配に耳を澄ませ、更に奥深く頼光の様子を探る胡蝶。やがて渦巻く怪しい霧の中から現れたのは本性を現した土蜘蛛。手に掴んでいるのは・・毒に侵された頼光。

しかし必死の力を振り絞った頼光に一太刀浴びせられた土蜘蛛。忌々しく葛城の山深くに逃げ帰ってしまいます。それを追ってきた『坂田金時』と『卜部季武』。本性を現した土蜘蛛を前に「いざ勝負~!!勝~~~~負!」

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同じく7月7日に開催された「安芸高田神楽特別公演」、「美穂神楽団(安芸髙田市)」演じる【土蜘蛛】。

まんまと頼光殿に毒薬を飲ませる事に成功し、ひそかに様子を伺う、怪しさマックスの胡蝶さん。

邪魔な打掛も脱ぎ捨てて・・・

首尾よく罠に嵌めたつもりだったのに、いざとなると正気を取り戻す頼光殿。さすがに武勇に秀でた頼光殿は、鬼女の毒さえも気力で跳ね返します(笑)

片時も離さず身に着けていると言う宝刀膝丸を手に、鬼女に立ち向かう頼光殿。流石にこれまでと悟った鬼女、蜘蛛の糸を放って巣へと逃げ帰ります。この土蜘蛛が用いる蜘蛛の糸に見立てた白い紙テープですが、これは他の鬼の場合も同様で、いざと言う時に良く使います。これを舞台と客席に向って放つ場面は、まるで手品のようで、記念にテープを持ち帰る人もいたりします。(我が家にもあります)

葛城山に逃げ帰った土蜘蛛の巣を探し当てた四天王の二人。お約束どおりの鬼とのやり取り。様式美という言葉がありますが、神楽の世界もまた流れにのっとった様式美で構成されています。

最初に登場する人物の自己紹介に始まって、決戦の場での神人(追手)と鬼との掛け合い。その時々の間を縫うように入るお囃子の掛け声。すべてが計算され尽くした流れの中に、予想外のアドリブが入ったりと、終始、舞台から目が離せません(((((^_^;)

華麗なる戦いを経て、見事勝利を収める『坂田金時』と『卜部季武』。何度見ても、戦いのラストに見せる鬼の断末魔のシーンは圧倒的な迫力で手に汗握るという形容がぴったり。私的にはこの場面が最大の見せ場だと思ったりしています。

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2013年12月7日、「神楽門前湯治村:本郷太刀納め」での「塩瀬神楽団(安芸髙田市)」による【葛城山】。神楽の演目としてはかなり頻繁に登場しますが、神楽団ごとの構成の違いなど、ストーリー以前の楽しさがあり、決して見飽きる事はありません。

まずは恒例の『頼光殿』の自己紹介(笑)

頼光殿の近況報告の後に登場する『坂田金時』『卜部季武』。こちらはいわゆる「神人」で、美形担当です。

舞台は変わって、花道より典薬頭から頂いた薬を捧げ持って登場する『胡蝶』・・実は土蜘蛛

『頼光』にまんまと毒酒を飲ませ「してやったり」とばかりに、その正体を現す土蜘蛛。

「これより『頼光』の!肉を食らい、血をば啜らん~」と見得を切る場面は、何度見てもゾクゾクします。この決めポーズ、神楽関連のポスターやカレンダーにもよく登場します。で、折角カッコよく決めたのに、強靭な精神力で復活した頼光さんに一太刀浴びせられ、葛城山の巣に逃げ帰ってしまいます(^^;)

そこで美形担当の二人、さっそく葛城山まで土蜘蛛を追い、一時は危機に陥るも確実に追い詰め、最後は恒例の派手な大立ち回り。

激しい戦いの合間に独特の決めポーズを見せながら舞う土蜘蛛、その姿は何度見ても胸が躍り、まさに神楽の主役は”鬼”だと再認識。

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2015年4月19日「因原神楽交流大会」、「中川戸神楽団(北広島町)」による【土蜘蛛】。

ここでは、侍女の胡蝶が、実際に典薬頭より薬を頂く場面から物語が始まります。

薬を持ち帰ろうとする胡蝶をとらえ、まんまと胡蝶になりおおせた土蜘蛛。同じ人物が演じているのですが、仕草も声も、顔つきさえも全くの別人。豪華な打掛は、金糸で縫い取りされた蜘蛛の巣の柄に変わっています。

見事、胡蝶に化けおおし、毒薬を飲ませる事にも成功した土蜘蛛でしたが、正体を見破られた上に手傷を負い、蜘蛛の糸を放って退散。動きが速く、顔以外は完全にぶれています(^^;)

葛城の山深く、土蜘蛛を追ってきた神人。見つけた土蜘蛛の巣は、一目でそれとわかる仕様。蜘蛛の巣の向こうに潜む土蜘蛛の姿は、見慣れた形だけに不気味さも倍増。

この後、華麗な戦いが開始され(画像は臨場感重視)、見事、土蜘蛛成敗となりました。

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最後は2019年4月21日「因原神楽交流大会」、「横田神楽団(安芸高田市)」による【葛城山】。

近頃とみに体調思わしくない頼光殿の自己紹介から始まる物語。そう言えば、心なしか面やつれして見えるから不思議。

そこにやって来ました美形担当の『坂田金時』『卜部季武』。とはいえ、どちらが坂田さん卜部さんなのか、今となっては全然覚えちゃいません(笑)

御身辺の警護、我ら二人必ずや勤めましょうと見得を切る場面ですが、横田神楽団のメンバーは本当に美形の層が厚い(⌒∇⌒)

それぞれが持ち場に戻ったところで危険な女「胡蝶さん」登場。手には典薬頭より頂いた薬・・とすり替えた毒薬を大切そうに抱え、これより頼光殿のお命を頂戴しに参ると、トンデモ発言。

見事毒薬を飲ませる事に成功した胡蝶こと土蜘蛛。不気味な笑いと共に寝所に倒れる頼光を襲いますが・・

それしきの事でやすやすと倒される筈もなく、常に身辺に置いておいた名刀:膝丸を抜きざま、一太刀浴びせます。こんな場面ですが、胡蝶さん、そこら辺の女形より百万倍、綺麗です!!

遂に正体を現し頼光に襲い掛かるも、深手を負った身で正気を取り戻した頼光にかなう筈もなく、葛城の山深くに逃げ去ってゆきました。

騒ぎを聞いて駆け付けた『坂田金時』『卜部季武』に名刀膝丸を与え、土蜘蛛退治を命じる頼光殿。このあたりから前の席の人が微妙に体を起こし始めた為、沢山の頭が写りこんで、修正が追い付きません(´;ω;`)

山深く、誰にも暴かれることなど無いと思っていた巣も暴かれ、もはや逃げ隠れもならぬと観念した土蜘蛛。

最終形態へと変化し、正義のヒーローとの合戦に・・実は個人的な感想として、この大悪鬼の面よりも、先の般若面の方が、女性の妖には似合うように思うのですが・・やっぱり大悪鬼でないとダメなのかな~

鬼と神人との闘い、やっぱり大悪鬼じゃないとこれだけの迫力は出ませんよね。そして今日もめでたく華麗に神人に打たれてしまう大悪鬼の土蜘蛛さん。ああ、神楽ってやっぱり最高~~~(⌒∇⌒)

同じ土蜘蛛をテーマにした神楽、もう一舞台あります。この時の舞台が、私たちの神楽への愛着をより決定的なものとしました。明日はスペースを割いてじっくり紹介しようと思います。

正月十五日までは松の内 一月十一日

 


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