発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

WOOD JOB! (ウッジョブ!)~神去なあなあ日常~試写会

2014年05月08日 | 映画
WOOD JOB! (ウッジョブ!)~神去なあなあ日常~試写会イムズホール。

◆「海猿」伊藤英明の、新シリーズ「山猿」スタート!!!
↑嘘です。ごめんなさい。
 ですが、この映画では、伊藤英明が「海の男」から「山の男」に大変貌をとげています。しかも、ワイルド過ぎ。ちなみに主演は「永遠の0」で、大石さんを演じていた、染谷将太くん。

◆林業生活にご招待
 大学受験に失敗し、彼女にも逃げられた平野勇気(染谷将太)くんが主人公。傷心どん底のときに見かけた「緑の雇用制度」パンフレットの表紙の美女(長澤まさみ)めあてで山村に行く。紀伊半島(と発音して、野際陽子の歌声が脳内再生される私は古い)三重の奈良県寄り。鉄道は一両のレールバスが一日三往復やってくる。そんな場所で林業一ヵ月研修を修了し、さらに奥地、町まで車で二時間の、れいの美女の所属すると思われる中村林業の一年研修に行くことになるが、なんとそのステイ先から迎えに来たのは、研修のときに実演していた山仕事に卓越していてワイルドかつ凶暴な林業者、ヨキ(伊藤英明)だった。おまけに美女の仕事は林業ではなかった。
 というわけで、林業生活にご招待な映画である。

◆100年スパン産業
 まあ、ヨキや、たくさんの林業者たちと、植林、間伐、枝打ちを行う新人平野くん。逃げようとしたこともあったけど、ともかくがんばるのだ。
 材木市場で、中村林業の丸太が高値落札されるのをまのあたりにして、平野君は林業って儲かるんだぁとばかりに舞い上がるのだが、社長たちはまったく冷静である。
 農林水産業、あるいは農林業と括られて呼ばれているものの、林業収入「山林所得」は、その特異性から、課税方法に他の産業にない特徴がある。
 木を伐採もしくは立木を譲渡して得られる所得「山林所得」の税は、国税庁のホームページによると、他の所得とは離して、5分5乗と呼ばれる、かなりユルい累進で課税されることになる。
 日本の所得税は、中学の公民の時間で習うとおり累進課税で、500万円の所得にかかる税率は、100万円の所得にかかる税率より多い。山林所得の5分5乗とは、簡単に説明すると、500万円所得があったとき、100万円にかかる所得税率で税金を計算する方式、つまり5で割って5を掛ける5分5乗となるのである。要するに税率が通常の所得よりも低い。
 なぜなら、林業というのは、植えてすぐに利益が出るものではない。植林してから100年以上を経てやっと伐採となったりするからだ。その間には、こまめな間伐や枝打ちなどの丁寧なメンテナンスが必要なのである。
 投下した資本や労力は、ほかの産業と比べて際立ったロングスパンでの回収となる。高値で売れるからといってどんどん伐採するわけにはいかないし、売れたからと言って浮かれて浪費するわけにはいかない。アブク銭とは対極にある売り上げなのであるから。
 ちなみに取得後5年以内に伐採または譲渡して得られた所得や、山の土地を売った所得は、フツーに課税されますので念のため。

◆自然の一部、なんですよ
 まあそんなで木は自然が育ててるようなところもあるから、山で働く人々は、山の神様に対する畏敬の念が半端ではないのである。人の力がおよばないことがあること(じつはそれはあたりまえで、人間はすべて地球の間借り人に過ぎないんだけどね)を毎日自覚しながら生活してる。それで神隠しだとか、山に入ってはいけない日だとか、プリミティブに思えるお祭りもあるんだけど、それは映画の中で。恋のゆくえも。
 「銀の匙」が農業で、この映画は林業のお話。第一次産業の映画が続く。次は漁業映画かしら。