発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

ASKAにまつわるエトセトラ

2014年05月19日 | 日記
◆ASKA逮捕
 ミュージシャンの双六ゲームをつくるときに、「デビュー」「紅白初出場」「武道館コンサート」「全国ドームツアー」「ワールドカップで君が代」「紅白で大トリ」などの他に、「薬物」のマスをつくることになりそうな。復活したミュージシャンもいることだし「何回休み」に設定すればいいのかな。それもサイコロで決めるのかな。

◆1979年
 デビュー曲はよく覚えている。チャゲ&飛鳥名義で、ニューミュージックとはいわれていたものの、内容は「ど演歌」なラブバラード「ひとり咲き」。最初聞いたとき「(当時人気があった世良公則のバンド)ツイストみたいね」と思った。一発屋さんかしら?と思ったらそうではなかった。
 流行音楽家として、勤続年数を長くしていくのは大変だけど、スタンダードナンバーといえる楽曲を出した音楽家は、他の無資格自由業に比べれば、はるかにその後の生活は安定する。
 音楽著作権は最強といえる。楽曲は日本音楽著作権協会=JASRACに管理されて、使用のたびに細かく課金される。本や雑誌やネット上で歌詞の引用をするにも、楽曲を有料のコンサートで演奏するにも、カラオケ客に歌わせるにも、商業施設や病院や銀行のBGMとして使うにも(この場合は有線放送会社が利用料をとって、代わって支払うんだと思うけど)、JASRACへの支払いが必要になる。作詞、作曲、歌、それぞれについて課金されたものは、著作権を持つ人に支払われる。そういうわけで自分で作って歌うシンガーソングライターには特に有利である。
 ASKAほどヒット曲を持っていれば、お金に困るようなことはないはず、というより、お金があったから高い薬物が買えたってことかな。誰かこれ(薬物)やればいい歌できるって誘ってくれたの? ダメですよ、である。
 

◆薬物の正しい断り方教室in USA
 80年代の終りころだったと思う。ラジオの「やさしいビジネス英語」のスキットのなかで、アメリカに駐在する日本人が、パーティーでコカインを勧められたときどう答えればいいか、という会話が出てきた。
 もちろん、お断りに決まってる。
 とはいうものの、断り方が難しいのが問題なのである。相手のバックグラウンドがわからない。「ウッソー、やらない、冗談じゃない、ダメダメダメダメ、ゼッタイ」と答えでもしようものなら、「こいつ通報するかもな」と思われて、あとで暗闇でズドンとしてくる組織……でないとは限らない。何せ飛び道具の普及率が我が国とは比べ物にならないのであるから。
 正解は、確か「それは私の薬物ではないので」と、何か別の種類の薬物を使っているかのようにも受け取れる表現でやんわり断る、ってのだったと思う。「薬物」というのは、チョコレートのことでも、ビタミン剤でも、おやすみ前のカモミールティーのことでもいいのだ。自分は嘘は言っていない。相手も、通報される疑いをかけてくることはないだろう。
 当時から、そのラジオでは、セクシャルハラスメントについての扱い(放置すれば、被害者から「会社が」訴えられてしまう)とか、いろいろタイムリーな問題についてのヒントがあった。英語が身につかなくても役立つ杉田敏先生のビジネス英語番組は、今も聴けるはず。

◆他人のお誘いは断りやすい
 上記の方法は、相手によっては、今や国内でも使える断り方ではないのか。
 ちなみに、東京都保健福祉局の断り方は、「何が入っているか分からないし危険だよ」「用事を思い出したので、もう帰るよ」「ドラッグには興味がないからいらないよ」である。
 まあ、他人から勧められても断るのは簡単に思える。問題は友だちや彼氏彼女(か、そう思ってる子)から勧められたときだろうな。仲間はずれにされても平気な子は、そもそもドラッグに手を出したりはしないと思う。いわゆる「ポツン上等」的な独立心を養うのが、一番の薬物対策であると思われるが、「ポツン上等」は協調性のなさに見えてしまうこともあるので、義務教育現場の先生方は好まないかもね。

◆有機溶剤とわたくし
 義務教育といえば、中学のころ、部活で、採集したサンプルの入ったシャーレに油性ペンで番号を入れていて、使用後は、キシレンで拭いてきれいにしていた。もちろん顧問の先生の指示である。使うときは窓を開けておくようにね、とも言われなかったが、普通に臭いので窓を開けての作業だった。
「何か新聞にシンナー遊びがどうのって載ってた」「シンナーって、トルエンとかキシレンとか」「まさにこれじゃん?」「何も来ませんが?」
 それでおしまい。学校が楽しい子どもたちには同じシンナーも単なる汚れ落としだったのだ(そのころに吸ってしまった有機溶剤の影響が現在のわたくしの脳の残念さの原因かどうかはさだかではない)。逆に、単なる町売りの鎮痛剤や咳止めも、大量に買って飲めばヤバい薬物となるのである。

◆不安な心が薬物に手を出させるということ。
 「ダメ、ゼッタイ」のポスターだけで、薬物依存が減らせるなら、警察は苦労はない。不安が薬物に人を向かわせる。世の中不安なことだらけではないか。小学校の校長でさえ、激務に耐えかね、ちゃんとお仕事がこなせないかも知れない不安にかられ、薬物に手を出してしまったらしいし。
 歌手の不安って? 歌が作れなくなること? 常にトップランナーでないと気が済まないってこと? 
 それで、自分の健康あるいは生命を害し、周囲の人を悲しませ、社会的に抹殺されることになるのに薬物に手を出したってこと?
 一時的に不安が消えるにしても、悪い結果が目に見えているのに手を出すのは、やはり病気だ。
 飲酒運転と同じで、そのひとは死にたかったということかもねと私は思う。死にたくないのなら、手を出してはいけない。
 人は時々、自分は死にたくはないのだということを確認した方がいいかも知れない。よくわからないなら、安全なところで死の恐怖が味わえる遊園地の絶叫マシンなどに乗ってみるのもいいのではないか、と呑気に結んでみる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿