発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

「フイチン再見」と、『博多港引揚』

2015年03月03日 | 映画

 小学館の『ビッグコミックオリジナル』という、月2回刊の、「浮浪雲」や「釣りバカ日誌」や「風の大地」なんかが長期連載されているコミック誌なのですが、その雑誌のなかに「フイチン再見」という村上もとかの作品があります。戦後日本の少女雑誌などで活躍した漫画家、上田トシコの物語です。東京生まれ。快活で才能と生命力にあふれた魅力的な女性として描かれていますが、彼女も時代に翻弄されていきます。ハルピンで終戦を迎え、博多港に引き揚げてきた、というのが、現在発売中の号で、次号からはいよいよ上陸編となるのでしょう。

 引き揚げ港としての博多港についてご存知の方はどのくらいいらっしゃるのでしょう。
 博多港中央埠頭、マリンメッセのところに立っている赤いモニュメントは、引き揚げの記念碑なのです。
 辛い旅をしてきた人たち、帰りの船に乗ったものの命尽きる人もいて、船にコレラ患者が出れば、故国を前にして博多湾で船ごと足止めを食う。泳いで上陸しようとした人たちは、栄養不足の状態だからか死んでしまう。そして上陸。でもこれが旅の終りではない。これから空襲で焼かれた故郷に帰らなければならない人たちもいたことでしょう。想像の及ぶ範囲のあらゆることが起こったのです。親に死なれた子ども、親とはぐれた子ども、子に死なれた親。
 博多港での139万人の引き揚げには、139万の困難の物語があったのです。「フイチン再見」で気になった方はぜひお読みくださいね。ネットでも買えますし、直接注文も受け付けます。
『九州アーカイブズA/博多港引揚』引揚げ港・博多を考える集い編 2200円+消費税


 
◆物事の表層しか見ない単純さを持つネット住民の存在について
 この本を出版した当時、ネットで叩かれたわけです。
 本を出したら、どこでどのように話題になっているか気になるので検索したら、ありゃまあ。
 ただ、彼ら、どうやら実物の本を手にしていない。それが、本が出版された、という「新聞記事」を、「ネットで読んだだけ」で叩いているのですね。「日本の侵略の歴史もわかる」という、新聞の取材を受けた編集委員のことばの一部の紹介にだけ突っかかって「出版停止」とか「(こんな本が出てしまって)福岡県民として申し訳ない」とか……。200を越える書き込みの中で、実際に書店で本を見たと思われる人の書き込みは………たったひとつ「本屋でちょっと読んだけど別に侵略は強調されてないよ」。あと、記事を「邦人の苦労をしのばせるものだろ。ちゃんと読め」という書き込みがあって、残りはほぼ「本を見ずに書かれた批判」だったなあ。

 ハァ━(-д-;)━ァ と、このブログ初の顔文字をあえて使ってみる。

 入力なくして出力なし。
 批判してもいいから、読んでから批判して下さいな。できれば買って読んでね。
 

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