発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

舟を編む 試写会

2013年04月04日 | 映画
「舟を編む」試写会。都久志会館。

 馬締光也は、白シャツのボタンをいつもぴっちり上まで留めた口べたなメガネ男で大学では言語学を修めていた。出版社のダメ営業マンだったところを、辞書編集にスカウトされてから、その辞書が上梓されるまでのお話。松田龍平が、平成男とはにわかには信じ難いレトロかつアナクロな辞書編集者を演じている。
 初校、二校、三校……のゴム印は私の職場にもある。私の作る本も、なかなかにロングスパンであるが、辞書を作る作業に比べれば、作業期間は、はるかに短い。辞書を作る作業は十年を越える長丁場となるのだ。従って、毎年決算が行われる企業会計とは相容れない性質がある。会計的には研究開発費みたいに、費用発生時に一般管理費として処理されるのかな。ともかく、本を出すまでに時間がかかるので、余裕のある出版社ではないとつくれない。映画のなかでは辞書編纂部門のリストラ話も浮上する。逆から言えば、辞書が出せる出版社というのは、ステイタスなのである。
「用例採集」といって、実際に使われていることばを、カードで集める作業が面白かった。ラジオを聞きながら、人と話しながら、ファストフードでハンバーガーを食べながら、気になったことば、新しいことばの用法を見つけたら「用例採集」と言ってメモをとりはじめるのだ。
 そういうふうにして辞書の解説や用例をみると、なかなかに味わい深いものである。

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