発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

「愛と誠」試写会 暴走する純真、ちぐはぐな愛

2012年06月07日 | 映画
 週刊少年マガジンを購読していたわけではないが、それでも、「愛と誠」くらいは知っていた。第一次オイルショック当時の日本を風靡していた。
 原作の梶原一騎氏は亡くなって久しいけど、作画のながやす巧氏の画力は健在である。浅田次郎の「鉄道員」「ラブ・レター」をコミック化したものを最近読んだ。映画よりいいかも、という良漫画である。寡作なのは、アシスタントを一切使わず、ひとりで描いてるからなんだろうな。

 そういうわけで愛と誠試写会。都久志会館。
 映画館でやってた予告編がツボにはまり、ぜひ鑑賞したいと思っていたのである。三池崇監督。「スキヤキウエスタン、ジャンゴ」のような、豪華ハチャメチャ映画を期待して、都久志会館へ向かう。
 時代設定は1972年。
 信州から上京してきた大賀誠(妻夫木聡)は、東京の不良にからまれ、いきなり、西城秀樹の「激しい恋」を歌いながら踊り出し、ケンカをはじめる。なぜだ。
 たまたまそこに居合わせた、純真なお嬢様の早乙女愛(武井咲)は、幼い頃自分を助けてくれた白馬の王子様(誠)との再会に、彼をまっとうな人間にさせるという、ある意味傲慢な使命感を持ち、暴走をはじめる。純粋培養の令嬢は、向かうところ敵なしである。
 誠を住まわせるために用意したアパートは、つげ義春的経年木造リアリズム仕上げなのに、キラキラのシャンデリアが輝き、重そうな織のカーテンがかかる。
 早乙女愛のためなら死ねると言ってはばからない岩清水弘(斉藤工)は、早乙女愛の男版である。宅八郎を思わせるワンレンヘアで、完全に3の線である。誠を愛が追いかけ、愛を岩清水が追いかける。上品な名門高校から悪の花園と呼ばれる高校への転校などものともしない。倒されてもめげないターミネーターさながらである。そういえば、あの時代は、ストーカーという言葉はなかったなあ。
「あの素晴らしい愛をもう一度」「空に太陽があるかぎり」「オオカミ少年ケン」「夢は夜ひらく」「酒と泪と男と女」「また会う日まで」と、昭和歌謡オンパレード。しかもフルコーラス。しかも多くは踊りつき。
 あと、オリジナル曲が何曲か。
 愛のお父さん役の、市村正親は、劇団四季全開で突っ走る。お母さん役の一青 窈も歌って踊る。この人、お笑い系の人だったっけ? 
 誠の母(余貴美子)は、過剰な哀しみをふりまきながら歌う。悪の花園こと花園実業高校の最凶の裏番、高原由紀(大野いと)のナイフも宙を舞う。
 原作では、誠が最後に死ぬ話だと記憶していたが、この映画だと、死んだのかどうかよくわからない。大ヒットしたら続編を作りたいという制作側のスケベ心を感じた私である。

 バイオレンスシーンが多いので、ノスタルジーに浸りたい大人が、子供や孫を連れて行くというのはよしといた方がいい。
 愛とはちぐはぐなものだよなあ。と、つぶやきながら帰途についた次第。

 でも、武井咲がかわいいので、それだけでも見に行く価値はある。今演じるなら、武井咲を置いてはいないと思う、と思わせる演じ方に成功している。
 「あの素晴らしい愛をもう一度」を、パパイヤ鈴木の振り付けで歌い踊る姿と、乙女三段ストレートロングの髪型は、全国の女子中高生に流行するといいなと思っている。
 

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