きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

「触る」 ・・・診察と治療

2008年06月29日 | 日々の暮らし
 東洋医学では診察の方法を4種類に分け四診法(四知の術)と呼んでいます。

 望診(神技)は視覚を通して病態を診察する方法で、私達も「顔色が悪いよ・・・どこか悪いんじゃないの?」とよく使っている方法です。皮膚の艶、表情、目つき、姿勢、動作・・・などを観ることで「神気の得失を知り、病気の診断を行う方法です。神気とは五臓の中にあって、生命活動を支配・統制している「気」のことです。

 聞診(聖技)は聴覚や嗅覚を使って病態を診察する方法で、呼吸音、発声、発語、口臭、体臭・・・などから診断を行う方法です。

 問診(工技)は問いかけと応答によって病態を診察する方法で、症状や体の状態、日常生活の様子やこれまでの病歴、仕事の内容、家族構成・・・などをたずねて診断する方法です。

 最近の病院では、3分間診察といわれているように、時間が無いこともありますが、検査結果の数値や画像だけを一生懸命見て、あまりチャンと問診をしてくれません。まして触診(切診)はあまりしないようです。さらには、横にあるパソコンの画面だけを見て、患者の方を見ない(望診もしない)お医者さんもたまに見かけてがっかりします。電子カルテの弊害ともいえます。

 切診(巧技)は指頭、指腹、手掌などの触覚を通じて病態を診断する方法で、脈診、腹診、切経(経絡上を触って診断する)などがあります。
 切診は人の身体に触って患者さんの体の病態を診断する行為だが、実は切診している最中に、患者さんの痛みやコリが和いだり、無くなったりということがしばしばあります。そこまで行かなくても、切診を受けている間に気持ち良くなって寝てしまうといったことが良くあります。勿論施術としての指圧やマッサージは治療そのものであるから、当然結果としてそうなるのですが、診察としての触刺激だけでも、人の身体は反応するのです。
 母親が子供の痛いところを擦りながら「痛いの痛いの飛んでけ~」とやったり、痛いところに思わず手がいって擦ってしまうのも、触刺激の効果を経験的に知っているからであり、「傷の手当て」と言うのもそこから来ています。
 触る(触られる)ことで自律神経系(ヒトの機能の80%を支配していると言われる)が刺激されて副交感神経の活動が優位になることで、痛みが和らいだり治癒が早まったりと言う結果が生まれるのです。

 占い師の決まり文句は「黙って座れば、ぴたりと当たる」(望診)ですが(ただし、最近はぐだぐだ聞いてくる問診型?の占い師も多いのだが・・・)、鍼灸師の場合は「黙って触れば、なんでも判る」と言うことではなくて、やっぱり四診法でやるのですが、触る事による反応(身体的反応、精神的反応の表象としての身体反応)を通して、患者さんの身体の状態や心理状態など多くのことが知り得るのであり、また多くのこと(治そうとする意志、施術への信念、ホスピタリティ・・・など)を触ることを通して施術者側から患者さんに伝えられるのです。
 
 嫌いな奴に触られたり、嫌な触られ方をされれば、自律神経系の交感神経活動が優位になり、身体は攻撃・防御モードに入ってしまい、極端には健康を害するもとにもなりますが、好きな人や信頼できる人に触られたり、気持ちよい触られ方をされれば、副交感神経活動が優位になり、身体はリラックス・治癒のモードに入っていくのです。

<鍼灸マッサージサロン・セラピット>

実験的ダイエット

2008年06月23日 | 日々の暮らし
 5年前(年齢53歳時)の体重が約71kg、身長171cmの私としては今後生活習慣病の恐れが無きにしもあらずと思い、多少努力して69kg程度を維持してきたのだが、最近は、やれ「特定検診」だ「特定保険指導」だとメタボリック症候群の予防について世間でいろいろ言われるようになってきて、患者さんからもダイエットのことに関して質問されることも多くなってきたので、健康について指導する側の人間がメタボでは話にならんと思い、チョッと真面目にダイエットしてみようかと思いたったのが5ヶ月前。
 
 以後、毎日風呂に入る前に体重を量ることから始めて・・・・運動は毎日の仕事を通じてほどほど出来ていると考え、エアロビクスなどは特にしないことにして、食事だけに気を配ることにした。夕食は元々妻が野菜中心で作ってくれているので、特に気にせず今まで通り食べ、朝と昼食に気をつけることにした。基本は・・・元々朝食を抜くことが多かったので、朝は抜かないことにして、ただししっかりは食べない(コーヒーとチョッとしたパン1切れほど)とした。昼食はそれまではコンビ弁当や近くの食堂で食べていたのを止めて、スーパーで買ってきた、ニンジン、まいたけ、ブロッコリー、パセリ・・・などなどの野菜を電子レンジでチンし、エクストラバージンのオリーブオイルとりんご酢をドレッシングに使った温野菜のサラダと、自分で作ったショウガの甘酢漬けなどと少しのシリアルとした。たまにはコンビに弁当も食べる時もあったが・・・あまり細かいことは気にしないことにし、食べたい時は食べるでOK。

 週1の休みは3~4時間は外出(散歩)する、と言う生活を5ヶ月間続け、現在体重64.2kg(-5kg減)。BMI(ボディ・マス・インデックス)=22が理想といわれていますので、22x1.71x1.71=64.3kgが私の理想体重なので、目標達成・・・しごく簡単。気をつけるのは、身体に対するカロリーのin/outの収支を黒字にしなければ良いということだけです。黒字にすれば太る、赤字にすれば痩せるという至って明快な法則です。過食の習慣はそのままで、運動だけでカロリーを消費しようとしても実際は困難です。日本だけで異常ブームになっていたビリーズ・ブートキャンプは今いずこ・・・です。燃焼効率を上げるとかいうサプリメント類も基本は運動しなければ何にもならない訳で、それに頼るのも無駄ですね。飲食を摂取して痩せるなんて、考えてみれば変なのが分かりますね。食べなければ痩せるのです。適当に身体を動かして(フィットネスクラブに行く必要なんてない・・・歩けば良い)時間をかけて摂取カロリーを減らしていくのが現実的なダイエット法ですね。誰にでもできますね・・・ほんとうに痩せたいと思えばですが。

 私のダイエット結果では、散歩時の歩き回りでも特に体力の消耗は感じないし、握力も53kgを維持できているし、居合道の練習でも力が落ちた感じはなくて、むしろスピードが出てきたかな、ということで全てOKです。なによりも顎から頚にかけての線がしっかり出てきて、2重顎が解消できたのがいい感じかな。
今後は、この体重を維持していく楽しみができましたが、身体は細いままで、筋力と持久力をアップしていくことを、還暦を迎えるにあたっての目標にしましょう。

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アニマル浜口の「ウワッハッハッハ」

2008年06月22日 | 日々の暮らし
 日常生活の中で意識して呼吸をしている人はいないと思います。呼吸は自律神経系に支配されていて通常は不随意活動(意識しない動作)をしているからです。もし、意識しないと呼吸が出来ないとしたら、怖くて夜に寝れなくなってしまいますね。

 一方、試験の前とか、バッターボックスに入る前とかに気持ちを落ち着かせるために、深呼吸をしたり、病院で血圧測定の時に高めの値が出た時に、医師に「はい、深呼吸をしてみて」と言われて、それができるのは呼吸が随意機能(意識してできる)でもあるからです。

 呼吸は意識的にも出来るし、無意識でもできる、つまり随意神経系と不随意神経系の両方に支配されている唯一の生理機能なのです(ヨーガの達人は心臓の拍動数や体温、その他諸々の生理機能を自分の意思でコントロールできるらしいけれどネ)。

 意識的に呼吸をコントロールすることによって、人間の生理機能の80%を支配しているといわれる自律神経系の活動状態を変化させ、様々な不随意機能に働きかけることが出来るということを人は昔から経験的に学んでおり、宗教、芸能、武道、スポーツ、医学・・・などの様々な分野でいろいろな呼吸法が取り入れられてきました。ヨーガのプラナヤーマーといった極めて難しい呼吸コントロール法はさておいて、リラクゼーションや健康増進のために手軽に出来る呼吸法をいくつか覚えておくととても便利です。精神的・身体的緊張を解いたり、痛みを緩和するために効果があります。

 ところで、安静呼吸時に不随意的に行う一回の呼息あるいは吸息で出入りする空気の量は、成人で約0.5l(リットル)ということはご存じですか?一方、肺活量(一回の呼吸で可能な最大の換気量)は成人男性で3~4l、女性で2~3lで、あり、つまり目一杯意識して呼吸すれば成人男性では一回の呼吸で3~4l、女性で2~3l程の空気が肺に出入りさせられるのですね。さらに最大に吐き出しても肺の中には1~1.5l(成人)の空気が残っている(残気量)ことはご存じでしたか?たまには、もっと肺を大きく使って、空気の出入りを増やしてあげることも肺の機能を高めるためには必要なことなのです。特に運動嫌いの人には!!

 呼吸法の基本は簡単に言うと、姿勢を正しくし、意識を呼吸だけに集中し、呼息、吸息を大きく行うことで、特に呼息に意識を向けること(吸う方より吐く方を意識して行う)であり、鼻から吸って口から吐くことと、至って簡単。
 誰でも、何処でも出来ますね。昔から座禅の呼吸法とか長息法とか、吐き出すときに阿(あ)・・・吽(ん)・・・と声に出して長い時間を掛けて吐くとかいろいろありますが、アニマル浜口の「それ行け、京子、ウワッハッハッハッハ、ウワッハッ八ッハッハ」も呼息を断続して長い時間かけて行う点で呼吸法の一種ですね。練習後にリラックスさせるために京子さんにさせているようですが、あまり強くやるとアドレナリンが出てきてリラックスには逆効果のように思われますが、それはそれで闘争モードに入るには良いでしょうね。つまり呼吸の仕方で自律神経の副交感神経の活動を優位(リラックス)にもできるし、交換神経の活動を優位(エキサイト)にも出来るわけです。笑う健康法は昔からありました。ヨーガの中にもあるようです。
 
 アンドルー・ワイルの「癒す心、治る力(実践編)」角川書店の中でも最適な健康を得るための8週間プログラムと言うのがあり、この中の呼吸法(段階を追ってレベルアップしていく)もなかなか良いと思います。
私は鍼治療の最中に患者さんをリラックスさせるため、あるいは痛みを緩和させる方法としてたまに呼吸法を指導しています。

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隠し砦の三悪人 ウーン!?

2008年06月01日 | 趣味・道楽
樋口監督の「隠し砦の三悪人」を観ました。
黒沢版のリメークということでストーリーの骨格(というより状況設定と言うべきか)は変わらないのですが、完全コピー版の「椿三十郎」とは異なり、かなりいじられていましたね。いじったストーリーがプラスになれば良いのですが、残念ながらマイナスに働いていたようです。黒沢オリジナル版がシンプルでスリリングなストーリー展開、圧倒的なスピード感とリアルな迫力でラストまで息を抜かせないのに対して、この作品は俳優顔見世のようなシーンもあって、ハッキリ言って途中ダレました。

恋愛感情とか身分の壁とか人間愛とか男色とか火祭りの長々した踊りとかごちゃごちゃした台詞とか・・・無くても良い要素が加わって、青臭さや湿っぽさや粘っこさがチョッと鼻について、爽快感が今ひとつでした。

VFXを使った大爆発や大崩壊シーンでは決して心からの爽快感は得られませんね。
ハリウッド向きの映像で、単純な米国人にはうけるかもしれませんが・・・それにしてもVFXにもあまりお金を使っていないのが映像のラフさに現れているようで・・・。背景や衣装も、黒沢版のリメークというよりは「スターウオーズ」のコピー的で、疑似ダースベーダー(椎名桔平=鷹山刑部役)が出てきたのには笑ってしまいました。ついでに兜を脱いだらちょんまげ結っているなんて(戦国時代であれば普通兜の下はザンバラ髪でしょう)、時代考証無視のナンセンス。あくまでバーチャル世界の物語でしたネ。バーチャルならバーチャルで「ロードオブザリング」ぐらいの驚きを与えて欲しかったね。

「裏切り御免」という台詞も何回かでてきますが、「約束破って、ゴメンね!」、「えーい、やっちゃえ!」といったニュアンスで・・・重みがありません。
黒沢版では最後の最後に敵方の侍大将の田所兵衛(藤田 進)が寝返って、雪姫たちを逃がすときに使われます。がまんを重ねてきた侍大将が、主君を見限って君臣の絆を切ることを周りの侍たちに向かって宣言する(戦国時代らしくて良い)、と共に自分に向かって宣言するために発する言葉で、この一言には重みがありましたし、当時はこの場面で場内に拍手喝采が沸いたものでした(映画を観ながらの拍手喝さいが当たり前だった昔が懐かしい・・・)。

それにしても、どうしてこんなにリメークが続くのか?
プロデューサーとしては、興行成績を上げるには、どうしても中高年者+若者の二兎を追わざるを得ないのでしょうかね・・・。今回も若者は喜び、中高年はがっかりのパターンでした。時代劇の種は沢山あるはずなので、後は監督、脚本家の力量だけなんだがなあ。オリジナルの作品が観たいね。


いずれにしても、是非 黒沢明監督のオリジナルの「隠し砦の三悪人」(1958年作)をDVDなどでごらんになってください。上原美佐(雪姫役)の凛々しさと足の綺麗さも良いですよ!!!。
次は「山桜」に期待しますが、こう藤沢周平ものが続くのも「なんだかな」ではありますが、評判も良さそうなので是非見に行こうと思います。商売柄、「山のあなた・徳市の恋」も見逃せませんね。

<鍼灸マッサージサロン・セラピット>