きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

刀の刃音とは?

2008年07月29日 | 居合・日本刀
 日本刀を振ると「ヒュー」「ピッ」といった音がします。
これを刃鳴り・刃音といいますが、実態は流体(空気)の中を棒体(日本刀)が移動するときに生じる空気振動による音で、野球のバットを素振りした時の「ブーン」「ブッ」といった音や風の強い日に電線がブーンとうなっているのも同一のものです。
 空気振動は棒体(日本刀)の両面から交互に生成され後方に放出される空気の渦であるカルマン渦(Karman Vortex)により生じます。その音の高さは棒体の厚み(日本刀の厚さ)に反比例し、振るスピードに比例しますので。厚みの薄い刀を、速く振るほど高い音がでます。その音を聞けば、刀を振る鋭さが判断できます。「ピッ」といった高く、短い音がでるほど鋭い振りといえます。

 日本刀には両面に樋という溝を切ったものと、切っていないものがあります。樋を入れるのは、自分にあった刀の重さを、刀の強度をできるだけ損なわないようにして実現するための止むを得ない工夫の結果でありますが、実は樋をいれた刀ほどカルマン渦の生成が容易になります。つまり樋を入れた刀ほど、それを振ったときに「いい音がする」訳で、樋の無い刀で刃音をきれいに出すのは(実際の斬り合いでは刃音は何の意味も無いのですが)、相当鍛錬した者でも容易ではありません。一方、実用面で見れば、カルマン渦の生成・放出によって、移動する刀の後部(下流側)が負圧になるため、刀を引き戻そうとする力が作用してしまっているのです。つまり、良い刃音がする刀ほど、空気抵抗が大きく、鋭く振れない刀なのです。

 刃音を嫌って樋の無い刀を使っている武道家もいますが、実は刃音が出ない(出にくい)刀は同じ力で振っても、樋のある刀より速く振れるので、より実践的なわけです。良く通販などで売っている模擬刀はみんな樋が入っています。ヒューと音がした方が素人の人には喜ばれますからね。

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1 コメント

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刃鳴り (池月映)
2020-11-22 20:19:35
大東流武田惣角研究家です。
武田惣角以外に脇差で刃鳴りの居合を遣った剣豪はいるのでしょうか。ご教示いただければ幸いです・
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