きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

隠し砦の三悪人 ウーン!?

2008年06月01日 | 趣味・道楽
樋口監督の「隠し砦の三悪人」を観ました。
黒沢版のリメークということでストーリーの骨格(というより状況設定と言うべきか)は変わらないのですが、完全コピー版の「椿三十郎」とは異なり、かなりいじられていましたね。いじったストーリーがプラスになれば良いのですが、残念ながらマイナスに働いていたようです。黒沢オリジナル版がシンプルでスリリングなストーリー展開、圧倒的なスピード感とリアルな迫力でラストまで息を抜かせないのに対して、この作品は俳優顔見世のようなシーンもあって、ハッキリ言って途中ダレました。

恋愛感情とか身分の壁とか人間愛とか男色とか火祭りの長々した踊りとかごちゃごちゃした台詞とか・・・無くても良い要素が加わって、青臭さや湿っぽさや粘っこさがチョッと鼻について、爽快感が今ひとつでした。

VFXを使った大爆発や大崩壊シーンでは決して心からの爽快感は得られませんね。
ハリウッド向きの映像で、単純な米国人にはうけるかもしれませんが・・・それにしてもVFXにもあまりお金を使っていないのが映像のラフさに現れているようで・・・。背景や衣装も、黒沢版のリメークというよりは「スターウオーズ」のコピー的で、疑似ダースベーダー(椎名桔平=鷹山刑部役)が出てきたのには笑ってしまいました。ついでに兜を脱いだらちょんまげ結っているなんて(戦国時代であれば普通兜の下はザンバラ髪でしょう)、時代考証無視のナンセンス。あくまでバーチャル世界の物語でしたネ。バーチャルならバーチャルで「ロードオブザリング」ぐらいの驚きを与えて欲しかったね。

「裏切り御免」という台詞も何回かでてきますが、「約束破って、ゴメンね!」、「えーい、やっちゃえ!」といったニュアンスで・・・重みがありません。
黒沢版では最後の最後に敵方の侍大将の田所兵衛(藤田 進)が寝返って、雪姫たちを逃がすときに使われます。がまんを重ねてきた侍大将が、主君を見限って君臣の絆を切ることを周りの侍たちに向かって宣言する(戦国時代らしくて良い)、と共に自分に向かって宣言するために発する言葉で、この一言には重みがありましたし、当時はこの場面で場内に拍手喝采が沸いたものでした(映画を観ながらの拍手喝さいが当たり前だった昔が懐かしい・・・)。

それにしても、どうしてこんなにリメークが続くのか?
プロデューサーとしては、興行成績を上げるには、どうしても中高年者+若者の二兎を追わざるを得ないのでしょうかね・・・。今回も若者は喜び、中高年はがっかりのパターンでした。時代劇の種は沢山あるはずなので、後は監督、脚本家の力量だけなんだがなあ。オリジナルの作品が観たいね。


いずれにしても、是非 黒沢明監督のオリジナルの「隠し砦の三悪人」(1958年作)をDVDなどでごらんになってください。上原美佐(雪姫役)の凛々しさと足の綺麗さも良いですよ!!!。
次は「山桜」に期待しますが、こう藤沢周平ものが続くのも「なんだかな」ではありますが、評判も良さそうなので是非見に行こうと思います。商売柄、「山のあなた・徳市の恋」も見逃せませんね。

<鍼灸マッサージサロン・セラピット>