きらく堂日記

鍼灸師の喜楽堂が日々の出来事、過去の思い出、趣味にまつわる話などを綴った日記帳(=雑記帳)です

バライチゴの思い出

2007年11月26日 | 日々の暮らし
 学校は小高い岡の上にあり、東には遠くまで続く緑の田んぼと左手の気仙沼港には漁船が小さく見えました。
 西側は通学路の坂道を挟んで杉木立が夏の日差しをさえぎっています。校門前の道の向こう側にはさほど広くない畑があり、畑と坂道の間の斜面には雑草が茂っていましたが、その中に一所だけオレンジ色の沢山の実をつけた胸の高さほどの樹が茂っている場所がありました。
 友達がバライチゴだと教えてくれました。この前までは全く気がつかなかったのに、今日、友達に誘われて学校帰りに探検していて見つけたのです。なんでもキイチゴの一種だそうで、友達は「おいしいよ!」とポイっとオレンジ色の実を口の中に放り込みました。私も恐る恐る口に入れるとプリプリした実の甘酸っぱさが口いっぱいに広がりました。
 なにか宝物を見つけたような気がしてうれしくなりました。仙台市からこちらに転校して間もない私には始めての味で、とても美味しく感じました。友達は「ここは、ないしょだよ。」と言いました。
 ランドセルから空になったアルマイト製の弁当箱を引っ張り出して、それに一杯バライチゴを入れて、家に持ち帰りました。指先が黄色になりました。「お母さん、お土産!」といって差し出した弁当箱を開けて母は「まあ、きれい」と言いました。「おいしいんだよ」というと、母は一粒をつまんで口に入れ「おいしい、おいしいね!」と言いました。そして「お父さんとお兄ちゃんにも上げましょうね。」と言って蓋を閉めました。
 お弁当箱が閉じた後もしばらく部屋の中に甘酸っぱい香りが残っていました。
50年近く前のことですが、なぜか今でも鮮明に残っている思い出です。

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