みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

猫の恋

2019年02月08日 | 俳句日記



2月8日〔金〕曇り 春寒しきり

立春以来の春めきがここに来て途絶えました。
昼間からコートのご厄介になります。
おとといの春宵の喜びも泡の如くに消えました。
明日は雪の予想、巣穴に籠るにかぎります。

それにしても雄猫の春情は涙ぐましくも逞しい。
連日バルコニーの下で、リンドーロよろしくセレナードを歌い続けます。(セビリアの理髪師より)
今日は宵の内から美声(?)を張り上げてました。

俳句の世界ではこれを称して“猫の恋”と、実に粋
な季語に仕立て上げます。
私が敬愛して止まない文豪永井荷風先生に知らぬ者とて無い句があります。

《色町や 真昼ひそかに 猫の恋》永井荷風

「先生間違っちゃァいませんか?
猫の恋はもっぱら夜の間のことですぜ」
と、言うのは野暮なこと、春ともなれば人間様も
同様に胸の騒ぎに誘われてなんて‥‥。

この辺りの人情のことは、荷風先生の不朽の名作「濹東綺譚」をお読みになると分かります。
書かれたのは昭和12年、日米開戦前夜のこと。
人と歴史の関わりを深く味わえる作品です。

〈時はまた 巡り来たるか 猫の恋〉放浪子
季語・猫の恋(春)