みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

終の春の美女桜

2018年04月25日 | 俳句日記


昨日の雨で天地がすっかり冷やされて、
花冷えの頃に戻ったような寒さである。
立木の根元に美女桜(バーベナ)が身を寄
せ合って咲いていた。

バーベナの花言葉は「家族の睦合い」、
「忍耐」「勤勉」「魅了」。
赤は「一致協力」、白は「私の為に祈っ
て下さい」。

ここまで調べて来ると「あら⁉︎」と思っ
てしまった。
「こりゃまるでオペラ蝶々夫人のテーマ
じゃないか?」と思いついたのである。

名曲アリア「ある晴れた日に」の歌詞に
ピンカートンが夫人を「バーベナの香」
と呼んでいたことが歌われている。
作者は花言葉を知っていたのかな⁈

原作者は米国の弁護士で小説家のジョン
・ルーサー・ロング、これを戯曲にした
のが劇作家デービット・ベラスコ、そし
てオペラに仕上げたのがロッシーニ。
1904年のことである。

ロング氏はどうやらヒューマニストだっ
たようだから花言葉を知っていて、かつ
日本女性はちっちゃいから、バーベナに
喩えたのかも知れない。


これは、「蝶々夫人」の日伊合作映画が
作られた時の宝ジェンヌ八千草薫さん。
日本の美女桜そのものではないか。
何を隠そう、今でも溜息が出る。

ロッシーニも大ファンで、ユーチューブ
に新物がアップされると必ず観ている。
オペラを鑑賞する時のキモは、全曲対訳
を一度見て、本編を観ることだ。

「ある晴れた日」なんぞは思わず泣いて
しまうからお試しになるといい。

マリア・カラスはこの曲を得意にしてい
るから情感迫るものがあります。
レナータ・テバルディやレオンタイン・
ブライスさんもお勧めです。

さて歴史の話、年表を見て欲しい。
「蝶々夫人」が初演された1904年とい
うと日露戦争が始まった年。

2月10日 日本が対露宣戦布告。

同 17日 ミラノ・スカラ座の初演失敗。

5月1日 鴨緑江の会戦で日本軍が勝利。
ー欧州では一般市民までが驚いて、日本
の国債が上昇ー

5月26日 南山の戦いにまたもや勝利。
ー世界中の市民の目が日露戦に注がれ、
東洋の小国日本に興味を持ち始めるー

5月28日 「蝶々夫人」再演、大盛況。

ーその後、ロンドン、パリ公演でも成功
ロッシーニは時の人となり、日本国債も
広く買われるようになるー

こう見ると日本はロッシーニに助けられ
ロッシーニも日本軍に助けられた。
作曲している頃は煙も立ってなかった。
時の運とは摩訶不思議なものである。

〈静かなり 終りの春の 美女桜〉放浪子
季語・終の春(春)

4月25日〔水〕 曇り空
明治も遠く、平成もあと一年余り。
三日経てば昭和の日が来る。
そんな時に鉄人衣笠選手が逝かれた。
確かに新たな芽は育ちつつあるが、何か
日本全体がカオスに包まれている。
紅いバーベナの花言葉を若者に贈ろう。