先日訪れた司馬遼太郎記念館で購入した『花妖譚』を読んだ。

花ひとつひとつにまつわる若き日の幻想小説である。歴史小説家らしく中国の花を
取り上げている。芥子も牡丹も沈丁花も中国渡来の花だ。
日本の花としてはスイレン、菊、椿だろうか。スイセンにいたってはギリシャ神話から
森の美青年ナルキソスの恋、はじめて本当の恋を知って命を落とした湖の傍に咲いたのが
スイセンという。ここからナルシストを想像する。この本は本名の福田定一で出版された。
発表されたのは未生流家元の月間機関紙。このころから司馬遼太郎を名乗ることになる。
花に関係する雑誌を舞台にして幻想の世界に惹きつけられた若い小説家が花から妖しさを
感じたのは当然のことであったろう。
この本を序奏として彼の膨大なロマンあふれる歴史小説が誕生していく・・・・