寺さんの【伝えたい話・残したい話】

新聞記事、出来事などから伝えたい話、残したい話を綴っていきます。
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(第2769話) 花見の季節 

2019年04月07日 | 出来事

  “今年も花見の季節がやってきます。毎年、愛知県岩倉市の五条川へ夫婦で出かけるのが春恒例の行事です。川幅二十メートルほどの両岸から、満開の桜の枝がせり出して、川面を覆うさまは圧巻です。それが数キロも続きます。
 たくさんの屋台が並んで、川沿いの桜並木は大にぎわいとなります。伝統的なこいのぼりののり落とし、山車の巡行やからくりのお披露目もあります。何年か前のこと、そのようなにぎわいの中で、休憩所の椅子に座って、満開の桜並木を一人で静かに眺めている、私と同年配と見られるご婦人を見かけました。すぐ近くのテーブルには、手札サイズの写真立てが置かれていて、それも満開の桜並木に向けられていました。  私はちょっと気になって、「こんにちは、桜見物日和ですね」と声をかけました。すると、その方は「主人は桜見物が好きで、毎年ここに来るのを楽しみにしていたので、今年も連れてきました」と静かに話されました。
 映画のワンシーンのような光景でした。温かさと、寂しさと、愛情の深さを感じ、胸が熱くなりました。その後はお見かけしていませんが、今年はお目にかかれたらいいなあ、と楽しみにして出かけたいと思います。”(3月17日付け中日新聞)

 名古屋市の後藤さん(男・76)の投稿文です。まさに映画のワンシーンであるが、現実にも多くあることだと思う。亡き人の写真を持ち歩く人も多い。亡き人と持った時間を再現し、思いを寄せる。人間関係が希薄になっていく時代、良い姿ではなかろうか。まさに夫婦麗しである。配偶者を亡くした後、どうなるか? 一般に女性は、一時は落ち込むがその後は活き活き生きる。男は萎えたままそうそうに亡くなる。多分ボクも一般の男性と同じで、そうそうに亡くなると思う。そう生きていたいとも思わないだろう。もうこの歳まで生きたのである。
 五条川は全長約28kmのうち15kmほどの距離を4,000本もの桜が埋め尽くしている。大口町から清須市まで各所に桜が植えられているが、その中心はやはり岩倉であろうか。岩倉はボクの最寄り駅であり、その岩倉の五条川にボクら夫婦も毎年のように桜見物に出かけている。ところは今年は、4月1日に歩き仲間と出かけた。全く寒かったが、かなり咲いていた。人も出ていた。ボク達は早々に料理屋に入った。五条川の桜の見事さはそんじょそこらに負けるものではない、と思っている。


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