吐露と旅する

きっと明日はいい天気♪

残るもの、残らないもの。

2016-05-11 11:50:39 | 日記
ここ2日間は、子供のように早く寝ていました。
早番が続くとこれだ。

ま、疲れた時はたっぷり寝るのが一番ってことで。


勤め先で、午後のお掃除をしていたときのこと。
廊下に面したお部屋の引き戸が少し空いていて
ベッドの上で、こちらを向いたまま横になっている女性と目が合いました。
歯の磨き方や、お手洗いに行ったときに自分がどう動いたら良いのか
さっき食事を済ませたことや、今やっていることなど
色々なことが時々分からなくなってしまう、認知症の女性です。

ほうきではいた床のゴミをちりとりに移す私の手元を、無表情にじっと見ています。

「お休み中、ごめんなさいね
 ゆっくり休めなくなってしまいますね」
私が声を掛けると、彼女は無表情なまま、こう聞いてきました。

「ご飯たべた?」

「はい、さっきちゃんと食べてきましたよ」
私が答えると、無表情だった彼女の顔に、ほんの少し笑顔が浮かびました。
「お弁当もってくるのかい?」
「はい、自分で作って持ってきます」
「偉いね」

そう言うと、彼女の視線は私から離れて、全く別の方向に流れていきました。


他にも、私に一生懸命りんごジュースやビスケットを勧めてくれる女性がいます。
職員は、利用者の方からそういったものを受け取ってはいけないので
私も一生懸命断らなければなりません。
「美味しいから食べなさい」
「今はお仕事中だから食べられないので、後でこっそりお部屋に寄りますね」
「誰も見ていないから食べなさい」
「急に誰かが来たら、怒られてしまいます」
「誰かに怒られたら、私が怒ってやるから食べなさい」
「後でお部屋に寄ったときに、2人で食べましょう」
「そんなことを言って、どうせこないんだろう」

  あはは、ばれてる。

この楽しい押し問答は、結局私が逃走して終るのですが
次にお部屋に行ったときは、彼女はさっきのやり取りはすっかり忘れてしまっているので
また、「食べろ」「食べない」の押し問答が始まるのです。

こういうことは、私の働いているところでは(多分、よその施設でも)、結構あります。
私以外の別の職員でも、ちゃんとご飯を食べたかどうかを聞かれているところを、よく見掛けます。
もちろん、彼女(たち)は、職員の名前は覚えていません。
「ここで働いている人たち」の、ひとくくりです。

どちらかというと、「母親」を経験した女性に多い気がします。
もしかしたら、これはお母さんが子供のご飯を気にする気持ちと同じなのでしょうか。
お腹を空かせていないか、ちゃんとご飯を食べているか。
そういう気持ちは、「残る」のでしょうか。

自分が食事をしたことを忘れてしまっても、例え、食事の仕方を一瞬忘れてしまっても
私たち職員が、ちゃんとご食べているかどうかが気になるなんて
なんだか、ほっこりするなぁ。