a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

突き放される?

2020-01-29 21:50:20 | 稽古場ブログ
今回、私 原口久美子が担当いたします。
『揺れる』の稽古場はいま、今月いっぱいお休み中。しかしその間も『消えた海賊』の定時制・通信制の高校を対象とした学校公演があったり、みんな『揺れる』のポスターを貼りに出かけて行ったり、あちこち電話かけしたりと、忙しく過ごしています。

私は今月末に引っ越しをするため、仕事のあと荷物整理。片付かない大量の荷物とダンボールに囲まれて、休み前に演出家に渡された柄谷行人の『「日本文化史観」について』、そして一度ダンボールにしまった本をひっくり返して、の坂口安吾の『「日本文化史観」』を読み直しております。


『揺れる』はとても情報量の多い本です。

何をどう取っ掛かりにしたら良いか、すぐ迷子になってしまいます。

当然、ドイツの時事ネタも多い。。。

しかし!!!

何故だろう、なんだかいっぱい感じることがあるんです。

とてもせつないのです。


《現実》というものがなんなのか。自分を突き放し、存在するもの。


「生存それ自体が孕んでいる絶対の孤独」(文学のふるさと)

『櫻の森の満開の下』の稽古場で何度も読んだ文章ですが、いま『揺れる』に取り組みながらこれを読むと、あの時とは違う感覚で立ち上がってきます。


息をすること

笑うこと

誰かと手をつなぐこと


涙を流すこと


そうよ 簡単なことよ


人として普通の感情、感覚から突き放される。

笑うことも、泣くことも、息をすることさえ

全然簡単なことじゃない。


稽古はまだ入り口をウロウロしている感じですが、これからどんな風に変わるのか、いろんな可能性を秘めた稽古場です。



2月に入ると、ついにブレヒトの芝居小屋の取り壊し作業が始まるそうです。

時々、吉祥寺へ向かうバスの中から見るブレヒトの芝居小屋は、すっかり煤けてしまって、なんとも言えない寂しい気持ちなっていたのですが、あーいよいよ無くなるんだなぁと思うと。。。こういう感覚も突き放されるというのかしらなんてつらつら考えながら。。。

引っ越し作業再開。断捨離決行です。






注)写真はブログ係の雨宮が、無理を言って先日の『消えた海賊』の写真を頂きました
原口さん、ありがとうございました!





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墓標か追憶の記念碑か、あるいは備忘録

2020-01-25 22:22:05 | 稽古場ブログ
今回のブログ執筆者は劇団員の篠澤です。二年前の『ビーダーマン』以来かな?今回も演出助手です。

 今回のお芝居『揺れる』は、ワタクシのブログの題のようにちょいと前の世界的な事柄をドイツから眺めたような作品です。プラス、William Blakeの韻文と。

 Blakeは置いといて。大体、2014~15年の時事ネタがたくさん出てきます。

世界的なモノもありますし、ドイツ限定のモノもあります。思い出してください、
当時の事を。アラブの春があって元CIA職員のスノーデン氏の機密暴露があって、
ウクライナ内戦でゴタゴタの最中にクリミア併合がおきて。この時には2020年
1月8日のイランによる民間機誤射のようにマレーシア機が撃墜されています。
それと絶える事のない人種差別問題と。アメリカのpolitical correctness
(ポリティカルコレクトネス、ポリコレ)が大々的に認知された時期でもあります。

 ISの台頭があって、シリアで内戦が起きて、地中海で大勢の難民が死にました。

 目を転じてドイツ国内では移民問題での対立が顕在化してそのための政党が結成され
ました。首相のメルケルさんは難しい舵取りを余儀なくされ、何より長期政権によって
人心が倦んで批判が多くなったのもこの時期です。欧州最大の米軍基地を抱え、
一方ではクリーン政策を有権者が望むために、核力でも石炭でもないガス発電を支える
ためロシアの顔色を覗わねばならず、そして切り離すことの出来ないユダヤ人の話。
このあたりのドイツ人のルサンチマンは根が深そうです。

 身近な所だとスマートフォンが一般的になったのもこの時期でしょうか。気軽に手軽に発信できるSNSが整備され発展し、写真や動画が更にもましてネット上にあふれ出しました。これとネット上のミームと。

 当時には何をしていたでしょうか。また、今現在どう変わって、あるいは変わらず
にいるでしょうか。そんなことを考えながら稽古を積み重ねていますが、結局は諸行無常ということで。

以上、Blakeの扱いが面倒でくすぶっている篠澤でした。




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ちーこです。blog担当です。

2020-01-21 13:36:43 | 稽古場ブログ
おはようございます。

ブログ担当の照明の眞壁です。


私は野火止の稽古場まで自転車でかよっています。ほとんどの劇団員はそうです。
35~40分かけて劇団までたどり着くと、どんなに寒い日でも汗をかきます。
俳優ではないのにウォーミングアップ完了!

野火止に移転してから初めての冬。40分の道のりに雪が加わったらどうなってしまうのか…

冬になってわかったのはこの稽古場は底冷えがしないので過ごしやすい!


さてさて、

「揺れる」の稽古が始まって2週間。
ト書きも役名もない自由な脚本に頭と体をフル回転して取り組んでいます。



毎日毎日みんなで考える。みんなで見つけていく。

その中で決まっていく形みたいなものが、いいのか、どうなのか?
整理してしまったらつまらないものになってしまうんじゃないか…
(もしかしたら本番ギリギリまで悩んでいる方が面白い舞台になるのかなぁ…イヤイヤ…💧)


私はこのごろ他の団体の照明プランをやるようになって稽古場見学は終盤の通しをみることが多くなり、
立ち位置の多少の変更の話はあるにしても芝居の中身について話されることは少なく、何か物足りなさを感じていました。
もちろん仕方ないことです。


けれども、けれどもです。


どんな芝居でも作っていく過程が面白い!!


特に今回は。

稽古場のみんなもそう感じている?はず!

今、アンサンブルの稽古場は動き続けています。
昨日と今日は違う配役になっています。

俳優が違えば台詞の音色、見えてくる景色も変わってきます。

台詞は言いまわしではないと頭ではわかっていても勢いに押されて台詞が流れてしまう時があります。
演出家はそれを見逃さず細かく粘り強く稽古を続けます。
基本的なことをコツコツと。

今しか味わえないこの時を。

40分の帰りの道のりも一日を振り返る大切な時間と思えば…💧苦になりません💧きっと…

ペダルを漕ぎながら。
さて、明日はどんな稽古になるのかな?



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魅力的な

2020-01-17 15:25:29 | 稽古場ブログ
稽古場から、2人目は浅井純彦がお送りします。


稽古初日から、今日で10日経ちました。


愛理も書いていましたが、この戯曲には、役名の表記のある台詞はありません。なので現在の稽古は、本に何が書いてあるか探りながら、この言葉を誰がしゃべるか、演出家を中心に皆で検討している最中です。
この台詞のあとにはこれは言えないね。この人はこう言ってるからこの台詞はいけそうだ。と、シーンを区切って読み合わせ、やっぱりこれはこっちの人のほうが良さそうだ、だったらこれはこの人に言わせたら、というふうに、何回も読んでみて稽古場全体で、一番良い形を模索している。
これを頭から最後まで繰り返しやって、演出家が観ながら、最終的な形にしていくことになる。

 この脚本、時々 あるゲームの用語が出てくる。プレステやスマホのゲームは勿論、インベーダーゲームさえあまり縁のなかった僕には、いくら説明を聞いてもなかなか身体に入ってこない。
「アルロの端の男」というのも、今はまだよくわからない存在だ。
しかし、この作品をやろう、と賛成したときに感じた、この作品の持つ「優しさ」や「詩的なもの」はやはり感じるし、それは僕には魅力的に感じる。

今回、稽古前にウォームアップを兼ねて、3人1チームで話し合って1時間ほど、柔軟したり、ストレッチしたり、ワークショップで身につけたものをやったりしている。
僕は昔やった事のある、社交ダンスのさわりをやることにした。ちゃんとしたワルツやスローフォックストロット クイックステップ タンゴ ルンバ はある継続した稽古や期間が必要なので、今回は音楽に合わせてペアで踊れる、マンボやジルバなどを覚えてもらおうと思っている。
初回はマンボをやった。「左足前〜右足後ろ〜」「左〜右〜」「左足出して半回転〜右足出して半回転〜」「はい1回転したら右足後ろ〜」
だんだんやることを増やしていく。動きを覚えてもらうために、全員とペアになって踊ってみると、動きについてくるのに精一杯の人、ペアの人との距離は一定のはずなのに、回転する度にだんだん離れていく人、もう少しリードして踊ったら良いのにと思う人、どうしてもテンポに乗れない人、教えた事に自分でアレンジしてくる人等等。
あぁ、やっぱりその人らしい踊りになるんだなぁ と思う。

これからあと2ヶ月この作品の持っている魅力を、それぞれの役者が、それぞれのやり方迫り方で、味わう。
味わい尽くし、楽しみ尽くしたら、観ている人にもその魅力が伝わるはず。
2ヶ月後 どんな芝居になっているか、とても楽しみだ。

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連想ごっこ。

2020-01-13 18:12:17 | 稽古場ブログ

こんにちは。劇団員の永野愛理です。
本日より3月公演『揺れる』キャストによる稽古場だよりをお送り致します。
あみだくじで順番を決めて、トップバッターと相成りましたわたくし。
今これを書いているのは稽古3日目の夜です。



『登場人物 私たち。誰でも、何人でも。』
と書かれたキャストページ。

この戯曲には役名の表記のある台詞はひとつもない。
初演は6人で演じられ、60人で演じた劇団もあるそう。私たちは今回15人で演じる。
ト書きも存在しない。確定事項がない。

わかっているのは、舞台はドイツであること。
子どもを殺した兵士がいること。
子どもを殺された母がいること。
バルコニーに数人の若者がたむろしていること。
その若者たちには出処不明の轟音が聞こえていること。
そして“アルロの端の男”と呼ばれる、世界を“揺らす”存在がいること。



揺れる。ドイツ語の原題はBeben。地震、という意味もある。

『連想ごっこしましょう。地震。』

という台詞がある。
ランドスライド、フリートウッド・マック、選挙……云々と続いていく。
この戯曲に書きつけられた言葉たちに触れると、まさに連想ごっこの要領で自分の記憶がよく雪崩を起こす。
ピンク色が嫌いだったこと、手のひらの上で最期の息を吐いたペットのハムスターのこと、次の塾の模試で1位になったらケータイを買ってもらうと約束したその模試に限って1位に1点差で負けたこと、光照射療法のバカ眩しいこと、私の友達と私の友達が2人で遊びに行ったと聞いてその子たちをなんとなく嫌いになったこと、中学受験の最終選考がくじ引きで私はハズレを引いてライバルはアタリを引いたこと、タイムトライアル系の宿題でヒステリーを起こしたこと、カウンセラーに「木の絵を描いてみて」と言われて何故か泣き出したこと、外が明るくなっていくのに激烈に腹が立って物を投げ散らかしたこと、好きなバンドの解散発表があった2006年4月12日のこと、布団に入って意識が途切れるまでのあの恐怖タイムのこと、平日の昼間毎日ばあちゃんと『相棒』の再放送を見てたこと、夏休みのラジオ体操のスタンプのこと、いろーーーんなことがどしゃぁっと降りかかってくるからあれ?今っていつだっけ?私は何歳なんだっけ?と混乱する。

この記憶の雪崩が起きるとお腹の底とかお尻とかうなじとかがゾワゾワして眠れなくなる。
落ち着かない、居心地が良いとは言えない、怖い、でもある種興奮にも似たようなこの感覚の正体は何なんだろう。
多分、多分なんだけど、似たような感覚を、稽古場にいる人間の多数が感じている気がする。
この感覚は是非、客席で一緒に体験してほしい。

#WWⅢがTwitterでトレンド入りする、今。
揺れる男と轟音。
登場人物はキャスト欄にある通り“私たち”。
揺れているものは何だろう。
この轟音はどこから聞こえる?
私たちは何を持ってる?
それ持ってどうする?
それ持ってなにする?
稽古場が、“揺さぶられて”いる。

そんな稽古場がどんな道を往くのか、幕が開く頃にはどこに辿り着いているのか。
この稽古場だよりがその軌跡になればと思いながら、(本当は原口さんだったはずの(!))第一歩目を永野愛理がお送りするのでした。


……初っ端から纏まりのない文章だなと不安になりながら。

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第18回戯曲を読む会

2020-01-05 14:41:22 | 劇団員リレートーク


東京演劇アンサンブルでは、昨年から月一回のペースで、「戯曲を読む会」を開催しています。

劇団員若手の提案による、いろんな戯曲を皆で声に出して読んでみようという会です。

ワークショップという形式ではないので、俳優ではない方でも気軽に参加出来ます。


第18回はフェルディナント・フォン・シーラッハ作『テロ』を読みます。






そして・・・・・・


今回も・・・・・・



「学生無料」になります!!!!


若い方が戯曲に触れる機会を増やせたらと思ってのことです。


この会では長時間の作品や難解な作品はあまり取り上げません。
読んだときの率直な気持ちを大事にする場ですので、あまりハードルを上げすぎず、お気軽に参加してくれればと思います。



もちろん、戯曲に興味がある方や作品について話し合ってみたい方、「少しだけ演劇やってみたい・・・」と思っている方等も、是非ご参加下さい!


日時 1月26日(日) 18時00分~21時30分 
場所 西東京市・田無公民館第一会議室
参加費 500円(会場費等・学生無料)


参加希望の方は2日前までに048-423-2521、もしくはteeyomukai@gmail.comご連絡ください。
ご質問等もお気軽にお待ちしています。


第17回は宮沢賢治作『銀河鉄道の夜』を読みました。


2018年まで、約40年に渡ってクリスマス公演を続けてきた広渡常敏脚本の『銀河鉄道の夜』


劇団移転にともない、上演の目処がたっていなかったので、クリスマスイブに読みました。


平日ということもあり、「参加者がいるのだろうか・・・」と、心配していましたが、10人以上も参加してくださいました。


クリスマス会ということで、戯曲を読み終わって感想を言い終わったあと、東京演劇アンサンブル劇団員数名により劇中歌を歌わせて頂きました。





これまでに取り上げた作家(敬称略)
アーノルド・ウェスカー、小沢正、アーサー・ミラー、ニール・サイモン、安部公房、篠原久美子、李ボラム、レジナルド・ローズ、坂手洋二、オスカー・ワイルド、岸田國士、J・B・プリーストリー...等


チラシデザインは劇団員の山﨑智子です!


前回クリスマスバージョンのチラシを作ってくれた彼女が、新年バージョンを作ってくれました。



東京演劇アンサンブルHP
http://www.tee.co.jp


『テロ』あらすじ
2013年7月26日、ドイツ上空で旅客機がハイジャックされた。テロリストがサッカースタジアムに旅客機を墜落させ、7万人の観客を殺害しようと目論んだのだ。しかし緊急発進した空軍少佐が独断で旅客機を撃墜する。乗客164人を殺して7万人を救った彼は英雄か? 犯罪者か? 結論は一般人が審議に参加する参審裁判所に委ねられた。検察官の論告、弁護人の最終弁論ののちに、有罪と無罪、ふたとおりの判決が用意された衝撃の法廷劇。どちらの判決を下すかは、読んだあなたの決断次第。本屋大賞「翻訳小説部門」第1位『犯罪』のシーラッハが放つ最新作!



フェルディナント・フォン・シーラッハ(1964-)
ドイツの小説家、弁護士
ナチ党全国青少年最高指導者バルドゥール・フォン・シーラッハの孫。1994年からベルリンで刑事事件弁護士として活躍する。デビュー作である『犯罪』が本国でクライスト賞、日本で2012年本屋大賞「翻訳小説部門」第1位を受賞した。




東京演劇アンサンブル
1954年4月,俳優座養成所を卒業した3期生の有志が結成。初めは劇団三期会を名のったが,67年 12月現名称に改称した。早くからブレヒト作品に取組み,80年元映画スタジオを改装して設けた劇場「ブレヒトの芝居小屋」を開場,活動の拠点とする。広渡常敏演出によるブレヒト作『セチュアンの善人』,『ガリレイの生涯』,チェーホフ作『かもめ』などが代表作。岸田国士作品の連続上演も行なった
2019年、40年間続いたブレヒトの芝居小屋を閉じ、埼玉県新座市へ移転する
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