a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

連想ごっこ。

2020-01-13 18:12:17 | 稽古場ブログ

こんにちは。劇団員の永野愛理です。
本日より3月公演『揺れる』キャストによる稽古場だよりをお送り致します。
あみだくじで順番を決めて、トップバッターと相成りましたわたくし。
今これを書いているのは稽古3日目の夜です。



『登場人物 私たち。誰でも、何人でも。』
と書かれたキャストページ。

この戯曲には役名の表記のある台詞はひとつもない。
初演は6人で演じられ、60人で演じた劇団もあるそう。私たちは今回15人で演じる。
ト書きも存在しない。確定事項がない。

わかっているのは、舞台はドイツであること。
子どもを殺した兵士がいること。
子どもを殺された母がいること。
バルコニーに数人の若者がたむろしていること。
その若者たちには出処不明の轟音が聞こえていること。
そして“アルロの端の男”と呼ばれる、世界を“揺らす”存在がいること。



揺れる。ドイツ語の原題はBeben。地震、という意味もある。

『連想ごっこしましょう。地震。』

という台詞がある。
ランドスライド、フリートウッド・マック、選挙……云々と続いていく。
この戯曲に書きつけられた言葉たちに触れると、まさに連想ごっこの要領で自分の記憶がよく雪崩を起こす。
ピンク色が嫌いだったこと、手のひらの上で最期の息を吐いたペットのハムスターのこと、次の塾の模試で1位になったらケータイを買ってもらうと約束したその模試に限って1位に1点差で負けたこと、光照射療法のバカ眩しいこと、私の友達と私の友達が2人で遊びに行ったと聞いてその子たちをなんとなく嫌いになったこと、中学受験の最終選考がくじ引きで私はハズレを引いてライバルはアタリを引いたこと、タイムトライアル系の宿題でヒステリーを起こしたこと、カウンセラーに「木の絵を描いてみて」と言われて何故か泣き出したこと、外が明るくなっていくのに激烈に腹が立って物を投げ散らかしたこと、好きなバンドの解散発表があった2006年4月12日のこと、布団に入って意識が途切れるまでのあの恐怖タイムのこと、平日の昼間毎日ばあちゃんと『相棒』の再放送を見てたこと、夏休みのラジオ体操のスタンプのこと、いろーーーんなことがどしゃぁっと降りかかってくるからあれ?今っていつだっけ?私は何歳なんだっけ?と混乱する。

この記憶の雪崩が起きるとお腹の底とかお尻とかうなじとかがゾワゾワして眠れなくなる。
落ち着かない、居心地が良いとは言えない、怖い、でもある種興奮にも似たようなこの感覚の正体は何なんだろう。
多分、多分なんだけど、似たような感覚を、稽古場にいる人間の多数が感じている気がする。
この感覚は是非、客席で一緒に体験してほしい。

#WWⅢがTwitterでトレンド入りする、今。
揺れる男と轟音。
登場人物はキャスト欄にある通り“私たち”。
揺れているものは何だろう。
この轟音はどこから聞こえる?
私たちは何を持ってる?
それ持ってどうする?
それ持ってなにする?
稽古場が、“揺さぶられて”いる。

そんな稽古場がどんな道を往くのか、幕が開く頃にはどこに辿り着いているのか。
この稽古場だよりがその軌跡になればと思いながら、(本当は原口さんだったはずの(!))第一歩目を永野愛理がお送りするのでした。


……初っ端から纏まりのない文章だなと不安になりながら。

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