a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

行ったり来たり ~動けなくなったり~

2024-03-19 21:00:00 | 稽古場ブログ

本番まであと1週間を切りました。
芝居はかなりバカバカしく面白くなってきました。さすがホルヴァート作品、人間の潜在意識の内奥に迫ります。


先日はこの作品に出演していない劇団員・研究生の手伝いもあり、劇場に照明機材の吊り込みやら本番の準備をしました。
そして昨日と今日は稽古後に照明のシーン作りです。
いよいよ本番が迫ってきたなという感じがします。
稽古を終えて疲れている役者たちのことは早めに家に帰して、劇団の照明プランナーである真壁知恵子さんは深夜まで劇団に残り、ひとりで照明卓に向かって作業をしています。
劇団のみんなは彼女のことを“ちーこ”とか“ちーこさん”と呼んでいます。
ぼくはちーこと呼んでいます。
彼女は劇団の照明プランナーではありますが、今回はぼくの美術プランを見事に形にしてくれた道具方の一人でもあります。
彼女は材料費を節約することなども考えながら、最大限にぼくのイメージを具現化する方法を探ってくれました。
彼女の大道具製作に対するこだわりは、アンサンブルの道具方筆頭であった故入江龍太さんから受け継いだものなのでしょう。
舞台美術のカーテンも枝垂れ柳も彼女の作品です。
ぼくたちが稽古をしている間に彼女が製作に取り掛かってくれました。








ぼくたちの劇団では公演をする毎に劇団の伝統的な行事をおこないます。
それは団員みんなで上演する劇場付近のお店等にポスター(チラシ)を貼らせてもらいに出かけていくことです。
今回ぼくはちーことスカイツリー周辺を歩き回りました。
昨年『送りの夏』を上演した際に同じ地域を彼女一緒にまわり、その時になぜか知り合いがたくさんできたので、また今年も一緒に行こうとなったのです。
彼女はどこの店に行っても尻込みなどせずに、非常に積極的なアプローチを繰り返します。
1軒の店に(なぜか)3枚もポスターを貼らせてもらうという技を成し遂げたこともありました。
ぼくたちの再訪問を非常に喜んでくれた女主人がいらっしゃったり、昨年仲良くなった飲み屋の常連さんたちとも再開し、パチリと記念撮影。






それから最近、彼女には大変お世話になったことがあります。
3月6日の深夜、稽古場で仕事を終えて、空になったストーブに灯油を入れ劇団を出ようとした時、ぼくは人生初のぎっくり腰に見舞われ動けなくなってしまいました。
なにしろ初めてのことでどうしたらよいかもわからず、痛みを堪えなんとか床に横になるもそれ以降は激痛で身動きがとれずにそのまま横になったままでした。
2、3メートル先には薬箱が見えているにもかかわらず、障害物に阻まれてそこまで辿り着けない。
動けない。2、3時間もすれば歩けるようになるだろうと鷹を括っていたら、次の日の朝になっても痛みは変わらず、全く動ける状態ではありませんでした。
そして昼過ぎ、稽古の時間になっても状態は変わらず、ついには救急車に来てもらうことになりました。
そのとき付き添いをしてくれ、最終的にぼくを家まで送り届けてくれたのがちーこでした。
稽古も追い込みの時期だったのでかなりヒヤリとしましたが、入院することもなく、なんとか無事に稽古を続けられています。



それからもうひとつ。
ちーこは稽古後の作業が続くと、新座市のあちこちにある農家の直売所から食材を仕入れてきて、みんなのために賄いを作ってくれます。
稽古が終わり疲れた身体でまたこれから作業開始という時間に、みんなでテーブルを囲んで温かい食事ができるというのはなによりのことです。
きっと彼女は劇団のような人が集まる場にはなくてはならない存在の人なのだと思います。
その分彼女が抱える負担は大きいのでしょうが、嫌な顔ひとつせず、いつも思いやりを持って、劇団員が安心な稽古場を手に入れられるように、裏方の仕事を率先して引き受けてくれるのが彼女です。


芝居の話を書こうと思っていたのにちーこのことばかりになってしまいましたが、劇団の財産は人です。
劇団が70年の間続けてこられたのも、こうしたひとりひとりの努力の積み重ねがあるからだと思います。
ここに集まる一人ひとりがそれぞれのじぶんの能力を持ち寄り、支え合い、みんなの力を合わせることで、劇団は成り立っているのです。
そうやってゆっくりと劇団は歩みを進め、70年の記念の年を迎えることができました。
そういう意味ではかなり間違いだらけの茶番劇『行ったり来たり』をご覧になって、お腹を抱えて笑って、最後にはズドンと心に響くお土産を持って帰っていただければと思います。
野火止公演は2ステージとも満席になりましたので、どうぞみなさま、すみだパークシアター倉まで足をお運びください。
素晴らしい作品をお届けできると思います。
よろしくお願いいたします。

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東京演劇アンサンブル創立70年記念公演 第一弾
  行ったり来たり

エデン・フォン・ホルヴァート/作
大塚直/訳・ドラマトゥルク
公家義徳/演出

2024
3/23 (土) 14:00★
3/24 (日) 14:00★
 野火止RAUM

3/28 (木) 19:00
3/29 (金) 14:00/19:00
3/30 (土) 14:00/19:00★
3/31 (日) 14:00
 すみだパークシアター倉

全席自由
前売一般/4,300円 
前売U30/3,300円
★=Low Price Day/3,000円
当日/4,800円

Staff
音楽/monje
舞台美術/公家義徳
衣裳/稲村朋子
照明/真壁知恵子
音響/島猛
舞台監督/永濱渉
宣伝美術/本多敬 永野愛理
制作/小森明子 太田昭

Cast
ハヴリチェク/永野愛理
サメク/洪美玉
エーファ/福井奏美
コンスタンティン/雨宮大夢
ムルシツカ/浅井純彦
ハヌシュ夫人/西井裕美(フリー)
X/原口久美子
Y/志賀澤子
個人教育者/二宮聡(フリー)
その妻/鈴木貴絵
レーダ夫人/町田聡子
シュムッグリチンスキー/小田勇輔

公演詳細、チケットのお申し込みはHPにて

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