McCARTNEY II(1980 Paul McCartney)
1980年はポール逮捕のニュースで始まった。
ウイングスのツアーで来日した際、成田の税関で大麻不法所持で逮捕され、日本公演はもちろん中止。
当時はまだビートルズばっかりで、そこまでウイングスは気にしてなかったのだが、このニュースは衝撃だった(取り調べの模様はスネークマンショーのコントを参照のこと)。
何せ、世界のポール・マッカートニーを日本人が逮捕してしまったのである。
そんなことを日本人がしていいのか!
日本人が天下のジョン・レノンと結婚していいのか!と同じくらいの衝撃だったかもしれない。
余談だが、事件後アメリカの青年が「ポールを助けにいく」と空港でオモチャの銃を振り回し、警察に射殺されたというニュースもあった。
閑話休題、その後ウイングスは自然消滅的に解散(正式には'81年4月にデニーが脱退表明)、ポールが久しぶりにソロで取り組んだアルバムがこれ(レコーディングはワールドツアー前から始まってたらしいが)。
ソロ1作目の『McCARTNEY』同様、ほぼワンマンレコーディングの宅録で、前作『BACK TO THE EGG』からの流れというか、ニューウェーブやテクノポップを取り入れ、『McCartney』的なプライベート感が漂う。
確か、このアルバムからリアルタイムでポールを聴くようになったのだが、最初はやはり「なんじゃ、こりゃ?」的印象だったのだが、次第に馴染んできたものだ。
ちなみにこの年の12月、ジョンが射殺された。
01 Coming Up
ニューウェーブというか、ニュータイプのポールのポップソング。最初はポールってこんな曲作るんだ、こんな声出すんだ(たぶんリバーブ処理)と驚いた。シングルにはライヴバージョンも入っており、アメリカではそっちの方がヒットしたらしい。ポールがビートルズ時代の自分を含むバンドメンバー10人分の役をこなすプロモはあまりにも有名。
02 Temporary Secretary
妙な音の打ち込みにAギターの奇妙な組合せ。ポールのボーカルも不思議。内容はセクハラ部長の臨時秘書募集。
03 On the Way
新手法の2曲の後は、ヤクザなカウントで始まるベタなブルースナンバー。たぶんギターを思いっきり弾きたくて作ったんだろう。ベーシスト(かつマルチプレーヤー)として知られるポールだが、もともとはギター志望で、初期ビートルズで無理矢理ベースをやらされていたスチュアート・サトクリフの脱退によってやむなくベースを弾き始めたという話は、言うまでもないけどくどくど言っちゃった。マイナー進行をメジャー(3rd)で終わるのは、よくある手だけど大好きだなあ。
04 Waterfalls
お次ぎはベタなポールのバラード。ちょっと長いな。
05 Nobody Knows
続いてラフなロックンロール。昔風を狙ったのか、サウンドもチープ。これもまた不思議な声で歌っている。
06 Front Parlour
テクノ風インストロメンタル。BGMとして聞く分には軽くてよろしい。
07 Summer's Day Song
なんとも優雅なゆったりした曲で、大半がインストロメンタル。
08 Frozen Jap
B面頭からここまでインストロメンタルシリーズ。こちらは軽快なテンポで、ビートが効いているのでBGMには不向き。日本人の感情を考慮してか、アルバム中、唯一『フローズン・ジャパニーズ』という邦題らしからぬ邦題がついている。
09 Bogey Music
ずっと“ボギー”をブギのことだと思っていて、“ボギーマン”とはブギを演奏する人のことだと思ってたら、どうも小鬼のこと? SF小説をヒントに書いたものらしい。ノリがすべてで、ポールのドラム、張り切ってます。声質も妙。低音のユニゾンコーラスはオクターバーでも使ってるのかな?
10 Darkroom
カ~マカマカマカマカマ~。遊んでるなあ。12の『Check My Machine』と通じるところあり。
11 One of These Days
素朴なアコースティックバラード。全体いろんなチャレンジをしてるので、最後は安心してきける曲で締めくくろうという意図か。
***CD版ボーナストラック***
12 Check My Machine
シングルカット『Water Falls』のB面。高校のクラブの後輩にプレゼントされて聴いたときは、なんとヘンテコな曲だと思ったが(今でも思ってるが)、流す分にはそれほど苦にならないというか、意外と楽しいとさえ思ってしまう(ってのもえらい言われようだが)。
13 Secret Friend
イギリスの限定シングル『Temporary Secretary』のB面。当時流行の12インチということで、曲の長さは10分31秒。なんちゃない曲だが、車で聞き流すには妙に心地いい。
14 Goodnight Tonight
1979年のウイングスのシングル。これも当時流行のディスコソングをポールがやるとこうなる、って感じで、限りなくポップな1曲。昔のキャバレー風のプロモビデオも面白い。
(つづく)