青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

秋桜揺れる駅

2016年10月12日 05時14分52秒 | 東武鉄道

(コスモス揺れて@東武日光線下小代駅)

新栃木の駅から普通電車で30分、東武日光線の下小代駅。電車が鹿沼市から日光市に入って最初の駅になります。新栃木から先は主要駅を抜かせば日光線の小駅は完全にローカル線のそれで、日中では停車する列車も上下それぞれ1時間に1本程度になります。近年建て替えられたのか新しい駅舎ですが、PASMOの簡易リーダーがあるだけで券売機すらなく、レシート型の乗車駅証明書の発行機があるのみの無人駅です。

 

乗って来た普通電車が下小代の駅を出て行きます。ちなみに読み方ですが、「しもこしろ」ではなく「しもしろ」と濁る事を降りてみて初めて知った。まあこの程度の事であればどっちで言おうと意味は通じるんだろうけど、現場に来てみないと分からないこともあるもんですねえ。

 

ホームは緩い法面の下にあり、東武日光方面に向かっては浅い切通しの中を緩やかに登り坂が続いています。その法面の一部に、水抜きパイプが付けられた新しい土留め部分がある。これは、去年(平成27年)の9月に茨城県と栃木県を中心にした集中豪雨により、駅周辺の斜面が崩落した跡だったりする。あの豪雨は鬼怒川の氾濫によって関東鉄道の常総線が大きな被害を出しましたが、栃木県内でも東武日光線が築堤の盛り土崩壊やがけ崩れ、倒木、路盤への土砂流入などの被害を受けました。

  

駅を降りると、下小代の駅舎の向かいには旧下小代駅の駅舎が残っていて、今でもその姿を見る事が出来ます。なんでも1927年の日光線開業当時の駅舎だそうで、平成18年に駅としての役目を終えた後も解体されずにその姿を残しています。わざわざこの駅舎を保存するのに、土台の部分から動かして移築したのだとか…内部を見てみましたが、何やら物置然としており中に入って見学する感じではなかった。保存しているのなら、もうちょっと見られる事も考えたほうが良いのでは。そして旧駅の前には白ヤギが一匹。なぜ。

 

秋の色に満ちた下小代駅のホーム。駅の新栃木側の踏切に沿った民家には「東武鉄道きっぷ販売所・定期券申込取次店」の看板がある。JRとかだと駅前商店にきっぷの販売を委託しているケースなんかはままあるのだが、大手私鉄では珍しいのではないか。少なくとも自分は初めて見たのだが…これ、どう見ても普通の民家だよねえ(笑)。このドア開けて「すんません!きっぷ下さい!」と言うのもかなり勇気が必要な気がするんだけど。ドア開けて家族がメシとか食ってたらどーすんのさ。ちょー気まずいやんけw


撮影地は駅横の踏切から坂道を降りて5分程度らしいので気が楽だ。そもそも遠かったら電車で来てない(笑)。踏切が鳴り、駅を出て行く6050系の新栃木行きは最小ユニットの2両編成。空模様は照ったと思えばまた曇りで目まぐるしく変わる猫の目天気、リュックサックのひもを締め直して、撮影地に向かう事に致しましょう。
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郷愁のボックスシート

2016年10月11日 23時42分05秒 | 東武鉄道

(秋の盛りの築堤で@東武日光線某所)

三連休で一番天気がマトモだと思われた月曜日、一日おヒマをいただいて出掛けてみる。夏の富山以来めぼしいところに行ってなかったもんで、どこがいいかなあなんて情報を収集。秋の行楽シーズンに差し掛かる三連休ですし、10月14日の「鉄道の日」に合わせて鉄道会社も臨時列車やイベントがお盛ん。そう遠くに行かなくてもそこそこ楽しめそうな感じで思わず目移りしてしまうのではありますが、今回は関東の大手私鉄の中でもあまり撮影した事のない東武線沿線に出掛けてみる事にしました。

  

クルマで行っても良かったんだけど、帰りの渋滞が面倒くさそうなので電車で。横浜から北千住へ出る途中の上野で常磐線に乗り換えたのだが、上野駅のホームで三脚を持った連中が朝からウロウロしている。そういやこの日は「カシオペア紀行」の運行日だったね。3層構造になった東武電車の北千住の駅、本当は浅草から乗りたかった(浅草だと家から始発でも間に合わんのよ)快速の東武日光・会津田島行きを待つ。朝6時半の電車なのにまあ結構な乗車客がいるもんだ。ハイキング姿の中高年や、携行バッグを持ったチャリダーの姿が目立ちます。

 

浅草6:20発の快速東武日光・会津田島行きに使用される車両は、日光線系統の快速列車に使われる6050系。朝一番の日光方面優等列車なので赤いモケットのボックスシートは埋まり、めいめいが既に朝メシの弁当や飲み物、持ち込んだお菓子を広げて寛いでいる。車内に漂う雑多な匂いが混じり合って決して良い匂いではないんだけど、この匂いにも郷愁が感じられるというか、古き良き急行列車の旅らしい息遣いが残っているような気が。車内にもある方向幕は、分割併合する列車に充当される本形式らしい「この車両がどこへ行くのか」が一目で分かる誤乗防止用アイテム。

 

快速は複々線区間を突っ走り、東武動物公園から先は徐々に北関東らしい田園地帯の茫漠たる風景の中。終点の会津田島まで乗り通せば3時間半弱の長丁場、同じボックスシートにはどうやら栃木方面に冠婚葬祭のあるっぽい70代の母親と50代の息子が乗り合わせたんだけど、「〇〇ちゃんはどうしてる?」的な親子の膝つき合わせての会話をうつらうつらしながらぼんやりと聞いているのもやはり古き良き時代の急行列車の旅らしい。これで冷凍ミカンでも剥き始めたら最高なんだけどな…な~んて思いながら外を眺めていたら、大きな築堤をカーブして渡る利根川の眺めの雄大なこと!さすがの坂東太郎である。

 

私の目的地は会津田島行きのこの快速が止まらない駅なので、新栃木で接続する普通列車にお乗り換え。北千住から1時間10分は表定速度で言えば70km/hくらいなのでなかなかの快速ランナーである。北千住から春日部まで止まらないのがいい。まあ同席したおっちゃんは「越谷とか止まらないのに板倉東洋大前なんてこんな駅に止まるんだなあ」「俺が前に乗った時はこんな駅なかったのになあ」とか言ってましたが。ちなみに板倉東洋大前駅が出来たのは平成9年ですから、結構久し振りの日光線だったのね、おっちゃん。


新栃木駅の中線で宇都宮線の8000系更新車と並ぶ東武日光行き6050系。8000系が現行のデザインになる修繕工事が開始されたのが昭和61年、この6050系が製造されたのが昭和60年とほぼ同時期のせいか箱型二灯のヘッドライトに額縁型の張り上げブラックマスクの表情はよく似ていますね。ちなみに東武の8000系は私鉄の単独形式では最大の700両以上が製造された形式のため、車番が整理しきれなくなってご覧のような5ケタ(81106)のインフレナンバー編成がいるのはマニアには有名な話。

 

先ほどの快速とはうって変わって閑散とした東武日光行きの車内。2ドアの車体に並ぶボックスシート。リクライニングのない座席ですが座り心地はフカフカして悪くなく、背摺りについた立ち客用の持ち手と、ひじ掛けの整然とした並びにクラシック感がありますね。特別料金不要の車両で折り畳み用のテーブルが付いていたりと、しつらえも長距離向き。2両ユニットの編成ですが、各ユニットのクハ側にはトイレがあるので長時間乗車でも大丈夫です。


新栃木駅のホームを覆う木造の柱とトタン屋根と6050系。部屋とYシャツと私的な。なんか旅情を感じる一枚だな。駅員氏がフライ旗を持ってホームに立っているのって最近あまり見なくなったような気がするが、気のせいだろうか。写真に写っている6173号車はよく見ると運転台側にパンタグラフを付けてますね。たぶん冬季の霜取り用なんでしょうが、このスタイルで前パン上がったらかなりカッコいいんではないでしょうか。
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赤電が走る街

2016年10月07日 22時01分52秒 | ローカル私鉄

(狩川を渡る@塚原~和田河原間)

大雄山線随一の撮影ポイントでもある狩川の鉄橋。冬になると、サイド打ちで箱根の外輪山の向こうに真っ白い富士山の見える場所なんですが、富士山どころかまともに箱根も見えないような天候状態なので橋を渡って塚原の駅へカーブしてくるところを正面がちに。床下はピッカピカに塗られていて、鈍く光るボルスタアンカーが眩しい。


小田原駅から緑町の駅へ向かって下り勾配を降りてくる赤電塗装。行き先表示は「小田原」か「大雄山」のどちらかを内部から点灯させる行燈型。全列車が小田原行きか大雄山行きかしかないので、合理的と言えば合理的ですなあ。回送とか試運転の時はどうするのだろうか。


緑町を出ると、電車はゆっくりと東海道線の下をくぐって行きます。ここのカーブが半径100mくらいの結構急なカーブなので、おのずとこの路線の車両限界は18m以下の車両に限られているそうです。目一杯編成をくねらせて、窮屈にカーブを曲がって行く車両の台車が、車体からはみ出しそうですねえ。


大雄山線の終点、大雄山駅の一つ手前にある富士フイルム前駅。南足柄市は、「フジカラー」でお馴染みの日本最大の写真フィルムメーカー・富士フイルムの創業の地でもあります。1937年に豊富な湧水を工業用水として設立された足柄工場は今でも同社の主要事業所で、工場のみならずグループ会社のゼロックスの研修センターなどなどこの辺りの県道から見ると山一つ分富士フイルム関係の施設になってる感すらある。


富士フイルム前駅は古レールを曲げて屋根を掛けただけの単式ホームですが、他の駅より明らかに横幅のあるホームの広さが工場への通勤客を意識してるっぽさあるよね。まあ今現在どんだけの人が電車で工場へ通っているのか知る由もないんだけど、駅前の寂しい感じを見ると相当少なくなっているのは事実っぽいですね。


ラッチらしいラッチはなく、機能重視のいかにも工場の最寄り駅って感じの改札口ですね。一応は朝夕は係員が詰めて有人になるらしいですが、改札上の「椎野養魚場」の広告が渋いな…そういや小田原から平塚あたりにかけては椎野さんって苗字が多いイメージがありますね。一族なのかしら。関東ローカルだと「かつおの酒盗」のCMでお馴染みのしいの食品とかも小田原の会社だったっけ。ちなみにしいの食品のCMのナレーターは一時期椎名へきるだった事があるというどうでもいい話。シーノとシーナで韻を踏んでいるのだろうか。


モサモサしたソテツが伸びて看板を隠している富士フイルム駅前を横目に、赤電が大雄山へ。「足柄ハリカ」の看板もこれまた渋い。ギフト系企業のCMと言えばズームイン朝(NTV)が「シャディのサラダ館」で、朝のホットライン(TBS)が「贈り物のハリカ」であった。そんな時代が私の幼少期だ。シャディは一冊の百貨店で、アズユーライクで酒井和歌子。♪全国どこでもハリカのチェーン、贈り物はハリカです♪は獅子てんや・わんや師匠でしたな。ズームインは言わずもがなの徳光時代だったが、朝のホットラインは有村かおりとスポーツキャスターの大沼啓延サンの軽妙な語り口がさわやかで印象的であった。赤電が走っていた街に、赤電が帰って来た風景は、そんな昔の事をつらつらと思い出させてしまうのかもしれん(強引)。

シメがあんまり大雄山線と関係ない話で申し訳ない(笑)。
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足柄平野粛々と

2016年10月03日 19時00分00秒 | ローカル私鉄

(スカート付き5506編成@穴部~飯田岡間)

相模沼田から赤電塗装を追っかけて、大雄山線の中では比較的撮りやすい飯田岡駅の周辺に出て来ました。この辺りは大雄山線が狩川の堤防に沿って走る区間で、堤防に沿って僅かながら足柄平野の穀倉地帯が広がっています。稲穂は黄金に実りの秋を迎えていますけども、こうも雨続きだとなかなか刈り取りのタイミングも難しそう。


あっという間に小田原から折り返して来た赤電編成。全検明けですから床下機器もピカピカですね。3両編成の5000系は大雄山側からクモハ+モハ+クハ、パンタは中間車に2丁付いているのが特徴。シングルアーム化されていない中間車の2丁パンタと言うのは案外ないもんで、パッと思いつくのが京急800くらいですかねえ。


ココね、田んぼの脇にヒガンバナが咲くスポットでこの時期結構いい感じで撮れたんだけど、今年はとっくに枯れてしまったみたい。以前来た時は10月でも咲いていたんだが自然ってーのは一筋縄ではいかないもの。一部分だけ刈り取りの終わった田んぼに組まれたはぜ掛けの横を。右側の土手は狩川の堤防で、川を渡ると小田急線の蛍田のあたりに出る事が出来ます。


飯田岡から穴部までは歩いて15分程度。田んぼの脇の用水路にアメリカザリガニがワシャワシャいて思わずザリガニ釣りでもしたくなる土曜日。スカート履き&切れやすいLEDの5506編成。5506と5507はスカート履いてますけど、個人的にはスカート無しの方が好み。この顔にスカート履いちゃうとなんかイメージが重たくなる。


国鉄時代から特急の乗り入れがあったり、伊豆長岡や修善寺などの温泉街や観光地を持つ駿豆本線とは異なり、最乗寺への参詣輸送のほかは小田原経済圏内の都市間輸送を粛々と全うするのみの大雄山線は、神奈川県内の鉄道の中でもダントツに影が薄いイメージ。そもそも「伊豆箱根鉄道」の路線なのに伊豆も箱根も走っていないという看板に偽りあり的な(笑)路線ですが、平日土休日関係なく日中12分ヘッドのフリークエンシーは小田原市と南足柄市の間の堂々たるインターアーバンなのであります。
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追憶のサボ差して

2016年10月02日 16時34分57秒 | ローカル私鉄

(手書きPOP@大雄山駅ホーム)

ホワイトボードに書かれた、今回の復刻塗装イベントの概要。男性社員の方の字とお見受けしますけど、なかなかキレイな字で書かれていて読みやすい。自分もペン字はある程度自信があるんだけど、こういうホワイトボードとか黒板みたいなのに書くのは苦手。筆圧が高いから、手を置いて書かないととたんにヘタクソな字になってしまうんよね…ちなみに記念入場券とがグッズの類は買いませんでしたけど、親子でフリーきっぷを購入したので許してくれ(笑)。そう言えば以前は大雄山線ってフリーきっぷなかったんだよね。いつから出来たんだろう。


そぼ降る雨の中、赤電出発の一本前の電車に乗って大雄山を離れ、相模沼田駅で降りる。小田原と大雄山のちょうど真ん中あたり。小田原から大雄山まである12駅のうち、中間駅には五百羅漢・相模沼田・和田河原に交換設備がありますが、相対式ホームなのはこの相模沼田だけです。頭端式2線で交換する始発駅の小田原を含め、2駅おきに交換設備を置いて12分ヘッドの完全パターンダイヤなので、12分間隔が崩れる早朝深夜を除いては全交換駅で全列車が交換を行います。江ノ電と同じだね。



相模沼田を選んだのは、停車している列車を足元から抜きたいとなると相対式ホームのここしかないのかなというところでしょうか。前述のとおりこの駅では必ず列車交換するんで、小田原方の構内踏切逆サイドから構えると大雄山行きとのカブリが心配になってしまいますが、もとより大雄山で出発式をやって来るイベント列車なので若干の遅延を持って来る可能性が高く、そうなると大雄山行きが相模沼田には先入れ先出しになるはずとの読み。果たせるかな、読み通りに大雄山行きが若干の遅れを持った赤電の入線を待って先に出発…したのはいいが、赤電のサイドに思いっきり交換車両が映り込んでもうたw


少々画角を開き気味にしてもうワンカット。もうお気づきの方も多いと思われますが、大雄山の駅で留置されていた時とは大きく異なり、営業運転では前面に旧型時代のサボ風のヘッドマークを掲げております!これはいいですね!旧型国電ベースの角ばった顔つきに、四角サボがはまった古い電車が小田原駅の隅っこに佇んでいた風景…小さい頃の箱根旅行の途中で何度か見た事がありますけど、赤電塗装のV字型の塗り分けの所に黄色のサボがピシッとハマって、とてもスタイリッシュになりました。
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