青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

真夏の近江熱風録 癒しの駅編

2013年07月21日 04時55分32秒 | 近江鉄道

(田んぼの中に忽然と@フジテック本社)

米原駅を出ると、JR線を右に分けてすぐ、車窓右側に田んぼの中に忽然とタワーのようなものがそびえているのが見えます。これは、日本有数のエレベーターメーカーである株式会社フジテックの本社と、「ビッグウイング」と言う名称の研究センター。タワーはエレベーターの実験棟でして、その最寄り駅として開設されたのが米原駅の次の駅であるフジテック前駅。実際この会社に用事がある人のどんくらいが使っているのかは不明。基本車通勤だろうしねえ。ただ、こんな感じに特定の企業向けに駅を作ると、当然ですがその企業から駅の建設代金がナンボか出たりもするんで、お互いに悪い話ではない。近江鉄道には他にもこの手の駅がいくつかありますが、ネーミングライツ的なモノを与えて駅を作って貰うと言う考え方は、地方私鉄の特徴の一つと言えるかもしれません。


米原を出た電車は、旧中山道沿いにフジテック前、鳥居本と停車し、佐和山トンネルで小さなサミットを越えますと視界が開け、右側の山の上に彦根城を見ながら彦根の街へ降りて行きます。電車区と修理工場を持つ彦根駅は近江鉄道の中心駅でして、運行上も一旦ここで分断される列車も多い様子。とりあえず米原から乗って来た電車はこの彦根で終点にて車庫に回されてしまうので、すぐに接続する貴生川行きに乗り換え。今度も同じ800系の804編成。一旦彦根はスルーしますが、お後のお楽しみもありますのでとりあえずは先を急ぐことに致します。

 

米原で別れ、彦根で再び寄り添ったJR線を右に見ながらひこね芹川、またまたお別れして彦根口を過ぎると(この彦根口の駅舎がたいそう古くて渋かったなあ)、多賀大社へ向かう多賀線の分岐駅である高宮駅に入って行きます。車窓前面から見ると、左側にググッとカーブしているのが多賀線の線路ですね。多賀線は駅の手前で本線の下りから分岐して急カーブの途中にホームを作っているので、ホームは彦根側から見ると逆ハの字型と言うか、扇形をしております。鶴見線の浅野駅とか、去年行った富山地鉄の寺田駅とかを思い出していただければよろしいかと(笑)。中線を挟んで本線上下の交換設備がありますが、相対したホームの上下列車の停止位置はちょうどお互いの運転席を頂点に突き合わせるような感じで互い違いになっていて、タブレット交換をしていた名残かなんかなのでしょうか。その上下列車の停止位置の間を構内踏切が連絡しており、複雑ながらもなかなか機能的な構造であると言えるんじゃないでしょうかね。よく見るとかさ上げ前のホームの基礎部分はレンガ積みだな…どんだけ歴史があるんだよと問えば、明治31年に開業した駅なんだそうで、なるほどなあと思ったり。


高宮駅に到着した彦根発貴生川行き列車。「忍たま乱太郎」マーク付き。何でもこのアニメ映画とタイアップした企画を近江グループでやっているかららしい。さして興味はない(笑)が、終点の貴生川が甲賀忍者で有名な甲賀市にある事も関係しているのかな、と。あ、駅に到着するときの車内の自動放送が、「次は、た↑かみや、た↑かみやです」とやたら「た」の部分を上げるイントネーションだったのがすごく気になったのだが、地元のイントネーションはこれで正しいそうです。

 

ここから接続待ちをしている多賀線の電車に乗り換えて多賀大社前を目指そうと思ったのだが、広い構内と逆ハの字型のホーム、そして構内踏切の雰囲気が良過ぎるなあ。時刻表を見ると、多賀大社へ向かう電車は30分後にまた高宮駅に戻って来るようなので、まずはこの駅をじっくりと見学してみる事に。多賀線の到着に本線の交換が重なり、多賀線から本線の上り彦根方面に乗り換えたかった家族連れが構内踏切に阻まれているのに気付くと、構内踏切の番をする高宮駅の駅員さんが「乗りますかあ~?」と一声。遮断棒を上げて乗り換え客の誘導をする光景などは実にローカル私鉄らしい、人の心が通った微笑ましさがあります。

 

急カーブした多賀線ホームに停まる車両は、単行専門の220型。高宮~多賀大社前の折り返し運用に充当中。夏の日差しと木造のホーム上屋から落ちる影、多賀線のホームの向こうには留置線が何本かあるようなんですが、夏草に覆われて見る影もなく自然に帰ってしまっているかのようです。ちなみにこの220型ってのはなかなか個性ある魅力的なクルマでして、今回の近江訪問で一番気に入った車両なのですがその魅力は改めて(笑)。

 

上下列車の交換も終わり、多賀線の電車が出て行って、高宮駅に静寂が戻ります。カーッと照りつける日差しの下、缶コーヒーを飲みながらホームの端っこにある喫煙所で一服。ハの字型ホームの根元に広がった小スペースには申し訳程度の植栽とモルタル造りの古い待合室がありますが、その待合室の壁にはアサガオの棚が立て掛けられていて、こういう小物系の雰囲気の出し方がいちいち絶妙に思うのですが…全国のローカル私鉄駅舎ファンの皆様いかがなもんでしょうか(笑)。

  

ああ書く事が尽きないな。ともかくいい雰囲気の駅って言うのは佇んでいるだけでヒーリング効果があると言うか、アタクシにとっては岩盤浴とかマッサージとかアロマテラピーとかそう言うものに近い。そんな癒しのエッセンスにどっぷり浸ってたら構内踏切が鳴って、やって来た上り電車は6月にデビューしたばかりの900系でした。「淡海号」と名付けられた元西武新101系な訳ですが、白いのならこないだ多摩川線で乗って来たばっかだぞ(笑)。ともあれ近江では久々の新車、群青色のボディにピンクのラインとイルカをあしらったデザインは結構強烈なものがあって、思わずオッチャンもカメラを向けてしまうのであります。いずれにしろ西武系列の近江鉄道は昔っから西武の車両が入って来るので、何十年かしたらスマイルトレインとかが走ってるかもしれないねえ。


さて、そうこうしているうちに多賀線の220型が大カーブに車輪をキイキイ言わしながら高宮に戻って来ましたので、そろそろ行くとしますか。まずは多賀大社前まで、多賀線の完乗を目指します。と言っても、時間的には5~6分だけどなw

次回へ続く。
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