(5000と6000、その差異。@花畑駅)
甘木線を宮の陣駅で乗り換え、急行花畑行きに乗り換えて花畑まで。花畑は、西鉄久留米の一つ先の駅で、急行電車の終点だったりもしますから、車庫でもあるのかと思ったら普通の2面4線の高架駅。花畑止まりの電車は、いったん回送扱いで普通に本線を大牟田方面へ進み、本線上を渡り線を使って折り返していくようです。そこまでダイヤが逼迫していないから出来る芸当なんでしょうけど、関東の大手私鉄の感覚で言うと、小田急の向ヶ丘遊園や京王の八幡山のように、Y線型の引き上げ線とかを付けてあげたくなる配線となっています。花畑止まりの5000形急行に並んだ福岡天神行きの6000形特急。どちらもアイスグリーンにボンレッド、角型のボックスに丸形ライト、左右非対称のパノラミックウインドウは同様ですが、3ドアの5000に対し4ドアの6000というサイドビューはともかく、肉抜き型のスカートからジャンパ線がむき出し、上部設置のワイパーが精悍な5000形に対し、電連導入で厚めのスカート、張り出し屋根、下部設置のワイパーということで6000形は後発の車両の割にどうにも野暮ったく見える。5000形の緩いアーチ形の優美な屋根の形に対し、肩パッドが入ったような張り出し屋根の車体形状がなあ。妙に胴長感が出ていて、パン屋のパン職人がかぶる帽子のようだ。
特急が発車したホームに、大牟田方でエンド交換をして転線した急行電車が据え付けられた。その僅かな時間を使って、今度は天神側の渡り線を使って上り4番に入って来たのが6000形改造車の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」。最近流行りのレストラン観光列車。金曜日のツアーは、西鉄福岡を午前中に出て太宰府に立ち寄り、食事を楽しみながら花畑の側線でトイレ休憩を兼ねて30分の停車。こっから柳川を経由して大牟田が14時半。途中下車可能なコースでお1人さま11,000円。食事は地元シェフ監修の食前酒から始まるコース料理、この手の観光列車に乗ったことないし、お値段は弾んでしまうけど旅先の財布のヒモというのは緩いもの。ちょっとその気はあったんだけど、残念ながら事前予約のサイトを覗いた時点で満席。参加することは叶わなかったのでありました。
花畑から後続の特急電車に乗って15分、西鉄柳川でこの日三回目の途中下車。柳川市は沖端川と塩塚川に挟まれた低湿地帯に水を引き込み、柳川城下に濠を巡らした「水の都」と呼ばれる観光都市ですが、西鉄柳川の駅は趣ある旧市街や水郷巡りの拠点地区である本町方面からはかなり離れていて、西鉄柳川の駅からの観光にはバスやレンタサイクルなんかを使う方が多いみたいですね。駅前には大きなバスロータリーと車寄せがあって、観光客を待つタクシーがたむろしています。海からは5~6km離れているんですが、何となく空の色に有明海を感じるというか、「海」の雰囲気がそこはかとなく感じられる街です。駅前のお店に「うなぎ」なんて看板が出てるとその気になっちゃうけど、柳川名物「ウナギのせいろ蒸し」はなかなかいいお値段がします。さっき久留米でラーメン食っちゃったしね。タイラギ、ウミタケ、アゲマキ、おきゅうと、ワラスボ、ムツゴロウ。時間があればじっくりと泊まって味わうものはたくさんある街であります。
現在は合併して柳川市となっていますが、もともと西鉄柳川の駅は柳川市ではなく、柳川市のお隣にある山門郡三橋町にありました。中心街から離れているのも無理はないのですが、地形図を見ると西鉄電車は掘割が網の目のように走る柳川の中心街を避けるように手前の矢加部駅付近で東へ向きを変えており、どうも「市街には入りたいけど地盤が緩そう&架橋の数が増えて大変そう」みたいな思惑が見え隠れします。個人的には、それこそ総武本線の佐原とか、鹿島線の潮来とか、そういう水郷風景を絡めて撮影するロケーションを希望していたのですが、地図見つつウロウロしてみたんですけど、そういうのはほとんどありませんでした(笑)。僅かに川下りの乗船場に続く船溜まりに西鉄電車の小橋が掛かっていて、使われない小舟が夏の暑さの中で気怠そうに揺らめいている。ちょっと構図的にはごちゃっとしているんですが、そういう街の有象無象もひっくるめて西鉄電車の柳川の雰囲気。ちょうどよく、柳川観光ラッピングトレイン「水都」がやって来ました。
あまりの暑さと、ほとんど動きのないお堀の水に涼しさの効果はいくばくもなく・・・淀む水面に夏雲が浮かぶ。川下りの船着き場の葦簀の下で、観光客を待っている船頭さんもつまらなそうにしていたが、客の来ないことに嫌気が差したか、あまりの暑さに耐えかねたのか、事務所の建物に姿を消した。船溜まりに舫われた小舟の内側に塗られた色と、小橋を渡るアイスグリーンが走り抜けた時だけが、ちょっとだけ涼しかったような、気がした。