あまりの暑さに、暑さ対策グッズを売っている売り場を回ってから会場にむかいました。
(「ホカロン」の冷たいバージョンとか水にぬらすとつめたくなるものとかいろいろあるんですね~試してみます)
この学習会は、東京大学大学院の環境分析化学研究室の小豆川勝見助教授を講師に迎えての学習会でした。
会場にぎちぎちに椅子を出して、人間の熱気と質問の熱気と、とにかく熱気のある学習会でした。
今まで、原子炉設計者や原子力の研究者・医者やチェルノブイリの支援者等の話は聞いてきましたが、「環境分析化学」をやっている人ははじめてで、これまでとは違う視点の話が興味深かったです。「放射能とは何十年という長いつきあいになるので気張らずにやっていきましょう」という言葉どおり気張らないお話でした。
二時間以上の学習会だったので、印象に残ったことだけ書いておきます。
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<いろいろな測定>
☆核種の違い~ウラン235が割れて、大小のかけらができたと考える。
ヨウ素・セシウム・ストロンチウムが代表だが、その他細かいものを入れると15種が確認されている。プルトニウムも少なくとも飯館村まではとんでいる。セシウムの中でも 134と137が1対1で検出されているのが今回の特徴。134は半減期が二年と短い。
(東電が発表していたデータの中に塩素38というのがあったので、専門家の間では「核爆発か」と緊張が走ったが、「ナトリウム24」がなかったから、ミスだったのだろうと推定に)
☆線の違い~アルファ線・ベータ線・ガンマ線・X線
☆単位の違い~ベクレルとシーベルト(ベクレルが核種ごとなので足してはいけない) ※チェルノブイリではキュリー
☆何を測るか~空間・土壌・食品・人間
測定結果を比較するのは、測定方法の統一が必要。ようやく空間測定で1メートルにしようとか50センチにしようとかいうふうに統一されてきたが、土壌測定の場合、どうやって土をとるかのルールがまだない。この先生のところでは、かきみだしていない土20センチ平方メートルを表面一センチはぎとるように指示しているそうです。それをかきまぜて均一にして、必要な量を使っているそうです。土壌測定の場合、重さあたりなのか、面積あたりなのかの違いもある。現在は重さあたりでやっているが、面積あたりにしていくことも研究中。
水道水の測定は東京都の測定と一致している。食品測定について研究中。お茶の葉とか食物片とかは測定結果のばらつきが大きい。肉は現在研究中だが思った以上の値がでている。
人間を測定するホールボデイカウンターは高価。現在日本で10何台のはず。まわりの放射線の少ない地域ではからないと正確でない。体の表面まで出てこない放射線もあるので測れないものもある。(プルトニウム汚染は測れない)ヨウ素のように半減期がみじかくすでに終わっている放射能の測定はできない。
☆測定結果には誤差がつきもの。信頼できる専門機関は誤差まで表示するものである。
☆放医研が、空間・土壌・食品など合わせての年間の推計を出そうという試みをはじめている。
<個人の測定について>
個人で買っている放射能測定機の値はとにかくバラバラになるのがふつうである。
本来は標準線源をもとに、校正する作業ができるのがのぞましい。ができない機種もあるし、できてもコストがかかる。なので個人の線量計は相対変化を知るものだというふうにとらえて活用するべきと思う。
①定点観測~同じ時間・同じ場所・同じ向きで測って比較することは意味がある。
②ホットスポット発見~地域の中でとりわけ放射線量の高い地の発見には役にたつ。
<現在の土壌汚染>
・駒場の現在の土壌汚染は、324±Bg/kg 中国の核実験のとき3Bg/kg 何もなかった時の平均は0.1~1Bg/kg
福島の土壌汚染は、都内の1万倍~10万倍。
<これからどうなるのか>
原発の再爆発の可能性もないとはいえないわけだが~。
順調に原発が収束していった場合、大気の汚染は次第に減っていくが、土壌汚染はなかなか減らない。(セシウム137は9年で半分)。コンクリートで固めた町では放射能は洗い流されて減っていくが、その分下水処理場・ゴミの処理場での汚染が大きくなる。下水処理・ゴミ処理の放射能対策も各自治体それぞれで検討しているなのが現状ではないか。
科学の目だけで考えると「最良の処理方法はコンクリートにつめて海溝に落とすしかない」と自分としては思ったりするが、実際は難しいのだろうと思う。
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感想
この先生は分析化学の専門家であり、チェルノブイリのことはにわか勉強をされたのだろうと思いますが、「チェルノブイリの被害として、作業員が28名死亡」とかチェルノブイリの被害を極端に少なく話されたのには驚きました。こういう意見はやっぱりいまだに大きいのだとあらためて認識し、チェルノブイリの被害を伝える映画の上映をしなければとひそかに決意をあらたにしました。(この場に集まっていた人はかなり勉強している人たちで、かなりがんがん反論する意見がでましたが。)
会場発言として、アメリカのプルトニウム工場から9キロのところで育った女性の発言がありました。1941年から2005年に閉鎖になるまで、秘密の火事があったりしたことも。肺がんや甲状腺の病気もいっぱいみてきたそうです。この場ではとても語り尽くせなかったと思いますが、こういう放射能汚染の問題も世界が注目していく必要があると思いました。
お話がもりだくさんで、実際に測定する時間が短かったのですが、いろんな測定機をもちよって三つの線源を測定しあいました。とにかくまちまち!ということを痛感しました。本当に相対評価を見ることしかできないのだとしみじみ思いました。