731に関する映画を探していて、こちらに出会いました。
劇場公開当時タイトルは知っていたものの、内容は知らなかったので、レンタルDVDをみて、驚きました。
731のことは、「悪魔の飽食」が出版された頃知り、当時「黒い太陽731」を観て、鑑賞会をやった記憶があります。
事実を伝えるのは大事とはいうものの、あまりに残虐な事実を伝えるというのは、難しく、この上映会の時は途中でかえってしまう人が複数いました。
この映画も、海外の監督だから作れた映画ともいえそうです。
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「スパイの妻」(2020年製作/115分/日本)
- 日本人監督が731を描くとしたらどんな映画なら作れるのだろうかと想像していましたが、この映画はその想像を見事に裏切ってくれて、感嘆しました。
日米開戦前の1940年の神戸を舞台に、貿易会社を経営していた主人公が、満州に旅行にいき、そこで731で何が行われているかを知ってしまい、許されないことと思い、海外にこの事実を訴えることで、止めようとする物語でした。
妻(タイトルにあるようにこちらが主人公とも言えます)から、「日本を売ることになるんじゃないか」と問われ、「自分はコスモポリタンだから」「海外では必ず同じ考えの人に出会えるはず」というやりとりがみごとでした。
これっぽっちも社会派の映画の雰囲気は出さず、サスペンスとラブロマンスの映画でありながら、しっかり社会的なテーマを盛り込んでいて、見事でした。
監督は黒沢清監督ですが、企画は、黒沢清監督の大学での教え子である濱口竜介氏と野原位氏の二人から持ち込まれ、脚本もほぼそのお二人が書かれたそうです。こちらに対談があります。
「スパイの妻」は、第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。世界各地で上映されたそうです。
日本にこんな才能をもつ若き映画人が生まれていたことを知り、うれしくなりました。