「チェルノブイリ1986」
とりあえず感想を羅列しておきます(後でまとめようと思います)
◆一組の男女を主人公にすることで、より一層チェルノブイリ原発事故が市民の生活に与えた影響を描き出そうとした映画とのことでした。
(この主人公に感情移入できなかったという口コミは結構ありましたが、私はそんなことはなかったです。鉄砲玉のようだった一人の男性が、ある時自分に10歳の息子がいると知ってからの戸惑いとか変化とか。。。すごく共感‣想像できました。この鉄砲玉のような男性への女性の思いも、共感できました。父親が誰かもわからないまま育った少年の心細い感じも伝わってきました。三人の役者さんそれぞれ素晴らしかったです。こういう愛の形は、今日本では失われつつあり、だから感情移入できないという声が多かったのかもしれないと思ったりしました。)
◆企画したのは、20代の時に監督としてチェルノブイリ原発に撮影に入られた人とのことで、脚本もすごく調べて書かれていて、私がこれまで断片的に知っていたようなことが、リアルな映像として見せてもらい、より一層記憶に刻まれた気がします。
◇真っ先に駆け付けた消防士の人たち
◇放射線障害で倒れ、運ばれていった病院の様子
◇何台ものバスで避難していくプリピャチの人たち
◇でも当初は隠蔽されていたから、何事もなかったかのように行われたメーデー
◇次の爆発を防ぐために、地下の水槽のバルブの栓を抜くしかないということで、集められた人たち
◇その作業の様子
※その作業は、実際の原発を舞台に撮影されたそうで、「BOLT」を思い起こさせられました。最後の事故処理は人間の手作業でしかどうにもならないことをこれでもかと描かれていたので、原発のこわさがあらためて骨身にしみた感じです。
◇主人公が被ばくによって重症者用の病棟にはいり、主人公の恋人?が面会に行く場面は、「チェルノブイリの祈り」の最初の話そのままでした。
本で読む「チェルノブイリの祈り」以上に、映像だから伝わってきたともいえます。
※放射線障害についてものすごく研究して忠実に描写しようとしたようですが、それでもひどい画面は長写ししたりせずに、さらっとうつし、あとは観る者に想像させてくれる演出に、好感をもちました。
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こう書くとおすすめできる映画のようですが、人にお勧めしにくい点もありました。
◇二時間の重厚なロシア映画で、長く感じました。
「これぞロシア映画」という印象なのですが、私たちは次第に長い映画は観ることができなくなっているのを感じたり。。。しました。
◇「史実をもとにしたフィクション」ということなのですが、「当初の一番危険な作業に参加した人は、スイスでの特殊な治療を受けられる」という設定があり、主人公は息子を助けるために危険な作業に参加し、息子はスイスに治療に行くというストーリーになっていたこと。
こんな話は聞いたこともないので、おそらくフィクションだと思うのですが(事実としたら歴史が塗り替えられるような大変なことだと思われますが)、ここまで史実に忠実に描いているのに、このフィクションがあるために、この映画全体の印象を大きく変えてしまっていると思いました。
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チェルノブイリ原発事故というものをトータルでみたときに、さらにひどい状況になりえたかもしれないところを、なんとかリグビダートルの人たちの力で、くいとめたという事実があるわけで、そのことを忘れないで、その時犠牲になった人たちのことを忘れないで伝えていこうという思いの伝わってくる映画で、エンデイングはその人たちの名前が書かれ、読み上げられていました。
福島原発事故を経験中で、チェルノブイリとは違う展開になっている日本の今を、別の視点で考えさせられる映画でもありました。