「原発と映画」プロジェクト準備ブログ

原発に関する映画の紹介をメインに2011年から書いているブログです。

原発に関する映画その86「いのちの岐路に立つ 核を抱きしめたニッポン国」

2023-07-31 14:06:12 | 原発と映画

「いのちの岐路に立つ 核を抱きしめたニッポン国」(原村政樹監督 日本 110分)

公式HPはこちらです

ご縁があって、みることができましたが、すごくいい映画でした。

以下のたった11人の人にインタビューしていく映画ですが、110分が長くなく、知らなかったことも次々に紹介され、それぞれの人の思いに共感でき、核ができてから70年以上がたち、原水爆も原発も完全になくすしかないと、思いを新たにする映画でした。

原水爆反対・原発反対の行動をされている方にとっても気づきの多い映画と思いますが、わかりやすい映画でもあるので、高校生や大学生の方はもちろん、中学生でも小学生でも110分観ていられるようなら大丈夫(みてほしい映画)と思いました。

学校の先生にも見てもらって、あちこちの学校などでも上映の場が広がっていけばと思いました。

<出演者 敬称略>

堀江壮(広島の被爆者/『伊方原発運転差止広島裁判』原告団長)

伊藤 正雄 (広島の被爆者/『伊方原発運転差止広島裁判』原告副団長)

西岡洋(長崎の被爆者/『原爆の図』巡回展協力者)

大石又七(ビキニ水爆の被爆者/『築地にマグロ塚を作る会』主宰)

藤本陽一(元東大原子核研究所教授/早稲田大学名誉教授)

加藤哲郎(一橋大学名誉教授/元早稲田大学大学院政治学研究科客員教授)

樋口健二(報道写真家)

梅田隆亮(元原発労働者/労災認定裁判原告)

椋本定憲(元阿南市市議会議員(6期))

太居雅敏(徳島県阿南市椿泊の漁師(小型定置網))

関千枝子(広島の被爆者/ジャーナリスト)

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ドキュメンタリーの場合、直接映像で観てこそ伝わってくるものが大事なので、「ネタバレ」は心配しないでいいと思いますので、少し詳しく内容にふれて感想をかきとめます。

◇今原水爆も原発もなくせてないけれど、70年の歴史の中で、闘ってきた人たちの姿に焦点を当てた映画でした。米軍の占領下で、原爆の被害を語ってはいけない、写真を広めてはいけないという時代に、絵なら大丈夫ということで、丸木夫妻の原爆の図展が日本中で開かれ、長蛇の列ができて人が見に来た話とか初めて聞きました。

◇ビキニ事件が起きた頃、大気圏内核実験があっちでもこっちでも行われるようになった時代に、世界中の科学者がその状況を危惧して、ネットワークができて、核の危険情報を共有し、日本では藤本陽一さんという科学者が「原発黒書」という一冊の本にまとめた話もでてきました。1964年に部分的核実験停止条約が締結され、大気圏での核実験はなくなるのですが、それも多くの人の努力があったからこそなのだと、初めて知りました。
 
◇徳島で原発計画を止めた人の話がでてきて、途中でこれは国策だから、議会にも影響力持たないとダメと思い議員になり、「原発黒書」を手元において、毎議会原発の危険性についてだけ質問を続けたという話もでてきました。(市長が三年後に撤回を表明)
 
◇圧巻は原発労働者をとり続けた樋口さんでした。最初に被爆労働者として声を上げた岩佐さんとの出会った当時の話から、最近裁判を訴えている梅田隆亮さんの姿や樋口さんと梅田さんとの対話、樋口さんが自分が原子炉の中に入れた時のことやその写真もでてきて、深く印象に残りました。
 
被ばく労働者の問題は、裁判を闘っている数人の人の問題ではない、その背後に少なくとも50万人くらいの被ばくしながら働いている人がいるということを感じさせてくれました。
 
◇第五福竜丸の大石又七さんへのインタビューは、倒れた後のリハビリの場面から始まり、おそらくは存命中の最後の映画かと思います。
20歳で被爆し入院中に、隣のベットで寝ていた久保山さんが40歳で苦しんでなくなるさまを見てきたこと。
東京に出てきて、被ばくしていることを隠して暮らしてきたこと。
仲間が次々に亡くなるのを知り、途中から自分が伝えるしかないと、講演も始め、本もたくさん書いたこと。
東京湾に打ち捨てられていた第五福竜丸の保存運動のこと。
自分たちは一発の核実験でこんなひどい目にあったけれど、もし核戦争が起きたらこんなレベルではないことだからこそわかってほしいとの言葉、ひびきました。
 
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被爆国日本で、原発がここまで推進されたのは、進めようとした人たちがいたからこそではあるけれど、同時に「原子力の平和利用」ということを多くの国民が受け入れてしまった面も大きいことが映画の中で語られていて、でもこの映画をみると、原子力に平和利用などということはありえないとはっきりわかります。
 
広島に始まり、広島で終わる映画で、原爆の被爆者の方が口々に語られる被爆体験も、記憶し記録しておくべき貴重な証言映像でした。
原爆で被爆した方が、原発を差し止めるために裁判を起こすということは、ものすごく特別なことと思っていますが、伊方原発差止広島訴訟の原告団長の思いがしっかり伝わってきました。
 
登場するどの人もどの人も心にしみる言葉を語ってくださり、途中に挿入される写真なども効果的で、原村政樹監督のお力の大きさも、感じました。
 
ここに登場された人たちは、どの人も道なき道を切り開いて行動してきた人たちで、その道は今はまだ細い細い道ではあるけれど、これから何をしていけばいいのか、示してくれている映画と感じました。

 

 

コメント
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