疑問な点と貴重な点があり、かなり迷ったのですが、「その27」とすることにしました。10日朝この項訂正しました。
原発で働いていた人の中で生き残った人の証言をまじえながら、原発事故に至る一時間を再現している2006年アメリカのデイスカバリーチャンネルで制作された再現ドラマ。(日本ではDVD発売)
<疑問点>
☆ドキュメンタリードラマというジャンルになると思うのですが、こういう場合どこまでか事実でどこまでがフィクションなのかが作り手の誠実さが問われると思うのですが~、そういう誠実さがあまり感じられない点
1.事故の原因について 最近でも「地震が原因だったけれど隠されていた」とする説が出てくるほどで、原因については慎重でなければいけないと思うのにこの映像は断定していること。
1.被害について 被害の大きさも今もって正確な数字が出てこない状況なのに、この映像では、最後の頃で〇万人とすごく少ない人数を述べているだけです。子どもの被害とかには全くふれていません。
1.生存者の証言 生き残った数少ない人の証言を中心に構成しているのですが、人間の記憶の限界もあるわけだし、どこまで細部にわたる信憑性があるのだろうかと思います。
※もとにしている本があるようなので、時間があったらどこまでが事実でどこまでがフィクションなのか本を読んで確認してみたいとは思います。
<貴重な点>
現場の人間が原子炉の状態が不安定なので実験を行うのは危険だと認識し、とめようとしたけれど、上司(四号炉の責任者)が部下の意見をきかず、実験を強行し、事故に至った経過を迫力満点に描いています。(たった一時間のことをあきさせないで描いているのは見事です)
これをもって「旧ソ連の硬直体制」に問題があったと制作者は言いたいようです。(DVDのパッケージにそう書いてあります) でも私が観て思うのは、この働く場の状況は今の日本そのままです。
社会主義であれ資本主義であれ、民主主義のない職場の状況が事故をうむのだということが、ひしひしと伝わってくる映像でした。
※それからさらりと出てくるのですが、この時旧ソ連が原発の実験を急いでやろうとした背景に、旧ソ連がイラク(?)に輸出した原発をイスラエルが攻撃した話が出てきます。原発に対する空からの攻撃というのは、心配されながらも実際には今日までなかったとばかり思っていたのですが、ちがったのかもしれません。確認したいものです。
※チェルノブイリ原発の残った原子炉を舞台に撮影しているとか、責任者の個人的な背景の話とか、原発で働く労働者の社会的位置とか、興味深い点もいろいろありました。
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この映像は、アメリカのテレビの「ある種軽さ」が事故の深刻さにそぐわない感じがして薦めたくない映像と最初思いましたが、逆にいうと深刻な映像は観たくない人には観やすい映像といえそうです。
もし日本で本格的に上映しようとするなら、こんなふうにしたいというのを書いておきます。
1、映像の最初か最後に 「一部フィクションである」というただしがき、原発事故による被害の大きさについての一文あるいは映像をつける。
2.ていねいで誠実な資料(パンフレット等)作成する。
3.宣伝(チラシなど)の中で、「旧ソ連の硬直体制に問題があった」というのはやめ「現場の人間の声の届かない民主主義のない職場は危ない!!」というように変える。
(何かわかったら追記します)