「決断 運命を変えた母子避難」2024年/90分/日本 安孫子亘監督
配給:ミルフィルム
新しい311関連映画は少ない2024年、安孫子亘監督が七年の歳月をかけて完成させたこの作品は、三月に完成し、記者会見・試写会が行われ、先行上映が行われ、これから本格的に劇場公開が始まるそうです。
(試写会で観ることができたので、原発に関する映画105として書きます)
公式HPは こちら
東日本大震災に伴う福島原発事故により人生最大の決断を迫られ、福島県から全国各地へ自主避難した10組の家族の苦悩と闘い、そして現状を描いた証言ドキュメンタリー。
原発問題と命懸けで闘った元福島県知事・佐藤栄佐久のドキュメンタリー「『知事抹殺』の真実」(2017年)を作った安孫子亘監督はその上映に全国を回る中、避難している人たちに出会い、撮影を承諾してくれた人たちをおいかけて、7年の歳月をかけて完成させたそうです。
2011年3月11日、原発事故の発生で、多くの人たちが、避難という選択をしました。それは情報が錯そうする中、子どもの命と健康を守るということを最優先した人達にとって「人生の決断」ともいえることでした。
一体どれだけの人が避難・移住の決断をしたのか、確かなことは誰にも分りません。ほとんどの人はカメラの前に立つことを避ける人も少なくない中、ここに登場される10組の人達は、選挙に出たり、裁判を闘ったり、とりわけ強い意志をもち、運命を自分の意思で切り開こうとしてきた人たちであり、安孫子監督のカメラの前で、本音を語られているその言葉は、311被害を明らかにするという意味だけでなく、歴史を作る人たちの生きざまを描いたという意味でも、貴重な証言ともいえるドキュメンタリーです。
また、ドキュメンタリーにも、監督の意思が強く表れているのだと感じられる一作でもあり、この映画をみて、あらためて安孫子監督がどんな人なのか知りたいと思いました。アフリカに移住し、野生動物を撮影し、福島原発事故後会津に移住した安孫子監督の視線は、目の前のことではなく、はるか遠くをみている気がします。私には、白鳥哲監督のみている世界に通じるものがあるように感じられました。
劇場公開されて、どんな感想が集まるのか、注目したいと思っています。
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安孫子亘(1959年北海道小樽市生)略歴
1982年 テレビ番組製作に関わる
1995~97年アフリカ ケニアに移住 野生動物の映像制作
1999年 栃木県那須に拠点を移しドキュメンタリー作品を製作
2011年 長編ドキュメンタリー映画初監督作品「檜枝岐歌舞伎 やるべぇや」~山形国際ドキュメンタリー映画祭2011「ともにある Cinema with Us」コミュニティシネマ賞
2012年 東日本大震災後、拠点を福島県南会津の下郷町(会津ジイゴ坂学舎)に移し、ドキュメンタリー映画を制作。
2017年 ドキュメンタリー映画 「知事抹殺」の真実 2017年度国際映画祭Digital Box Office Awards 正式出品、2017年度35回「日本映画復興会議」日本映画復興奨励賞受賞、2018度年 江古田映画祭グランプリ受賞
<その他の作品一覧>
日本テレビ「太古の森の物語」 ギャラクシー賞選奨
TBS「ダーウィンに消された男」 日本民間放送連盟賞
テレビ東京「蜃気楼の王国」日本民間放送連盟優秀賞 ・・・多数受賞
2004年 「月ヨノ」 世界自然野生生物映画祭出品
2005年 「SAKURA桜~田の神」 アメリカ ジャクソホール国際映画祭出品013年 「生きてこそ 会津の語り最後の伝承者 山田登志美」
2015年「春よこい 熊と蜜蜂とアキオさん」
2019年 「奇跡の小学校の物語 この学校はなくさない」
2021年「霧幻鉄道 只見線を300日撮る男」