映画と本の『たんぽぽ館』

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いつまた、君と 何日君再来(ホーリージュンザイライ)

2017年07月17日 | 映画(あ行)
日本の戦後史ではなく、人々の戦後史



* * * * * * * * * *

向井理さんの祖母・芦村朋子さんの半生記を、
向井理さん自身が企画に携わり映画化したもの。


芦村朋子(尾野真千子)と芦村吾郎(向井理)は、
吾郎が南京へ渡るのを機に、結婚。
その後上海へ居を移したところで終戦。

着の身着のままで夫婦と幼い子供2人は、日本に帰り着き、
農家である妻の実家に転がり込みます。
しかしそこでの生活は楽ではなく、
吾郎は義父・忠(イッセー尾形)に、ごくつぶし呼ばわりされ、
辛い仕打ちを受けてしまいます。
いたたまれなく妻の実家を出て、運送業をしたり、トコロテン屋を始めたり・・・
夫婦で各地を転々としながら貧しい生活が続き・・・。



向井理さんの祖父に当たる吾郎という方の、
不運で不遇な人生に言葉をなくす思いがします・・・。

この方は、大学を出たインテリで、
人々の貧富の差に心を痛め社会主義の運動もしていたのですね。
地方の名家の出でありながら、その家を大変な不幸が襲い、
以後、ずっと彼自身の人生にも影がさしていたようです。
それでも、この人を慕い、支え続けたのが妻朋子。
この人は一見おっとりなのですが、思い切りがいいですよ。
冒頭、吾郎が「南京へ行くことにした。」というと
即、「私も行きます」という。
その後、どんなに貧しくても彼女はポジティブ。
吾郎に文句を言うでもなくいつも笑っている。
妻のこんな様子に、夫はどんなに救われたことでしょう・・・。
不遇な人生ではあったけれども、こういう妻と出会えたことが最大の幸福であったと思います。



そして、孫がこんなにもかっこよくて、人気があるとなれば・・・、
さぞかし草葉の陰でお喜びのことでしょう・・・と、思ってしまいます。
でもまあ、戦中・戦後、こんな風に人生に劇的な変動が起こって
苦労した方がたくさんいるのでしょうね。
と言うより、殆どの方がそうなのでしょう。
日本の戦後史ではなくて、人々の戦後史。
そういう体験をした方がだんだん少なくなって来ていますから、
もっと色々な方に発信していただけたらいいのに、と思いました。



映画では、現代、祖母朋子(野際陽子)が倒れ、
彼女がまとめかけていた手記を孫の理(成田偉心)がまとめるという体裁になっています。
それで、本作が野際陽子さんの遺作ということになり、
そういう意味でも意義のある作品です。


エンディングで流れる何日君再来(ホーリージュンザイライ)の歌は
なんと高畑充希さんが歌っていたんですね。
素晴らしい歌声でした。



「いつまた、君と 何日君再来(ホーリージュンザイライ)」
2017年/日本/114分
監督:深川栄洋
原作:芦村朋子
出演:向井理、尾野真千子、岸本加世子、イッセー尾形、駿河太郎、野際陽子

人々の戦後史度★★★★★
満足度★★★★☆


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