映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

白鍵と黒鍵の間に

2024年02月19日 | 映画(は行)

過去、現在、そして未来は?

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富永昌敬監督がミュージシャン南博の回想録
「白鍵と国権の間に ジャズピアニスト・エレジー銀座編」を
大胆にアレンジし映画化した作品。

昭和末期。

銀座のキャバレーでピアノを弾くジャズピアニスト志望の博(池松壮亮)。
謎の男(森田剛)からのリクエストで“あの曲”「ゴッド・ファーザー愛のテーマ」を演奏しましたが、
しかし“あの曲”をリクエストできるのは、銀座を牛耳るヤクザの親分・熊野会長だけで、
演奏を許されているのも、会長のお気に入りピアニスト南(池松壮亮)だけなのです。

・・・ということで、池松壮亮の一人二役?と思われるのですが、
いやいや、見ていくと本作にはちょっとねじれた仕掛けがある。

そもそもこのピアノ弾きは南博という名前で、元々ひとりの男。
彼は、敬愛する師・宅見(佐野史郎)が、ジャズピアノをやりたければキャバレーへ行け、
というのを真に受けて、キャバレーのピアノ弾きになったのです。

そんな彼は、キャバレーの次にはクラブでピアノを弾くようになる。

これはネタばらしなのだろうかと悩む所ではありますが、
つまり同時間軸上に3年の時間のずれがある同一人物を並べて描写している・・・と。

自分にとって大いにプラスになるはずの、クラブでの演奏。
しかし実態は誰もピアノなど聞いておらず、ジャズがわかるでもない。
単なるバックグラウンドミュージックになっていることにむなしさを覚え、
しかしそれすらももう感じられなくなってしまっている・・・。

つまりは、未来を夢見る博と、夢を見失った南。
南博の過去と現在を表わしているわけです。

では、この男の未来は・・・?

というところが、気になる作品ではありますね。

<WOWOW視聴にて>

「白鍵と黒鍵の間に」

2023年/日本/94分

監督:富永昌敬

原作:南博

出演:池松壮亮、仲里依紗、森田剛、クリスタル・ケイ、佐野史郎、高橋和也

 

ユニーク度★★★★☆

ジャズ愛度★★★★☆

満足度★★★.5