映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ぼくセザール10歳半1m39cm

2008年08月30日 | 映画(は行)
ぼくセザール10歳半 1m39cm スペシャル・エディション

アスミック

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主人公の少年セザールは、タイトルそのまま、10歳半、身長1m39cm。
やや太めで自分にあまり自信がなく引っ込み思案。
この映画は、終始カメラをこの少年の視点と同じ1m39cmに据えて撮影しています。
だから、天井は高いし、大人たちをみな下から見上げるアングルになる。
つまり、巨人たちから見下ろされているよう。
ちょっと威圧感を感じます。
満員電車に乗るシーンなどは本当に、ちょっと怖いですね。
そんな子供からの目線とセザールのモノローグで、自分も子供になったような、なんだか世界が新鮮な感じがします。

さて、セザールの両親は、何をしているかよく分からないパパと、今は産休中のママ。
親友モルガンはちょっぴり大人っぽくて、セザールは尊敬している。
モルガンの父はロンドンに住んでいるフィッツパトリックという人、わかっているのはそれだけ。
会ったこともない。
セザールの憧れは、同じクラスのサラというかわいい子。
でもセザールは自分に自信がなくて、とても無理・・・と、初めからあきらめ気味。
彼女の両親は離婚していて、時々妙に明るい彼女のパパが会いに来る。
フランスの学校事情や、家庭事情が伺われて、そういう点でも、なんだか興味深いのです。
子供は無邪気なだけではなくて、そういう大人たちのなかなか大変な状況もちゃんとわかっている・・・、そんな視点ですね。

さて、この3人は仲良しトリオとなりまして、ある日、3人だけでロンドンへ行ってモルガンのお父さんを探そうということになった。
お金も犯罪スレスレ(?)で工面して、親をだまし・・・。
フランス~イギリス間は列車一本ですからね。
行こうと思えば速いですね。
でも、男の子二人は英語も話せないし、電話帳で調べても、同じ名前の人はどっさりいる・・・。
途方にくれる3人。
サラとははぐれてしまうし、あたりも暗くなってきた・・・。絶体絶命!

この冒険劇は思いがけない救いの手があって、成功するのですが、
このことで、彼らは大きく成長する。
セザールはちょっぴり自信がついて大人に近づきます。
そして、彼らの周りの大人たちも、ちょっぴり、これまでの生活を反省。
なんだかささやかな幸せって感じのするエンディング。
いいですね、こういうの。

冒頭、お葬式のシーンから始まりますが、上空から人々を見下ろすカメラワーク。
雨が降ってきて、黒い傘が一つまた一つと開いていく。
ほとんど黒い傘が画面を埋め尽くして、最後に赤い傘がひらく。
・・・すごくおしゃれな映像です。
かと思えば、エンディングは、今度は色とりどりの風船が画面を埋めていく。
これがラストの幸福感とマッチしてるんですよ、すごく。
さすが、フランス人のセンス。納得してしまいました・・・。

2003年/フランス/99分
監督:リシャール・ベリ
出演:ジュール・シトリュック、ジョセフィーヌ・ベリ、マボ・クヤチ、マリア・デ・メディロス