出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

直販

2006年06月21日 | 注文納品
厳密には直販は注文納品じゃないんだが、「売れた」カテゴリーがこれしかないのでとりあえず・・・

以前日販の人に「よくやってけますね~」と言われたことがある。うちレベルの売上だと、出版業は成り立たないらしい。そのとき確か、「意図したことではございませんが」直販が多いと答えて、へえ~っという顔をされた。

他の出版社では、直販はどのくらいの割合なんだろう。うちは結構あるほうなのか。

直販と言えば、ひとつは著者購入。著者購入が多いと言うと、「そういう契約ですか!」と反応する人がいる。何千部買取とか著者の負担とかの項目が契約に入っているのだと、思うらしい。

実際はそうじゃなくて、ただどんどん買ってくれている。この著者なら…という計算がまったくないわけではないが、ファンが書店で買ってくれるか著者から買うかまではわからない。

それ以外にも直販は多い。

うちの本は、初回の配本数も少ないし、書店に置きづらい(と人から言われる)本もあって、かつ宣伝費をかけないので、すぐに書店からは姿を消す。

書店からは消えるが事務所には在庫がたっぷりなので、発刊後も(金のかからない)PRを続ける。それに刊行点数が少ないので、1冊にかける情熱というか思い入れがいつまでたっても消えない。「なんか、そんな本もあったなぁ」と、ほとんど忘れたような本が、1冊も存在しない。年間数点の刊行数だと、じっくり作れると同時にじっくり売る時間もある。

で、ときどき既刊の注文の電話がかかってきて、読者に直接送る。

最初はネットのおかげだと思っていた。書店から姿を消しても、ネット上の情報はいつまでも残る。ネットのない頃だったら、どう本の存在を告知するか頭を抱えたんだろうが、今はずっと残っている。わけのわからない通販会社(?)とか、わけのわからないアフィリエイトとか、頼まなくても載っている。オンライン書店では上位に掲示されるほうが売行きはいいらしいが、売れなくても残っている。

買って読んでくれた人が、ブログに書いてくれてたりもする。どちらにしろありがたい。

が、気づいたんだが、ネットでみつけたらネットで買うんじゃなかろうか。

うちでは送料は無料にしているが、振込手数料はお客さんもちだ。振込に行くのも面倒くさかろう。なのに、わざわざ電話して注文してくれるというのは、どう考えても「ネットで見た」お客さんじゃないように思われる。

これが本当の口コミか。

で、最近面白いことがあった。電話で注文を受けていつもどおり送った本が、送り返されてきた。「想像してたのと違ったから返す」とのこと。

これは、書店員が集まる掲示板などで、「ふざけた客」の例としてよく出てくる。「レシートもないのに」とか「子供が気に入らなかったというバカ親」という感じで怒っている。丁寧にお願いしてくる客(返すんだから客じゃないのか)にも、「そんなことできるわけないだろ!」と怒っている。

うちの場合(といっても今回が初めてだが)、一瞬何事?と思ったが、「お手数をかけてすみません」と書いてあったので、「そりゃしょうがない」という感じだった。

書店ではカバーをしたり袋に入れたりしてるから、無駄というコストがかかってるのかと思ったが、うちも送料と手間はかかっている。それでも、あまり怒りはわいてこない。わざわざ向こうも送料をかけて送り返しているからか。

それにしても、郵便局から普通郵便で送ったこの方は送料払ってでもいらなかったということで、少々悲しい。本というのは嗜好品だと、つくづく思う。

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