出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

取次口座取得のその他のハードル

2005年02月21日 | 出版取次口座の取得
今までの話を読んだ例の知人が、あれじゃ読者が誤解すると言ってきた。いろいろ大変だったじゃんかーと言われて思い出したので、もう少し取引開始までのことを書く。

どうも物事が解決すると苦労は忘れるって性質でそれはそれでストレスとかと無縁でいいんだけど、それじゃ意味ないから。

仕入部には、新刊の見本納品のために出版社の営業マンが次から次へとやってくるカウンターがある。脇のほうにテーブルがあって、取引申し込みはそこで話す。そこでも順番待ちをするから、いろんな話が聞こえてくる。

継続して本を出していけると自信満々に訴えたと書いたが、実際、断られていた人たちは自信なさそうだった。「いくら企画あってもね~、そんなの売れませんよ」と意地悪く言われていたのは、かっこいい若者二人組だったが、本職に売れないと言われて、返事に困っていた。

うちの場合、例の知人が、セミナーをしているとか宣伝するとかずいぶん脚色すると同時に「もう、何千冊ずつ売っている」と大風呂敷を広げていた。あと私がそれをもとに、何月に何々を何冊ってな収支予測を作って持っていった。でもやっぱり、ポイントは彼の押しの強さだったと思う。

他には、現金を1億(!)用意しているという人たちがいた。地元で売れた本があるとかで、某県から来ていた。よく売れたので全国で売りたいとのこと。本を納品する窓口は東京にしかないが、どうするんだ?との問いに、えっ!てな顔しちゃって、ビシバシ突っ込まれていた。嘘でも「流通は既存ルートを使います」とか言えばいいのに。結局、東京支店を開いてからもう一度来てくださいと断られていた。

それから大事なことを忘れてた。会社訪問だ。時期は、2回目と3回目の訪問の間。向こうからわざわざうちの会社にやってくる。

通常の「この会社と取引して大丈夫かいな」という疑いの他に、在庫を置くスペースがあるかどうか、が重要らしい。出版は製造業なので当然なのだが、思いもよらなかったので来る前に慌てて机とかを片付けて、5坪ほど確保した。

そのスペースを見た以外は、ほとんど雑談。だけど、彼が営業担当です、彼女が編集です、とか
そのへんにいるスタッフを紹介した。彼らはもちろん、出版担当なんかじゃない。

でもほら、出版って一応マスコミだし、編集ってちょっとやってみたいじゃないですか。だから、そう紹介されたスタッフがニコニコわくわくってな顔をしていたのも、今思えばよかったのかも。

2 コメント

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いや、私、昔、本屋の社員でして (tyokutaka)
2005-02-22 14:23:42
こんにちは。

実は私、2年くらい前に本屋の正社員でして、半年ほど勤めましたが、そのあまりの「欲しがりません、勝つまでは」の労働精神とパソコンをほとんど使わない生活が嫌になって退職しました。



しかし、こうして読ませていただくと、取次ぎって、出版社に意外と冷たいのですね。私が本屋にいる間、新店の店開きのための応援を何人も寄越してくれましたが・・・。



本屋の経営と本が何故売れないのかというテーマでまた、自分のブログで書きますので、また遊びに来てください。
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書店員さん! (タミオ)
2005-02-23 10:46:53
出版も、こちらから入ると書店さんのこと、何もわかりません。



店開きの件だけは、どこかの本で読んで知ってて、取次がフェアをするとき「手伝うことありますか?」って真似してみたんです。



「いりません」ときっぱり言われてしまいました。「そんなことより、売れる本を作れ」ってことでしょうか。



本屋の経営の話、楽しみにしてます。
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