出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

取次口座確定の日

2005年02月22日 | 出版取次口座の取得
取次口座の取得が確定した最後の訪問日、納品の流れをさらっと説明してもらった。あまりにさらっとしていて、何の疑問も浮かばなかった。最後に「じゃ、本ができたら、とりあえず僕のところに持ってきてください」と言われた。

新しく本を作ると、まず見本納品として4、5冊、仕入部に持ち込む。カウンターで順番待ちしている人たちはみんなこの見本納品だ。大手の出版社なのか、やたらたくさん持ち込んでいる人もいる。新刊5冊だとそれぞれ4、5冊ずつだから、全部で20冊以上。大きな紙袋を重そうに抱えて待っている。

ちなみに新刊の数は、年間6万とか7万冊とかそのへんらしい。出版界の人たちは、多すぎるだの悪本の垂れ流しだのと言ってるけど、よく分からなくて何の感情も浮かばない。書店員の苦労という意味で、この数字の大きさを理解すべきだと分かったのは、もっと後のことだ。ただ本当に、次から次へとカウンターに本が乗っていく。

で、大きな紙袋の人たちは、仕入部の人とカウンター越しに仲よさそうに話している。こちらは横目でちらちら観察する。大きな出版社だと見本納品担当者とかになって、しょっちゅう会ってるということだなと思う。

出版社というとかっこいい編集者のイメージが強いが、ただのセールスマンの親父みたいな人が多い。編集VS営業職ってな話を知るのも後のことなので、あまりのどん臭さに、ちとビックリする。まあ、ああいうふうに持ち込めばいいんだな、と納得する。

そうやって見本を出すと、その場で仮の納品数が決められる。「こういう本なら、千冊ですね」というような感じだ。次の日の午前中に同じ仕入部に電話を入れて、この数を確認する。その次の日から納品ができて、納品の3日後に書店に並ぶ。

…とこういう流れだと説明を受けた。さらりと。

私は、後のことはそのときでいいやという性格なので、ハイってなもんで腰を上げた。1回目の訪問からずっと相手になってくれた仕入部の人は「分からないことあったら僕に電話ください。一応なんでも僕が窓口になりますから」と言って、にこっと笑った。ありがたいことだ。しかし彼も、後のことは後という性格なのに違いないとも思った。

で、やっと1冊目の本作りが始まる。電話で仕入部にコンタクトしてから、3ヶ月ほど経っていた。

コメントを投稿