MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『団地』

2016-09-21 00:03:00 | goo映画レビュー

原題:『団地』
監督:阪本順治
脚本:阪本順治
撮影:大塚亮
出演:藤山直美/岸部一徳/石橋蓮司/大楠道代/斎藤工/冨浦智嗣/竹内都子/濱田マリ
2016年/日本

団地の歴史と『ウルトラQ』の関係について

 ウィキペディアに詳細なあらすじが書かれているのでネタバレで書いてしまうが、どうもストーリーに深みが感じられない。例えば、主人公の山下ヒナ子の夫である清治が、同じ団地に住む行徳君子にそそのかされるように自治会会長選挙に立候補するものの、落選してしまい人望がないと噂されたことに深く落ち込み床下に籠ってしまうのであるが、まだ団地に引っ越してきて半年経ったくらいなのだから人望の有無以前に人柄がよく知られていないと捉える方が自然だと思う。
 あるいは真城たちと一緒に宇宙船に乗ったのはいいが、肝心の事故で亡くなった息子の直哉のへその緒を忘れてきてしまう。真城は引き返すことはできないが2、3日時空を戻すことはできると告げ、清治が空を見上げている時まで戻る。その直後ヒナ子と清治がベランダから部屋に戻った時に、亡くなった直哉が帰って来て2人は当たり前のように迎え入れるのであるが、2、3日しか時空が戻っていないのであるならば、生き返って戻って来た息子を見て2人は驚愕しなければならないはずなのである。
 それならば本作は駄作なのかと言えばそうとも言い切れない。日本に団地が建てられ始めたのは1950年代半ばあたりからで、それから10年経ち団地がポピュラーになり出した頃に始まった番組が『ウルトラQ』なのである。本作を『ウルトラQ』の一作品として観るならば関西色の濃い独特さが楽しめる作品として観ることができるのである。


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『エロ将軍と二十一人の愛妾』

2016-09-20 00:08:48 | goo映画レビュー

原題:『エロ将軍と二十一人の愛妾』
監督:鈴木則文
脚本:鈴木則文/掛札昌裕
撮影:わし尾元也
出演:林真一郎/池玲子/渡辺やよい/三原葉子/女屋実和子/城恵美/衣麻遼子/安部徹
1972年/日本

「リメイク」を傑作にする秘訣について

 マーク・トウェインの『王子と乞食』をベースに時代設定を日本の江戸時代、主人公を徳川第11代将軍の徳川家斉にしたのは決して安直なものではなく、定説として16人の妻妾を持ち、男子26人、女子27人の子供を儲けたからで(作中では21人の妻妾と54人の子供)、「ポルノスター」としてこれほど相応しい実在する人物は他にいないからである。
 しかしここで指摘しておきたいことはストーリーよりも前年公開された『現代ポルノ伝 先天性淫婦』との類似性である。例えば、豊千代(のちの家斉)が花魁の揚巻との「筆下し」に失敗し、膣痙攣で分離不可能になった後、豊千代と瓜二つのために身代りに立つことができた角助が調子に乗って田沼意次に自分に対する忠義を示させるために、嫁いでまだ半年の嫁を差し出させ、更には角助が嫁と抱き合っている様子を見させていた田沼の生娘の萩乃も抱いてしまうというシーンは、『現代ポルノ伝 先天性淫婦』において主人公の女子高生の尾野崎由紀が母親の絹枝と愛人の安川が抱き合っているところを覗き見し、翌朝安川に由紀自身も処女を奪われてしまう設定と同じなのである。
 あるいはお菊を自死に追いやった張本人として切腹を命じられた岩本内膳正が「おまえは三助だ」と罵り、腕を斬りつけられた角助が手下に命じて岩本を惨殺するシーンは、明人が松村にライフル銃で腕を撃たれ、激怒した明人が松村を絞め殺すシーンと酷似しているのである。
 そして何よりも女性に対して全く初心な豊千代と、女を全く抱かない、宮内洋が演じる本間洋一郎が同じ立場で、最終的に池玲子が演じるキャラクターが全資産を奪って行ってしまうオチまで勘案するならば、『エロ将軍と二十一人の愛妾』は『現代ポルノ伝 先天性淫婦』のリメイクであり、さらに幼なじみの喪失と過剰なセックスによって愛をこじらせる角助のアイデンティティー・クライシスの問題をメインに据え、毛沢東を「毛澤山」と皮肉る政治色も加え傑作たりえていると思うのである。


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『現代ポルノ伝 先天性淫婦』

2016-09-19 20:21:05 | goo映画レビュー

原題:『現代ポルノ伝 先天性淫婦』
監督:鈴木則文
脚本:鈴木則文/掛札昌裕
撮影:赤塚滋
出演:池玲子/三原葉子/宮内洋/三枝美恵子/藤木孝/小池朝雄/渡辺文雄/サンドラ・ジュリアン
1971年/日本

 女と寝ないポルノ映画の主演男優について

 主人公の尾野崎由紀はミッションスクールに通う高校生であるが、久しぶりに寮から実家に帰ってくると京都にあるクラブ「絹」の女将である母親の絹枝はプロボウラ―の安川と暮していた。しかし翌朝シャワーを浴びてる最中に安川が入り込んできて由紀は処女を奪われる。
 学校を中退してゴーゴークラブで働くようになった由紀はヤクザの幹部の大場清と暮らすようになるが、他の組のヤクザとの抗争で重症を負い、インポテンツになってしまったため、由紀は行きずりの男たちと関係を持ちながら新しいパトロンの梶村仁の世話になるようになり梶村は雇った2人のヤクザを使って大場を痛めつけ2年ほどの同棲生活を終わらせる。
 母親の絹枝も新しいパトロンの戸間口武の世話で東京のクラブのマダムとして働くようになり、由紀もそこで働くようになる。そんな時に由紀は偶然乗ってしまった車の持ち主である若手建築家の本間洋一郎と知り合い、最初は新手のコールガールと疑われるものの、その後偶然カフェで再会し付き合うようになる。出張で京都に行っていた洋一郎に会いに行くと、洋一郎がパリに留学していた時に付き合っていて日本にまで彼に会いに来ていたサンドラと鉢合わせしてしまう。
 その後、突然サンドラが帰国した後に、洋一郎は父親で「松村コンツェルン」を営む松村権一郎に由紀の写真を見せて結婚することを決めたと言うのだが、松村は反対する。実は松村自身が以前から由紀を狙っていたのである。松村は由紀にクスリを飲ませて体を動かないようにして強姦し、さらに戸間口の子供を身ごもっていた絹枝も襲おうとして逃げた絹枝は窓から転落し、病院で由紀に看取られて亡くなってしまう。
 母親のために復讐を心に誓った由紀は松村の秘書を装った愛人に収まり、松村の娘婿の明人に由紀と松村の関係を知らされた洋一郎は行方不明になってしまい、由紀が告げ口したことで明人は妻の綾乃と彼女の愛人である戸間口の密会を知り、戸間口の家に赴くと2人に睡眠薬入りのブランデーを飲ませてガスの栓を開けたまま戸間口の家から立ち去ってしまう。そんな明人を部屋に誘い、明人と情事に耽っていた時に松村が部屋にやって来る。激怒した松村はライフル銃で明人を撃ち、腕に軽く負傷して激怒した明人が松村を絞殺し、「松村コンツェルン」をまさに乗っ取ろうとする直前、尾野崎家のお手伝いだった山田鈴子の知らせを受けて由紀の部屋にやって来た洋一郎は由紀と死んだ父親と一緒にいる明人を見てライフル銃を手に取り明人を銃殺する。
 おそらく洋一郎は逮捕され遺産を受け取った由紀がラストはクラブ「由紀」を忙しく取り仕切っている姿が映されて終わるのであるが、驚くべきことはこの復讐譚が翌年公開される『エロ将軍と二十一人の愛妾』にもそのまま引き継がれていることなのであるが、ここで一つだけ指摘しておきたいことは本間洋一郎を演じた宮内洋がメインキャラクターの一人であるにも関わらず全く女性と絡むシーンが無いことである。宮内が「仮面ライダーV3」になるのは1973年からで、普通ならば無理強いにセックスシーンを作るくらいなのにポルノ映画の主演男優でありながら女性との絡みが無かった理由がよく分からない。


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『スーサイド・スクワッド』

2016-09-18 00:14:09 | goo映画レビュー

原題:『Suicide Squad』
監督:デヴィッド・エアー
脚本:デヴィッド・エアー
撮影:ローマン・ヴァシャノフ
出演:ウィル・スミス/マーゴット・ロビー/ジャレッド・レト/ジェイ・コートニー/ヴィオラ・デイヴィス
2016年/アメリカ

ストーリーが「グラフィカル」にはならない作品について

 期待していたほどにはストーリーが弾けない原因は、製作総指揮に物語よりもグラフィカルな映像にこだわるザック・スナイダーが関わっているからであろう。それでも本作がヒットしているとするならばマーゴット・ロビーが演じるハーレイ・クインのキャラクターに魅力があり、なおかつ往年のヒット曲をこれでもかというほど多用しているからだと思う。
 カタナを演じた福原かれんの日本語が悪いとは思わなかったが、カタナと敵対する日本人役が話す日本語は酷いものだった。『シン・ゴジラ』(樋口真嗣監督 2016年)において日系アメリカ人のカヨコ・アン・パタースンを演じた石原さとみが話す英語がネイティヴにはあのような感じで聞こえるとするならば恥ずかしいと言わざるを得ない。個人的にはそうは聞こえないのではあるが。
 ところで本作のラストにおいてアマンダ・ウォーラーが自身の失態を隠蔽するために、ブルース・ウェインに新たな「メタヒューマン」のリストを渡している。ウェインは自身の「スーサイド・スクワッド(決死隊)」を結成するらしいのであるが、続篇でさらに増えるであろうキャラクターを覚えきれる自信がない。


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『ヤング・アダルト・ニューヨーク』

2016-09-17 00:07:35 | goo映画レビュー

原題:『While We're Young』
監督:ノア・バームバック
脚本:ノア・バームバック
撮影:サム・レビ
出演:ベン・スティラー/ナオミ・ワッツ/アダム・ドライバー/アマンダ・サイフリッド
2014年/アメリカ

作品の良し悪しを決める「大人」について

 ジョシュ・シュレブリックと妻のコーネリアは『ザ・パワー・エリート』というタイトルの軍産複合体に関するドキュメンタリー映画を制作している。2人とも既に40歳代なのであるが、子供がいないためなのか「若手」のような振る舞いである。
 なかなか作品を完成させられない中、ある日ジョシュが受け持っていた大学の講座に聴講生として訪れていた20代のジェイミー・マッシ―と妻のダービーと知り合い、その若い夫婦に若かった頃の自分たちを重ねて親交を持つようになる。
 ジョシュとジェイミーがアフガニスタンで兵役を務めた後、精神疾患を患ったケント・アーリントンを取材するのであるが、間もなくしてジョシュはジェイミーが「ヤラセ」をしていることに気がつく。ジョシュはケントにカメラの前で真実を述べさせ、義父でドキュメンタリー映画の権威であるレスリー・ブレイトバートの祝福セレモニーが行われているリンカーン・センターへ赴いて、レスリーと一緒にいるジェイミーに問いただすのであるが、意外なことにレスリーはジェイミーのやり方を作品をドラマチックにするための許容範囲として認めるのである。
 これにはジョシュはかなり驚いたようで、翌年ジョシュとコーネリアは養子をもらって「大人」になる。結局、作品というものは質そのものではなく、「権威」によって善し悪しが判断されることが分かったからである。


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『待ち伏せ』

2016-09-16 18:08:19 | goo映画レビュー

原題:『待ち伏せ』
監督:稲垣浩
脚本:稲垣浩/小国英雄/高岩肇/宮川一郎
撮影:山田一夫
出演:三船敏郎/石原裕次郎/勝新太郎/中村錦之助/浅丘ルリ子/北川美佳/有島一郎
1970年/日本

道路を舗装するアスファルトの謎について

 本作はとても興味深い作品だと思う。それはもちろん三船敏郎、石原裕次郎、勝新太郎、中村錦之助という当時のスーパースターたちの共演にあるのだが、それにも関わらず噂によるならば興行的には失敗しているからである。
 ストーリーとして重要な点を挙げてみるならば、主人公の鎬刀三郎が嫉妬深い夫に家の中で縛られていたおくにを助け出し、峠のふもとにある茶屋に預け、最後も何も声をかけないまま鎬刀はおくにを置いて立ち去り彼女を自由にしたり、その茶屋の主人の徳兵衛を手伝うために茶屋から逃れられないお雪がその後に巻き込まれる騒動のおかげで徳兵衛の許しを得られるところなど女性の自立が描かれているように見えるのだが、実は「縛られている」のは女性だけではなく男性も同様なのである。
 三船敏郎が演じる鎬刀三郎は「フリー」の用心棒であるが「からす」と呼ばれている武士に仕事を依頼されている。石原裕次郎が演じる弥太郎は渡世人という性格上比較的自由人であるが、勝新太郎が演じる玄哲は藩に雇われていた医師だったが、水野越前守の代わりに罪を被ったことで追放され徳兵衛の茶屋で薬を調合して生活している。中村錦之助が演じる伊吹兵馬は「野猿の辰」と呼ばれる盗人を捕えはしたものの、酷い怪我を負い茶屋に世話になるが、最後には武士たちのまとめ役になる。
 ここで注目したいことは、クライマックスで殺陣のシーンにおいてアスファルトで舗装された道路が見えることである。江戸時代にアスファルトで舗装された道路が存在するのかという間違いをここで指摘したい訳ではない。監督は時代劇ばかり撮っていた稲垣浩で、カメラマンもベテランの山田一夫で、4大スターまで揃っていながら、道路の上に土を盛ればいいだけなのにこんな単純なミスがあり得るとは思えないのである。それならばこの「アスファルト」は意図されたものと捉えるしかなく、それは本作が時代劇ではなく「現代劇」であるという暗示であろう。
 ではそれは誰に向けられた暗示なのか勘案するならば、当時存在していた「五社協定」に関わっている関係者たちに対してであろう。ラストにおいて金を払わなければ何もしないはずの鎬刀三郎が報奨金を払う相手である「からす」たちを叩き切る時、他の3人と共に「フリー」になる覚悟を示したように見えるだけでなく、役柄が当時のそれぞれの状況を示していないだろうか。


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『乱気流 タービュランス』

2016-09-15 00:43:47 | goo映画レビュー

原題:『Turbulence』
監督:ロバート・バトラー
脚本:ジョナサン・ブレット
撮影:ロイド・エイハーン
出演:ローレン・ホリー/レイ・リオッタ/ヘクター・エリゾンド/ベン・クロス
1997年/アメリカ

「Fright Attendant」について

 この航空パニック作品には、例えば、主人公のテリー・ハロランが一度はコックピットの操縦席で飛行機を操縦していながら、同僚のマギーを探すためにわざわざテッド・バンディ(Ted Bundy)のような連続殺人犯人のライアン・ウィーバーがいる客室に戻ってしまうところなど登場人物の行動に緊張感が足りないと思うが、公開時は2011年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件が起こる前だから出来た演出であり、今ならば戦闘機で撃ち落とされて終わる事案である。
 因みにウィーバーの隣に座っていた保安官が読んでいたエドウィン・C・スタインブレッシャ―(Edwin C. Steinbrecher)の『瞑想への道(The Inner Guide Meditation: A Spiritual Technology for the 21st Century)』は実際にある著書なのだが、何の役にもたっていないように見える。確かに読み始めたばかりならば役に立てようがないのだが。


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『ライト/オフ』

2016-09-14 00:08:54 | goo映画レビュー

原題:『Lights Out』
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
脚本:エリック・ハイセラー
撮影:マーク・スパイサー
出演:テリーサ・パーマー/ガブリエル・ベイトマン/ビリー・バーク/マリア・ベロ
2016年/アメリカ

 「奥の手」が何故か封印された作品の後味について

 主人公のレベッカと弟のマーティンと「ダイアン」の対決はブラックライトの使用により断然姉弟に分があったはずだったのだが、ブラックライトが有効に使われることなくラストシーンは余りにも後味が悪いものになってしまっている。ホラー映画だからと言われればそれまでなのだが、来年には続編が公開されるようだから、ストーリーがさらに深まることを期待したいが、肝心の人がいなくなってしまったのだからどうなることやら。


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『ディアスポリス - Dirty Yellow Boys -』

2016-09-13 00:12:27 | goo映画レビュー

原題:『ディアスポリス - Dirty Yellow Boys -』
監督:熊切和嘉
脚本:熊切和嘉/守屋文雄
撮影:橋本清明
出演:松田翔太/浜野謙太/柳沢慎吾/康芳夫/須賀健太/NOZOMU/安藤サクラ
2016年/日本

日本人監督による良質の「アメリカン・ニューシネマ」について

 東京を舞台にしていながらエキゾチシズムを味わう刑事ものと思いきや、宗教をテーマにした野心作だった。
 幼なじみで異教徒の牧師の息子という共通した境遇であるが故に周と林は虐げられており、首つり自殺をしようとしていた林とそれを未然に防いだ周の関係は、林が拳銃で自分たちを虐げる相手を銃殺したことからさらに密になり、「何かをしなければ存在しないに等しい」という信念で「ダーティ・イエロー・ボーイズ」というアジア人犯罪組織を結成し裏社会で生きていた。
 やがて2人は黒金組の組員を殺す一方で地下教会で懺悔を繰り返しながら組の金庫から大金を巻き上げる計画を立て、それを追うのが主人公の久保塚早紀と鈴木博隆のコンビなのだが、犯人たちの方がメインであるため原作のファンには不満が残るかもしれない。
 そもそも周と林の裏の活動は林が人を殺した「勇気」から始まったのであるが、組の金庫にたどり着く前に林は周が自分を「盾」にして、つまり自分はただ周に利用されただけではないのかと疑いを持つ。しかし周にとって林はかけがえのない親友だという思いがあった。だから最後に自分に銃口を向ける組長にどっちが横島を殺したのか訊ねられた際に、周が自分が殺したと真実を語る時、それは信仰心の強さというよりも命を賭けて真の友情を証明するためではなかったか。


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『四月は君の嘘』

2016-09-12 00:10:42 | goo映画レビュー

原題:『四月は君の嘘』
監督:新城毅彦
脚本:龍居由佳里
撮影:小宮山充
出演:広瀬すず/山崎賢人/石井杏奈/中川大志/板谷由夏/檀れい
2016年/日本

エキセントリックな「作風」について

 『青空エール』(三木孝浩監督 2016年)のレビューおいて「もはやカップルで自転車に相乗りするということは映画のシーンとしては無くなるのかもしれない。」と書いたばかりなのであるが、本作において主人公の宮園かをりと有馬公正をコンクール会場に送るために友人の澤部椿と渡亮太が自転車に乗ってきて2人を後ろに乗せて海岸沿いを2組のカップルが相乗りするシーンがあったので、あくまでも自転車の相乗りは監督の演出次第だった。
 それにしても本作は、例えば、息子の公正がピアノコンクールで優勝しても褒めるどころかわずかなミスタッチに激怒する母親の有馬早希の言動や、「度胸橋」から川にダイブする宮園かをりの言動などずいぶんとエキセントリックで、その点を自転車の相乗りのシーンにおいても勘案しておかなければならないであろう。
 宮園かをりが病気で倒れた日は彼女が出演するはずだったガラコンサートが催される2016年7月31日で、彼女が一時退院して再び有馬公正の前に現われた日は10月25日で、いつの間には二ヵ月も経っていたり、とにかくストーリーの流れはなかなか荒く、自分がピアノを弾くことで愛する人を2人も失えば、二度とピアノを弾きたいと思うことはないのではないだろうか。それでもメインとなる演奏シーンは悪くはない。


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