MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『オーバー・フェンス』

2016-09-23 00:35:57 | goo映画レビュー

原題:『オーバー・フェンス』
監督:山下敦弘
脚本:高田亮
撮影:近藤龍人
出演:オダギリジョー/松田翔太/蒼井優/満島真之介/北村有起哉/優香/塚本晋也
2016年/日本

状況の打開には至らない「ホームラン」について

 主人公の白岩義男は一生懸命働きすぎて家庭を顧みなかった結果、ある晩帰ってくると妻の洋子が育児ノイローゼで赤ん坊の顔にクッションを当てている現場を目撃する。その後、洋子とは離婚し、妻の父親から絶縁状が送られてくる。
 白岩は東京から故郷の函館に戻って職業訓練校に通って大工の実習を受けているのだが、大工になろうということではなく、職業訓練校に通えば失業保険がもらえるという安易な発想からだった。しかし通っている職業訓練校でも事件が起こる。大学を中退して職業訓練校に通ってきていた森由人はやる気を見せず行動の遅さから周囲からバカにされており、校内のソフトボール大会の出場メンバーの選考でも差別を受けたため、森の怒りが爆発する。
 あるいは学校外でも代島和久の紹介でホステスの田村聡と知り合い、鶴の求愛など演じる風変わりな彼女に対して白岩は少しずつ惹かれていくのであるが、お互いを理解しようとすればするほど2人の気持ちが離れていくように見える。つまり努力が空回って家庭を崩壊させた白岩は自分が介入してもロクなことにはならないことを思い知り、森に対しても聡に対しても彼らの怒りを白岩はなす術もなくただ見つめるしかないのであり、それは例えば、合コンで初対面の2人の女性たちに対してもその態度の悪さに我慢ができなくなり悪態をついてしまうことでも白岩には自覚はある。
 しかしどうも物語中盤の空から鳥の羽根が降って来るシーンとラストのソフトボールの試合で白岩がホームランを打つ肝心な2つのシーンが盛り上がらない。どちらのシーンも予定調和で白岩が陥っている「袋小路」をどのように打破するのかという希望的イメージが湧かないのである。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする