原題:『ディアスポリス - Dirty Yellow Boys -』
監督:熊切和嘉
脚本:熊切和嘉/守屋文雄
撮影:橋本清明
出演:松田翔太/浜野謙太/柳沢慎吾/康芳夫/須賀健太/NOZOMU/安藤サクラ
2016年/日本
日本人監督による良質の「アメリカン・ニューシネマ」について
東京を舞台にしていながらエキゾチシズムを味わう刑事ものと思いきや、宗教をテーマにした野心作だった。
幼なじみで異教徒の牧師の息子という共通した境遇であるが故に周と林は虐げられており、首つり自殺をしようとしていた林とそれを未然に防いだ周の関係は、林が拳銃で自分たちを虐げる相手を銃殺したことからさらに密になり、「何かをしなければ存在しないに等しい」という信念で「ダーティ・イエロー・ボーイズ」というアジア人犯罪組織を結成し裏社会で生きていた。
やがて2人は黒金組の組員を殺す一方で地下教会で懺悔を繰り返しながら組の金庫から大金を巻き上げる計画を立て、それを追うのが主人公の久保塚早紀と鈴木博隆のコンビなのだが、犯人たちの方がメインであるため原作のファンには不満が残るかもしれない。
そもそも周と林の裏の活動は林が人を殺した「勇気」から始まったのであるが、組の金庫にたどり着く前に林は周が自分を「盾」にして、つまり自分はただ周に利用されただけではないのかと疑いを持つ。しかし周にとって林はかけがえのない親友だという思いがあった。だから最後に自分に銃口を向ける組長にどっちが横島を殺したのか訊ねられた際に、周が自分が殺したと真実を語る時、それは信仰心の強さというよりも命を賭けて真の友情を証明するためではなかったか。