原題:『エロ将軍と二十一人の愛妾』
監督:鈴木則文
脚本:鈴木則文/掛札昌裕
撮影:わし尾元也
出演:林真一郎/池玲子/渡辺やよい/三原葉子/女屋実和子/城恵美/衣麻遼子/安部徹
1972年/日本
「リメイク」を傑作にする秘訣について
マーク・トウェインの『王子と乞食』をベースに時代設定を日本の江戸時代、主人公を徳川第11代将軍の徳川家斉にしたのは決して安直なものではなく、定説として16人の妻妾を持ち、男子26人、女子27人の子供を儲けたからで(作中では21人の妻妾と54人の子供)、「ポルノスター」としてこれほど相応しい実在する人物は他にいないからである。
しかしここで指摘しておきたいことはストーリーよりも前年公開された『現代ポルノ伝 先天性淫婦』との類似性である。例えば、豊千代(のちの家斉)が花魁の揚巻との「筆下し」に失敗し、膣痙攣で分離不可能になった後、豊千代と瓜二つのために身代りに立つことができた角助が調子に乗って田沼意次に自分に対する忠義を示させるために、嫁いでまだ半年の嫁を差し出させ、更には角助が嫁と抱き合っている様子を見させていた田沼の生娘の萩乃も抱いてしまうというシーンは、『現代ポルノ伝 先天性淫婦』において主人公の女子高生の尾野崎由紀が母親の絹枝と愛人の安川が抱き合っているところを覗き見し、翌朝安川に由紀自身も処女を奪われてしまう設定と同じなのである。
あるいはお菊を自死に追いやった張本人として切腹を命じられた岩本内膳正が「おまえは三助だ」と罵り、腕を斬りつけられた角助が手下に命じて岩本を惨殺するシーンは、明人が松村にライフル銃で腕を撃たれ、激怒した明人が松村を絞め殺すシーンと酷似しているのである。
そして何よりも女性に対して全く初心な豊千代と、女を全く抱かない、宮内洋が演じる本間洋一郎が同じ立場で、最終的に池玲子が演じるキャラクターが全資産を奪って行ってしまうオチまで勘案するならば、『エロ将軍と二十一人の愛妾』は『現代ポルノ伝 先天性淫婦』のリメイクであり、さらに幼なじみの喪失と過剰なセックスによって愛をこじらせる角助のアイデンティティー・クライシスの問題をメインに据え、毛沢東を「毛澤山」と皮肉る政治色も加え傑作たりえていると思うのである。