MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「格差」と「不平等」の違い

2016-09-27 23:27:14 | Weblog

小泉今日子と語った上野千鶴子 小泉の不敵な笑みを絶賛
岸田外相「大変遺憾」…TPP文書の和訳ミス

 今日の毎日新聞の夕刊の「読書日記」に社会学者の上野千鶴子が驚くべきことを書いていたので引用しておく。

「そのピケティの師にあたるアンソニー・アトキンソンの著書『21世紀の不平等』が訳出された。ピケティの原著は2013年、アトキンソンの原著は15年。師よりも有名になったピケティの『序文』をつけて2年後に出版されたこの本は、ピケティ効果のおかげで売れることを期待されたのだろう。同じくらいの厚みと同じ判型のハードカバーの本書は、ピケティの本を意識して、白と黒の対比もあざやかに、邦題も『21世紀の......』とつけられている。
 原題はずばり『不平等』だ。ピケティの翻訳者でもある山形浩生の『解説』を読んで、もっと驚くことになる。山形は、ピケティの本では、『不平等』を『格差』と訳した。訳者は『この訳し分けに意味はない』というが、とんでもない。『格差』と『不平等』ははっきり使い分けられている。『格差』は合理的根拠のある違い、『不平等』は正当化できない差別を言う。政府が『格差』を使っても『不平等』と決して言えないのはそのせいだ。」

 全く上野の言う通りで、山形浩生は時々全く訳のわからない間違いを犯す。山形にとって翻訳とは金持ちの手慰みのようなものだから「格差」と「不平等」の違いなど気にならないのだろうが、トマ・ピケティの『21世紀の資本』を読まないでいて良かったと心底思う。

 一応、山形の意見も載せておこう。これは『21世紀の不平等』の「訳者はしがき」として本文が始まる前に書かれている。

 「なお、最後に訳語について一言。ピケティ『21世紀の資本』では、inequality を格差と訳した。本書ではこれを不平等と記している。この訳し分けにはまったく意味はない。ただ本書では、平等性と不平等性という対比が行われる場合が多く、こちらのほうがおさまりがよかっただけである。実はピケティの翻訳で『格差という用語は価値判断を含まないが、不平等は悪いものだという価値判断を含む。訳者は故意に、それをあまり悪くないものとして描こうとしたのではないか』という指摘を受けたことがある。が、人によってはむしろ『格差』というほうが、悪いものだというニュアンスを感じるという人もいる。この訳語の選択をあまり深読みしても意味はなく、むしろ実際にそれについて何が言われているかという中身のほうにご注目いただければ幸いだ。」(『21世紀の不平等』アンソニー・B・アトキンソン著 山形浩生/森本正史訳 東洋経済新報社 2015.12.24)

 それならばこれはそのまま「インエクオリティー」と「訳す」べきだったと個人的には思う。


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『デリダ、異境から』

2016-09-27 00:27:50 | goo映画レビュー

原題:『D’Ailleurs, Derrida』
監督:サファー・ファティ
撮影:エリック・ギシャール/マルシァル・バロー/マリ・スパンセール
出演:ジャック・デリダ/ジャン=リュック・ナンシー
1999年/フランス

「パルドン(Pardon)」を巡って

 フランスの哲学者であるジャック・デリダのインタビューが収められた本作を理解することは非常に困難が伴う。例えば、デリダは逮捕された際の経験から「歓待(hospitalty)」は「破局(catastrophe)」が起こるところで生じるという言葉や、昇華や変容の化学作用によって苦痛の思い出を良い思い出にするという意見などはやはり頭の良い人だから出来る技であって、全く同感できないのであるが、死ぬ間際にそれまでの人生の全ての善し悪しが明らかになるという言葉には激しく同意する。しかし交通事故などで急死した場合、そんな暇はない。


『オルガス伯の埋葬(The Burial of the Count of Orgaz)』


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