MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『刑事コロンボ 意識の下の映像』

2018-12-24 00:56:58 | goo映画レビュー

原題:『Columbo : Double Exposure』
監督:リチャード・クワイン
脚本:スティーヴン・J・キャネル
撮影:ウィリアム・クロンジャガー
出演:ピーター・フォーク/ロバート・カルプ/ロバート・ミドルトン/チャック・マッキャン
1973年/アメリカ

「二重露出」というタイトルの意味について

 ストーリーはバート・ケプルという映像研究所のCMプランナーでありながら映像に関する心理学者で著書もある主人公が「サブリミナル効果」を使ってお得意先の社長のヴィク・ノリスが自分の研究所の契約を打ち切ると正式に決定する前に殺害するというものである。事前にノリスに塩辛いキャビアを食べさせておいて、さらに試写のフィルムに飲み物の写真を気づかれないように挟み込んでおき、潜在意識を刺激されたノリスが咽喉の渇きを潤すために廊下に出てきて水を飲んでいたところを狙っていたケプルが銃殺し、その後、代わりにナレーションをさせていたテープの代わりに知られずに元に戻って試写会でのアリバイを作ったのであるが、そうなると原題の「Double Exposure(二重露出)」という意味がよく分からない。
 穿った見方をするならば、ここでいう二重露出とはオリジナルフィルムと、そこに挟まれた「飲み物の写真」がフィルムを回すことで重なって見えるという意味であろうが、それは正確には「サブリミナル効果」とは言えない。サブリミナルとはあくまでも「飲み物の写真」が潜在意識の中ではっきり認識されなければ効果がないからである。

 何が言いたいのかというならば、本作の脚本家がサブリミナル効果というものを正確に理解していないように感じるからである。例えば、クライマックスにおいてコロンボがカメラマンを連れてケプルの部屋の侵入し、コロンボがケプルの部屋で捜索している様子を写させ、その写真をケプルが見ることになっているフィルムに挟み込むことによってケプルにボロを出させることに成功するのであるが、コロンボのやり方はサブリミナル効果という観点から見れば間違っていると思う。サブリミナル効果で使用される写真は「飲み物」や「食べ物」の同じ写真を何度も見せることによる強烈なイメージで潜在意識を刺激できるのであり、今回の事件ならばケプルが隠している証拠物件か隠し場所であるランプシェードの写真を使わなければ効果が得られないはずなのだが、コロンボのように色々な場所で様々なポーズを取ってしまっては固定したイメージが潜在意識に根付かないからである。
 確かに脚本はよく出来ているのだが、残念ながらサブリミナル効果に関する知識は明らかに間違っていると思う。もっともサブリミナル効果という効果自体が極めて怪しいものではあるのだが。


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