MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

世界的名画の宿命について

2021-05-06 00:59:10 | 美術


(2021年4月29日付毎日新聞朝刊)

 中国外務省副報道局長の趙立堅(ジャオ・リージエン)報道官が葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(1831年-33年)をパロディ化した中国人のイラストレーターの風刺画を「もし葛飾北斎が今生きていたら、彼も日本の放射性廃水問題に大いに関心を持っただろう」というコメントと共にTwitter上で紹介したことに、茂木敏充外相は28日の衆院外務委員会で、「中国に対して厳重に抗議する」と述べ、「心ない書き込みは、あってはならない」とも指摘し、平沢勝栄復興相は30日の記者会見で、「(処理水が海を)汚染させる感じに事実を歪曲し、名画を冒涜する形で報道したのは極めて遺憾だ」と批判し、中国側に強く抗議する考えを示したのだが、この人たちは普段美術館に行かないという教養の無さを自ら吐露したことにしかなっていないと思う。
 例えば、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』(1500年代初期)はマルセル・デュシャンの『L.H.O.O.Q.』(1919年)を始めとして散々イジられており、寧ろイジり倒されてこそ「なんぼ」なのである。だから茂木も平沢も文句を言うのならば、不本意ではあろうが自分たちが推進したエネルギー政策の陥穽をつくきっかけを作った北斎に文句を言わなければならないのである。


(『微笑(Le rire)』ウジェーヌ・バタイユ(Eugène Bataille))(1883年)

 印象派の父と呼ばれているエドゥアール・マネ(Édouard Manet)には『オランピア(Olympia)』(1863年)という作品がある。

 この作品はイタリアの画家のティツィアーノ(Tiziano)の『ウルビーノのヴィーナス(Venere di Urbino)』(1538年)を茶化したものであり、「心ない書き込み」とか「名画を冒涜」とかいう甘っちょろい感傷などあったものではないのである。


gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/recordchina/world/recordchina-RC_875522


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