MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『世界の中心で、愛をさけぶ』

2019-05-12 00:39:19 | goo映画レビュー

原題:『世界の中心で、愛をさけぶ』
監督:行定勲
脚本:坂元裕二/伊藤ちひろ/行定勲
撮影:篠田昇
出演:大沢たかお/柴咲コウ/長澤まさみ/森山未來/菅野莉央/宮藤官九郎/高橋一生/山﨑努
2004年/日本

主人公が患った病気では分からない作風について

 『君は月夜に光り輝く』(月川翔監督 2019年)と本作の類似性を挙げてみると、同じ「難病もの」であるが本作の主人公の広瀬亜紀は白血病という実在する病気である。もう一人の主人公である松本朔太郎と亜紀はカセットテープを通じて交流する一方で、『君は月夜に光り輝く』の2人の主人公はスマートフォンで交流する。朔太郎という名前の由来は詩人の萩原朔太郎であるが、『君は月夜に光り輝く』では中原中也の『春日狂想』の一節「愛するものが死んだ時には、 自殺しなきゃあなりません。」が引用されている。亜紀はクラスで催す『ロミオとジュリエット』でジュリエットに選ばれており、『君は月夜に光り輝く』では渡良瀬まみずの代わりに岡田卓也がジュリエット役を引き受けて文化祭で『ロミオとジュリエット』を披露している。
 明らかに『君は月夜に光り輝く』は本作を意識して書かれたものだと思うのだが、本作を改めて観賞してみると、やたらと粗が目立つことに気がつく。そもそも何故朔太郎と現在付き合っている藤村律子が足が不自由であるにも関わらず朔太郎に黙って台風の中、故郷の四国に戻ってしまうのか理解できない。朔太郎が夏休みに亜紀と2人だけで島にキャンプに行った際に、亜紀が白血病で倒れてしまい、迎えに来た亜紀の父親に朔太郎はいきなり殴られており、亜紀の家族には要注意人物と見なされているはずなのだが、その後、朔太郎が一緒にオーストラリアに行く目的で亜紀を簡単に病院から連れ出せることも不思議で、オチでは何と朔太郎と律子が一緒に行ったオーストラリアの地で、どのようにして入手したのか分からないが亜紀の遺灰を撒くのである。
 リアリズムであるはずの本作がご都合主義で、ファンタジーであるはずの『君は月夜に光り輝く』がよりリアルなのだが、本作が2004年の興行収入と観客動員数で共に実写映画No.1になっているのだから分からないものである。


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