原題:『箱入り息子の恋』
監督:市井昌秀
脚本:市井昌秀/田村孝裕
撮影:相馬大輔
出演:星野源/夏帆/平泉成/森山良子/大杉漣/黒木瞳/石橋穂乃香/竹内都子/古舘寛治
2013年/日本
コントローラーとタイプライターの類似性について
市役所に勤める主人公の天雫健太郎は、昼食は実家に戻って食事をするほど職場内の付き合いさえなく13年間一度も昇進しておらず、唯一の楽しみが戦闘型ロールプレイングゲームである。そんな息子を心配する健太郎の両親の寿男とフミは息子に内緒でお見合いパーティーに出席するのだが、なかなか話はまとまらない。
そんな時に一本の電話をもらったことで健太郎は今井奈穂子とお見合いすることになるのだが、そのきっかけは健太郎がしたある行為によるものだった。しかし2人を差し置いて双方の両親が険悪なムードになり破談しそうになるのだが、奈穂子の母親の今井玲子の機転により健太郎と奈穂子は付き合うようになる。
しかし奈穂子の父親の今井晃という「壁」は厚く、交通事故に巻き込まれたり、2階にある奈穂子の部屋から全裸で転落したりとロクな目に遭わないのである。そこでラストのオチに至る。健太郎は奈穂子に手紙を書くのであるが、盲目の奈穂子に送る手紙は当然のことながら点字によるものである。病院内で健太郎が点字タイプライターを使っている様子は、まるで奈穂子に出会う前に健太郎がテレビゲームのコントローラーを使っている様子と同じなのである。人間関係を円滑に運ぶためには逆に「引きこもって」いた方が上手くいくというアイロニーが本作の秀逸さなのである。だから問題はいかに相手と出会うかというところにある。